仕事がつまらなくてつらい。今の状況から抜け出すには?【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!今回は、仕事がつまらないという悩みを抱える、23歳男性からのお悩みです。

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曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

仕事に面白味を感じられず、毎日が苦痛…どうすればいい?

 

<相談内容>
CASE47:「仕事がつまらない…何か打開策はある?」(23歳・メーカー勤務)

今の仕事に就いて2年目、毎日仕事がつまらなくて、出社するのが苦痛です。

新卒で大手メーカーに入社。就活時から営業職志望でしたが、配属されたのはなぜか経理部でした。仕事に慣れればきっと経理に興味を持てるようになり、面白さも感じるのだろうと思っていましたが、未だに毎日がつまらなくて苦痛です。

もともと行動的で、社内にじっとしているよりも外回りをしていろいろな人と出会い、一から関係性を築くのが好き。しかし今は、1日中PCに向かっています。周囲と協働する機会もそう多くはありません。はっきり言って、性格的にも事務系の仕事は自分には向いていないのだろうと思います。

何とかこのつまらない現状を変えたいのですが、私は何をすればいいのでしょう?(経理職)

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

ただこなしているだけでは「つまらない」のは当たり前

人材研究所曽和さんインタビューカット

経理は、会社のあらゆる部署が生み出したり使ったりするオカネの総元締め的な存在。会社の要である重要な部署ですが、だからこそ経理担当者の中には「目の前の数字に思い入れが湧かない、自分の仕事に臨場感がない」という人もいます。経理を志していなかった人の場合、なおさらその傾向が強いようです。

ある程度社会人歴が長くなれば、これまでの業務経験から「数字が表す意味」がつかめてくるようになります。損益計算表を見て「人件費が利益を圧迫しているんだな」「薄利多売になり明らかに利益率が下がっているな…ちょっと危なくない?」なんてこともわかったりします。

一方で、相談者はまだ入社2年目で、営業志望だったとのこと。「数字を見ても面白さを感じない」というのも、仕方ないことなのかもしれません。ただ、「仕事を続けていれば、自然に興味が湧くだろう」と目の前の業務をただこなしているだけでは、面白くなるはずはありません。

経理はそもそも抽象度が高い仕事であるうえ、大手企業であれば業務は分業化されていて全体像もつかみづらいはず。さらに2年目の若手であれば、任されているのは伝票の仕分けや数字の再計算など、経理全体のうちごく一部の業務であると推察されます。ただでさえ地味な、わずか一部分の業務なのに、さらにそれを「ただこなす」だけでは、つまらないのは当たり前。自ら努力をしないと、何年経とうが状況は変わりません。

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

一つひとつの業務に興味を持ち、面白がる努力をしよう

相談者に求められるのは、日々のルーティンワークであっても楽しく、面白がろうと工夫する「意味づけ力」です。
初めはのぞき見感覚でOKですので、会社のガソリンであるオカネが何に使われているのか、「意識して」興味を持ち、仕事に臨んでみましょう。

例えば伝票チェックの仕事であれば、「営業部はこのご時世でしばらく接待を取りやめていたけど、また復活させたんだな」「この銀座のお店は、接待頻度高いなあ。使い勝手がいいのかな」「商品企画部が今作っている販促物、けっこういい値段するなあ」などと、1つの伝票に思いを馳せつつチェックするうちに、使われているオカネの傾向や、支出がどうアウトプットにつながっているのかなどが、徐々につかめてくるようになります。それを積み重ねるうちに、各部署における出費の意味もだんだんわかるようになり、会社全体のオカネの流れが想像できるようになるはずです。

もっと明確に全体像をつかみたくなったら、同じ部署で別のパートを担当している同僚に業務内容を聞いて、想像を補完してみるといいかもしれません。もしくは、全体像を把握している部長クラスの役職者と話しをしてみるのもお勧めです。そうすれば、自分の立ち位置や日々の業務の「意味」がわかり、少なくとも今よりは面白みが感じられるようになるのではないでしょうか。

別の方法としては、「経理の勉強をして知識をつけること」も挙げられます。

経理部門には、減価償却や売掛金、仕掛品、除却損…などなど特有の専門用語が溢れています。それらの言葉の本当の意味を捉え、経理の基本的な知識を身につけることで、仕事がうまく回せるようになり、それに伴い面白さも感じられるようになる可能性があります。

ただ…経理に関する本は私も何冊か読んだことがありますが、中には「わざとか?」と思うぐらい難解に書かれているものもあります。数学的要素が強い業務だからなのでしょうが、読み進めるために論理的思考力が必要とされたりもします。

難解な本のせいでますます経理が嫌になったら元も子もないので、「経理としての基礎を改めて学びたいので」などと、上司や先輩にお勧めの本を質問してみるのがいいでしょう。最近では、Youtubeなどの動画サービスに経理を学べる動画が多数アップされているので、それらを活用するのもお勧めです。

 

転職も一法だが、「経理経験を活かした活躍」を期待される

人材研究所曽和さんインタビューカット

ここまで、経理の仕事を少しでも面白く感じる方法をお伝えしてきましたが、どうしても経理の仕事が嫌なのであれば、営業職を目指して転職するという手もあります。ただ、今辞めてしまうと、今までの1年半が「単なる空白期間」になってしまうのがもったいない気がします。

相談者はまだ若いので、営業未経験でもポテンシャルを評価してくれる企業はあるでしょう。しかし、そのとき採用企業が相談者に期待するのは、経理の知識を活かした営業活動。つまり、クライアントの財務状況を分析し、経営状態を理解したうえで、課題解決につながるような提案をすることが求められています。

しかし、今の相談者の状態では、「経理の知識を活かす」レベルには達していないと思われます。本人は望んでいない配属だったとしても、履歴書に書かれている以上「経理出身」として恥ずかしくないぐらいの知識は身に付けていないと、転職後に「1年半も経理にいたのに、彼は何をやっていたんだ」と失望される恐れもあります。

いずれ転職するにしても、もう少しだけ経理で頑張ってみてはいかがでしょうか?
経理の基礎知識があり、決算報告書を読み解ける営業は、どこでも重宝がられるはず。決算報告書の公表義務があるのは上場企業、大企業なので、若くして「大手担当営業」を任される可能性だってあります。

そもそも営業職、特に法人営業職は財務知識が必要な仕事であり、多くの人はそれを営業現場で身に付けていきます。「自分はその知識を一足早く身に付けているのだ」と捉えれば、今の仕事に本腰を入れて臨めるのでは?もちろん、そうやって努力しているうちに、経理の仕事自体が楽しくなり「このままでいいか」と思うようになるかもしれませんよ。

 

アドバイスまとめ

経理の仕事を自ら面白がる工夫をしないと、
いつまで経っても状況は変わらない。
「いずれキャリアチェンジするときにも役立つ」と捉え、
経理の仕事に真剣に向き合ってみては?
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康
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