「面白い人」と好印象を与える自己紹介のコツとは?【プロが解説】

「初対面の人にうまく自分を伝えられない」「新しい出会いがあっても仕事につなげられない」など、SNSや異業種交流の場、新規顧客への挨拶回りなど、初対面の人への自己紹介を苦手にしている人は少なくありません。第一印象で面白い、興味深い人だと好感をもってもらい、今後の人間関係につなげる自己紹介にするためにはコツがあります。ブランド開発やコミュニケーション戦略のプロデューサー・横石崇さんに聞きました。

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今の時代にふさわしい自己紹介にアップデートしよう

自己紹介をアップデートしていますか? かつての自己紹介と言えば、社名と部署名を伝えることが重要であり、仕事の起点になっていました。しかし「組織の時代」から「個の時代」に変わっています。会社の内外で、組織や部署を越えたメンバーが集まりチームが編成されるプロジェクト型の仕事が増えているのではないでしょうか?

そんなとき、求められているのは役職ではなく、「この人は何ができて、このチームにどんな貢献できるのか」「何が好きで、どんなスキルをもっているのか」という情報です。自己紹介もそうした個と個がつながるための情報提供にアップデートする必要があります。

名刺交換と自己紹介は違う

初めての相手とは、名刺交換から入ることも多いでしょう。名刺から分かるのは、会社の規模やブランド力、仕事上の役職など社会的な信用を示すものです。名刺交換はいわば「信用の交換」。これからの自己紹介で大事なのは、名刺による信用だけでなく「信頼の創造」です。

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自己紹介で面白い人物だと期待されるポイント

では、どのような自己紹介を行うと面白いという印象を与えることができるのでしょうか。そのポイントをいくつかご紹介します。

覚えてもらうより期待されることが重要

自己紹介では、覚えてもらおうと思いがちですが、人は忘れる生き物です。人は記憶したことをどれぐらいの速さで忘れるかを実験したグラフ、「エビングハウスの忘却曲線」によれば、人は24時間後には約7割を忘れています。

突拍子もない自己紹介やインパクトのある名刺で覚えてもらうことよりも、目指したいのは相手の期待を引き出すことです。経営学者のピーター・ドラッガーは「コミュニケーションの源泉は期待である」「人は自分自身が期待する事象しか知覚できない」としています。

「この人となら何か面白いことをやれそうだ」「あの人ならこんな課題にどんな発想をするだろうか」などと期待してもらうことが重要なのです。

想像力をかきたてて相手の期待値を生み出す

引っ掛かりのある自己紹介で、期待を生み出す方法があります。自分が現在担当している仕事や提供できる価値を、何かに見立てたり抽象化したりすることで、相手の想像力をかきたて、質問したくさせるのです。

例えば、以下2つの自己紹介の場合、どのような効果があるでしょうか。

a:キャリアコンサルタントをしている山田と申します。
b:“ジャングルジム型のキャリアづくり”を応援する仕事をしています。

aは王道の自己紹介ですが、bは「ジャングル型キャリアって何」と質問したくなる。関心をかきたて対話が生まれやすくなります。

未来を語ってポジティブな感情を引き出す

自己紹介は今の自分を語るものと思いがちですが、未来を語ることも大切なコツ。会社名や部署名や肩書などの「名詞」ではなく、「何をしているか」「何をしたいか」動詞で考えてみましょう。

例えば、以下のような自己紹介であれば、相手の期待を引き出す効果があるのはどちらでしょうか。

a:○○食品の販売促進で、親子料理教室を担当しています。
b:「私は、これからは“推しの時代”になると思っています。長年の愛用者が多い〇〇食品では、親子料理教室を開いて“わが家の味”を伝承する推し活プロジェクトを広めています」

現在の仕事内容をそのまま伝えるよりも、こうなったらいいなと考える未来や、今後どんな期待を自分自身に持ってほしいかまで含めて語れると、相手のポジティブな感情を引き出すことができます。

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自分の面白さ、アピールポイントを見つける自己分析の進め方

自分に興味をもってもらい、面白い注目すべき人材として相手の期待や関心を引き出すためには、まず自分を知ることです。社会人になると自己分析をすることはあまりないかもしれません。また、自己分析と言えば、自分のことを掘り下げなければいけないと思いがちですが、そうでなくても自分の環境や好きなものから解釈し、意味付けできることはたくさんあります。

例えばこれからご紹介するいくつかの方法で、自分の考えや思いを書き出してみましょう。いくつもの視点で自分を見つめ直すことで、自分らしさや自分らしいフレーズ、アピールポイントが見えてくるはずです。

