仕事の“集中力”を高めたい!聴覚・視覚・嗅覚を活用し、「スイッチ切り替え」するコツとは?

コロナ禍で在宅勤務が常態化した人も多くなり、「自宅ではなかなか仕事に集中できない」という悩みの声も増えてきました。そこで今回は、アイウエアブランド『JINS』を展開する株式会社ジンズにおいて、「集中できる環境」の研究プロジェクトを主導する井上一鷹氏にお話を伺いました。「集中」をコンセプトに運営するワーキングスペース『Think Lab』の開発で得たノウハウをベースに、集中力を高めるコツを教えていただきます。

井上 一鷹氏 株式会社JINS 事業企画本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab 取締役

井上 一鷹氏プロフィール画像慶應義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルに入社し、事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略に携わる。2012年、ジェイアイエヌに入社。社長室、商品企画グループマネジャー、R&D室マネジャーを経て現職。「集中」を測るアイウェア「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」のプロジェクトリーダー。株式会社Think Labを立ち上げ、取締役へ就任。算数オリンピックではアジア4位、数学オリンピックでは日本のファイナリストになった経験を持つ。著作に『集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

「五感」を活用して、集中状態をつくる

五感の刺激は、人の心身の状態を大きく左右します。特に「集中」に影響を及ぼす「聴覚」「視覚」「嗅覚」について、集中力を高める活用のコツをご紹介します。

聴覚活用/集中力を高めるホワイトノイズとハイレゾ音源

仕事に集中するためには、音がない静かな環境のほうがいいのか、音が聴こえる環境のほうがいいのか。これは、どちらがいいとは一概に言えません。人それぞれだからです。

無音の環境で集中力が高まる人もいれば、音楽を流すことで集中できる人、また、カフェのように他者の話し声が聞こえる環境がいいという人もいます。「自分はどのタイプなのか」を認識し、その環境をつくり出すといいでしょう。

ただし、「音楽がある方が集中できる」という人も、避けるべきものがあります。「母国語の歌詞がある曲」です。日本人が日本語の楽曲をBGMにして仕事をすると、脳の言語野を歌詞に取られてしまい、集中力が落ちるという実験結果があります。

音楽のほか、集中力を高める効果があるとされる音に「ホワイトノイズ」があります。これは、人間が聴き取れるすべての周波数の音を含み、周囲の音を特定しづらくする効果がある音を指します。

この音を流すことで、注意力散漫な生徒の学習効果が上がった、という研究結果もあります。(ただし、もともと集中力が高い人には逆効果になることもあるようです)ホワイトノイズはYouTubeやスマホアプリでも流せますので、試してみてはいかがでしょう。

また、「ハイレゾ音源(高解像度な音源)」の技術を活用した音も、集中力アップの効果があります。これを活用して空間設計されているオフィスもあります。

ハイレゾ音源は、人が聴き取れる音以外(非可領域)の音も再生できるのが特徴です。例えば、自然環境の音は非可領域も含んでおり、人は明確に聴き取れなくても感覚的に受け取ることでリラックスできるようです。

川のせせらぎ、森の中の鳥のさえずり、波音などの自然音をハイレゾ音源で流すのもいいかもしれません。鳥の声なら上のほうから聴こえるようにスピーカーを設定するなど、自然音をなるべく再現できるといいですね。

「音環境」は集中力に大きな影響を与えます。視覚情報は「見なければいい」のですが、音はすべて脳に入ってきますから。オンラインミーティングでも、音声が不明瞭では集中できません。PCよりもスマホやタブレットなどでつなぐほうが、音質がいいこともありますので、より良い音環境を整えましょう。

視覚活用/視野内10~15%に緑を配置。照明は調色可能に

「視界に入っていることで集中力が高まる」ものがあります。それは「植物」です。人の視野の120度内に入る緑の割合=「緑視率」が10~15%であるとき、ストレスが低減され生産性がもっとも高まるという研究結果があります。

外の緑が見える窓際にデスクを配置する、あるいは観葉植物をデスク周辺に置いたり吊るしたりしてみてはいかがでしょうか。

ただし、フェイクグリーンではむしろ逆効果となります。ですから生きた植物が望ましいのですが、メンテナンスが難しく、枯れやすいものは好ましくありません。世話のしやすさという点では、サボテンなどの多肉植物を選ぶ手もあります。

また、仕事をする部屋の「灯り」は、その色味によって視覚刺激効果が異なります。集中力を高めるには「寒色光」が適している一方、「暖色光」はリラックス効果があります。

コロナ禍の今は在宅勤務をしている方が多いですが、自宅は本来「くつろぎの場」ですから、部屋の灯りを暖色光(電球色)にしている家が多いのではないでしょうか。

自宅の部屋を「集中できる仕事場」にするなら、寒色光(昼光色)の灯りがおすすめです。最近の照明には、リモコンで色味を切り替えられるものも多いので、ONタイムとOFFタイムで使い分けるといいでしょう。

嗅覚活用/アロマでON-OFFスイッチを切り替える

集中力を高めるために嗅覚刺激を活用する習慣は古くからあります。かつての修行僧は、香料を塗って修行に入ったとも伝えられています。今は手軽に利用できるアロマやお香がありますので、それを活用しましょう。

