ビジネスメールが苦手な人に…相手に伝わる書き方のコツ

リモートワークの拡大により、対面ではなくメールやビジネスチャットなどテキストでコミュニケーションをとる機会が増えました。それに伴い、「文章が苦手でメールがうまく書けない」「文章力のなさを実感した」という人も増えているようです。
苦もなくスムーズに、相手に伝わるメールを書くにはどうすればいいのでしょうか? 多くのベストセラーを生み出した編集者であり、独自の文章術を記した著書『書くのがしんどい』が好評の竹村俊助さんに教えていただきました。

文章に悩むビジネスパーソン

プロフィール

竹村俊助さん顔写真編集者、株式会社WORDS代表取締役
竹村俊助さん

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本実業出版社で書店営業とPRを経験した後、中経出版で編集者としてのキャリアをスタート。その後、星海社、ダイヤモンド社を経て、2019年に株式会社WORDS代表取締役に就任。主な編集・ライティング担当作は『段取りの教科書』(水野学・著)、『ぼくらの仮説が世界をつくる』(佐渡島庸平・著、以上ダイヤモンド社)、『メモの魔力』(前田裕二・著、幻冬舎)など。手掛けた書籍は累計100万部以上。自身の著書『書くのがしんどい』(PHP研究所)も話題。オンラインメディア「note」に投稿した「WORDSの文章教室」は累計150万PVを超える。

書けないのはスキルではなく「メンタル」のせい

「ビジネスメールを書くのが苦手」という声をよく耳にしますが、多くの場合、「書こう!」と思いすぎているのが原因だと思われます。

みなさんLINEを送ったり、SNSに近況を書き込んだりと、毎日のようにテキストで何らかのコミュニケーションをとっているはず。10代の頃からLINEやSNSに慣れ親しんできた若い人こそ、本来書くことは得意なはずなのです。

しかし、それがビジネスメールになったとたんに、「うまく書かなければ!」という思いから身構えてしまい、手が動かなくなる。つまり、うまく書けない原因はメンタルにあるのです。

まずは「書こう!」と思うのではなく「伝えよう」と考えるのがポイント。書くことが目的になると、肩に力が入ってしまいがちですが、「伝える」を目的にすればLINEやSNSとそう変わりはありません。今までよりは自然体で、すっと書き出せるのではないでしょうか。

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「今よりうまく」伝えるには“思いやり3割増し”で

メール文面を考えるビジネスパーソン

ビジネスの基本は、相手の気持ちを思いやること。

たとえば営業職なら「クライアントが何に困っていて何を求めているのか」を考え、その思いに寄り添い提案を行う。これが基本行動。対クライアントだけでなく、上司や先輩、同僚とのコミュニケーションも、相手の気持ちに立って考えることで円滑になります。

しかし、メールなどテキストのコミュニケーションになったとたん、相手への「思いやり度合い」がガクンと減ってしまうケースが見受けられます。「このメールを読んだときに、相手はどう思うか?」に思いを馳せ、相手への思いやり度合いを今より3割ほどアップするよう心がけることで、相手に伝わる、わかりやすいメールに生まれ変わります。

“思いやり3割増し”の方法

●まずは結論から言う

メールでものごとを伝えるとき、背景から書き進める人は意外に多いですが、どうしてもダラダラした長文になりがち。かなり文章を読み進めなければ、何を伝えたいメールなのかがわからず、相手にモヤモヤを与えてしまいます。

まずは結論を書き、このメールは何を伝えたいメールなのか相手にズバリ示しましょう。その後、その理由や背景を説明します。そうすることで、短時間で要点がスパッと理解できる「わかりやすいメール」に昇格させることができます。

●削れるものはなるべく削る

メールでの文章はシンプルが基本。余分な言葉はなるべく削り、要点を明確に伝えましょう。冗長な文章に多く見られるのは次のような無駄な言葉です。文章を読み返し、必要のないものはそぎ落とすことで、相手に負担を掛けない文章に仕上げましょう。