自分の名前から唯一無二の語りを作る

自分の名前から、ストーリーを作りましょう。名前は自分で選んだものではありませんが、名前を付けてくれた人の期待や思いが託されています。名前の漢字一文字ずつを取り上げ、連想するキーワードを書き出し、自分なりに解釈して文章にしてみることで、唯一無二の自己紹介ができあがります。

例えば私の場合なら、以下のように紹介します。

:横断できる、フラットに考えられる
:石(意志)が強い、我慢強い
:あがめられる、山がそびえる
「いろんな領域を縦横に行ったり来たりするのが好きで、何事にも縛られたくない性格が強い(石)です。みんなに愛されるような自分の会社(崇)をつくって、新しいことに挑戦しています」

自分のハッシュタグを作る

SNSには、#建築 #犬好きとつながりたい #ラーメン通など、さまざまなタグが溢れています。投稿でハッシュタグを使ったことがある人は多いでしょう。そこで、自分のキャリアにもハッシュタグを付けてみましょう。

タグ化してみることで改めて自分の強みを意識できますし、ハッシュタグになるキャッチーなフレーズを考えることで自分らしい自己紹介のヒントにもなります。

意識して発信することで、プロジェクトやチーム編成を考えるリーダーが、どういうメンバーにすればいいか、誰に依頼しようかと考えたときに、脳内検索キーワードに引っ掛かりやすくなります。

例えば所属タグと偏愛タグとスキルタグで考えてみましょう。

  • 所属タグ:仕事内容、住んでいる場所、出身校など
    #管理部門全制覇  #長野県出身・信濃の国歌えます #映画のまち・調布在住
  • 偏愛タグ:好きなもの、はまっていること、この知識にかけては人に負けないというものなど
    #熱愛阪神タイガース #サブ3を目指すランナー #グルメ好き
  • スキルタグ:得意なこと、努力していることなど
    #エクセルエキスパート #韓国語マスター中 #ヨガインストラクター

好きなブランドから自分らしさを見つける

「自分らしさ」が見つからない、言葉にしにくいという人にオススメの方法が、好きなブランドを「なぜ好きなのか」「どこが気に入っているのか」言葉にしてみることです。好きな理由を通して、自分が理想とする姿をあぶりだすことができます。

私のワークショップではブランドのロゴをプリントしたカード100枚ほどを使いますが、例えばファッションビルや百貨店に入っているテナント一覧をリストとして利用してもいいでしょう。

まず、リストからすべてのショップを「自分らしい」「自分らしくない」の2つに分けます。直観や何となくでも構いません。

次に、「自分らしい」の中から、「より自分らしい」「好ましい」と思うものを3つに絞って、なぜ「自分らしい」「好きだ」と感じたのかを言葉にしてみましょう。そこに、独自の自分らしさや自分の目指す世界観が見えてきます。

自分の仕事を自分らしい言葉にする

自分の仕事をどう説明するかについても考えてみましょう。これまでお伝えしてきたように、名刺にある部署名は無個性になりがち。あなたらしさを伝え、興味を持ってもらう効果まではありません。

改めて、仕事を再定義してみることで、自身の目的意識も高まりますし、先にお伝えした未来を語ることにもつながっていきます。目標が明確になり自己紹介をアップデートするステップになるはずです。

伝え方は下手でもOK、小手先に走るより最強自己紹介のコツは?

自己紹介が苦手な人の多くは、面白いことなんて言えないし、私なんて特に話すほどのことは何もないしと謙虚に考えすぎてしまったり、人前で話すことが得意ではなかったり。私自身もそうでした。どちらかと言えば口下手で苦手。立食パーティーなどで、どんどん名刺を渡して挨拶できる人を見ると、すごいなと思います。

しかし、うまく話そうとしなくていいのです。万人にウケるテッパンフレーズがあるわけではありません。自分にフォーカスするよりも、目の前にいる相手にフォーカスしてみましょう。

目の前にいる相手のために何か役立てることはないか、より良くしたいという意識に切り替えることが大切。その思いがあれば、言葉はうまくなくても、自然と伝わるものがきっとあります。

&Co.代表取締役/プロジェクト・プロデューサー 横石崇氏

横石崇氏_プロフィール画像広告会社・人材会社を経て、2016年に&Co.(アンドコー)を設立。ブランド開発やコミュニケーション戦略、社会変革を中心としたプロジェクト・プロデューサーとして活躍。オーガナイザーを務める働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」は10年目を迎え、国内外で3万人の動員に成功。法政大学 兼任講師。著書に『自己紹介2.0』(KADOKAWA)、『これからの僕らの働き方』(早川書房)。

取材・文:中城邦子 編集:馬場美由紀
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