集中力を高めたいときには「ローズマリー」「ペパーミント」、気分を落ち着けたいときは「ラベンダー」が効果的とされています。とはいえ、香りの好みはそれぞれですから、自分で選んでONタイムとOFFタイムの香りを使い分けることをおすすめします。

仕事モードとリラックスモードを切り替えるスイッチとしては、「嗅覚」が効果的です。目と耳は仕事で使いまくり、常に刺激を受けている器官。「視覚」「聴覚」に少々の新たな刺激を受けても、切り替えスイッチとしては機能しづらいんですね。

だから気分を切り替えて集中するには、「嗅覚」「触覚」を刺激すると効果的です。例えば、私たちが運営するソロワーキングスペース『Think Lab』では、来訪時、真っ暗で静かな長い廊下を歩いてもらって視覚・聴覚情報を遮断し、そこでアロマを嗅ぐことで集中状態に入ってもらう仕組みとなっています。

また「触覚」もスイッチャーとして適しているので、アロマの香りがするおしぼりをお渡ししています。嗅覚に加え、おしぼりの「温かさ」「冷たさ」という触覚刺激で気分をスイッチできるというわけです。

なお、「嗅覚」「触覚」の同時刺激でOFFに切り替えるには、炭酸ガスの入浴剤を入れたお風呂につかるのもいいでしょう。次のONのために、しっかりOFFにすることが大切です。

在宅勤務でも、仕事に集中できるようにするためには

これまでお話ししたとおり、集中するためにはスイッチを切り替える必要があります。平常時であれば、オフィスに行けば自動的に仕事スイッチが入りましたが、在宅勤務ではそれが難しいと悩む人が多いようです。

そこで、在宅勤務でもスイッチを切り替え、集中できる環境づくりのコツをご紹介しましょう。

仕事スイッチONのきっかけとなるアイテムを用意する

一旦取り掛かれば集中できるのに、取り掛かかるまでにダラダラと時間を過ごしてしまう人は多いようです。一般論として「意思の力でスイッチを切り替えるのは難しい」と言われます。

「よし、頑張るぞ」という気合いには連続性がなく、非効率です。それよりも「これをきっかけに切り替える」という単純作業のルーティンをつくるのが望ましいでしょう。

そこで「これを身に付けたら集中する」というアイテムを決めておくのも一つの手です。
知人の個人経営者は仕事専用のジャケットを決め、それを着ることで仕事スイッチを入れていました。私の知人には「仕事をするときはメガネをかける」という人もいます。

僕は打合せでもスーツは着ないし、いつもTシャツです。ただ、仕事に入るときだけ「腕時計」をつけます。PCのキーボードを叩いているときも、腕時計が視野に入っているので、「自分は今仕事モードでいなくてはならない」という意識が働き、それを継続できるんです。

仕事のタイプに応じて、空間を使い分ける

仕事に集中するためには、仕事のタイプに応じて場所を変えるのが有効です。仕事には「収束」と「発散」のタイプがあります。「収束」はロジカルな思考で物事を詰めていくもの、「発散」は新しいアイデアを出すクリエイティブなもの。この2つは、取り組むのにふさわしい空間が異なります。

収束系の仕事をするときは、下を向いて視野を狭くしたほうがいい。仕切られたブース内のような空間が適しています。では、発散系の仕事をするには、どんな環境が適しているのか。
アイデアの発想の場を表現した言葉として、古代中国から伝わる“三上”があります。

「馬上」……馬に乗っているとき
「枕上」……寝床に入っているとき
「厠上」……厠にいるとき

つまり、視野が広くとれる空間や リラックスできる空間ということです。実際、公園を散歩しながら、あるいはお風呂につかりながらアイデアを考えるという人もいますね。

「横幅95cm」に仕切った集中スペースをつくる

しかし、在宅勤務で問題となるのは、収束系の仕事に集中するための「仕切られた空間」の確保です。「書斎」がほしいと思っても、一部屋をそれにあてるのは難しい。ワンルームでの一人暮らしの場合、仕事中もソファやベッド、趣味のグッズが目に入っていると集中力をそがれやすいでしょう。

そこで、独自で書斎ブースを設けるなら、パーテーションを活用する手もあるでしょう。その際には、「横幅95cm」を意識してみることをお勧めします。日本人の集中力に関する研究では、「横幅95cm」が最も集中できるというデータもあります。

実際、私たちが商品開発した自宅用のブース型書斎『Think Lab HOME』で、社員を対象に在宅勤務中の集中度を検証したところ、平均193.4%の集中力アップ効果が確認できました 。ちなみに、このブースは再生紙などの自然素材製で、OFF時のリビングスペースを確保できるよう、簡単に折り畳めるものです。

リモートワークする自宅のイメージ画像
『Think Lab HOME』(

コロナ禍を機に、働く環境は大きく変化しました。働く場所が増えたことで、その環境を「選択できる」状況を楽しんだほうが得だと思います。

パフォーマンスを上げる仕事環境をカスタマイズしよう

在宅勤務が常態化したことで、より心地よく働くことができるワークスペースや、デスク・椅子・パソコンなどの備品をカスタマイズできるようになってきました。

自身がパフォーマンスを上げられる環境、いわば「ビジネスドーピング」ができるということです。そんな工夫を楽しんでみてはいかがでしょうか。

INTERVIEW&WRITING:青木典子 EDIT:馬場美由紀
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