・「とても」「非常に」「かなり」などの強調言葉
強調する必要がない場合でも安易につけてしまうケースが多い。文章を見直し、必要最低限の使い方を。

・「〇〇ですが」「〇〇なので」など文章をつなげる言葉
文章がダラダラ長くなりがちであるうえ、「その後に何か言わないといけない」という気持ちになり、余計な情報を加えてしまうので注意。

・不要な前置き
「お忙しいところ誠に恐縮ではありますが」「ご多忙の折お騒がせして申し訳ありませんが」「もし差し支えなければ」などのクッション言葉を、あたりまえのように使う人は多いが、必要のない場合はカットしたほうがシンプルに伝わる。

●情報はひとつずつ丁寧に伝える

伝えたいことが複数ある場合、ひとつの文章にすべて盛り込もうとする人がいますが、一度にすべて伝えようとすると情報が一気になだれ込み、読み手の理解が追い付かなくなります。

例:商品AとBの広告・販促案件について伝えたいメールの場合

<NG例>
先日お伝えした商品Aの広告費用お見積りについてのお返事ですが、明日までにいただきたく、それを受けて契約書をお送りしますので、そちらへの捺印を来週いっぱいにお願いします。また、商品Bの販促物納品については本社へは再来週の月曜日を予定していますが、各支店には再来週中に順次納品される見通しとなっています。

このようにまとめて伝えてしまうと、情報がこんがらがってしまい、即座に理解することができません。大事なことを見落としてしまう恐れもあります。

基本的には、ひとつの文ではひとつのことを伝えましょう。

<OK例>
商品Aの広告費用お見積もりの件です。お返事は明日17時までにいただきたく存じます。お返事をいただけましたら契約書をお送りします。捺印は来週いっぱい(9日金曜日まで)にお願いします。

次に、商品Bの販促物の納品の件です。本社:12日月曜日、各支店:12~16日の間に順次納品の予定です。

 

このように整理されているほうが受け取り手も理解しやすく、すべての情報を落とさず処理することができるようになります。

●相手を思いやる言葉を「プラス1行」加える

余分なものをそぎ落とし、シンプルに伝えることは、読み手に負担を掛けない「思いやり」の行為です。
ただ、そぎ落としすぎると冷たい印象を与えてしまうのもメールの特徴。エッセンスとして多少の「人肌感」を加えることも重要です。

クライアントあてのメールの場合、必要事項を伝える文章を書いた後、最後に「新商品のCM、拝見しました! 今回のものも素敵で話題になりそうですね」「今朝の〇〇新聞に社長インタビューが掲載されていましたね。顧客を第一に考える姿勢に感銘を受けました」などと一言加えると、「うちのことを理解してくれている」という印象を相手に伝えることができます。

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「編集者視点」で書いたものを見直せば、さらにブラッシュアップできる

竹村俊助さんインタビューカット

文章を書くには「慣れ」も必要です。何度も文章を書く中で、わかりやすく伝えるコツが自然と備わり、文章を書くのが負担にならなくなります。

おすすめしたいのは、「編集者視点」に立つこと。
文章を1から書くのには苦手意識があっても、多くの人は「すでにある文章を修正すること」はできるはず。他人が書いた文章に対しては「てにをはが間違っている」「ここをこう変えたらわかりやすいのに」などと思ったことがあるのでは? よって、一人で著者と編集者の一人二役をやれば、わかりやすい文章にブラッシュアップすることが可能になります。

まずは下手でもいいから、気にせず文章を書いてみましょう。そして、書き終わったら「編集者視点」に立って客観的に文章を見直し、違和感がある部分を整えていく。これを繰り返すことで、書くことに抵抗がなくなり、文章もよりわかりやすく、伝わりやすくなるはずです。

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取材・文:伊藤理子 撮影:平山諭
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