「英語が話せるようになりたい」と思いながら、それが非常に困難なことだと考えている人は少なくないでしょう。新刊『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!』を上梓したイングリッシュ・ドクター(R)(英語学習の“お医者さん”)西澤ロイさんに、著書で紹介している数々のメソッドの中から、日本語を英語で簡単な表現する方法や発想法をご紹介いただきました。
西澤ロイ(にしざわ・ろい)イングリッシュ・ドクター
英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。最新刊『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!(⇒)』、ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)などの著書がある。さらに、ラジオで3本のレギュラーがオンエア中。特に「木8」(木曜20時)には英語バラエティラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ⇒」が好評を博している。
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「英語のボキャブラリーがないから話せない」は勘違い
英語が話せないと思い込んでいる人が英語を話せるようになるためには、一体何が必要なのでしょうか。英語を習得する時間の目安として、3,000時間は必要だといった情報もあります。仮に、1日1時間勉強したならば約9年。もし毎日3時間頑張れたとしても、3年はかかる計算になります。それだけ道のりが遠いと言われたら、諦めてしまう人も多いことでしょう。
しかし、イングリッシュ・ドクターである私の意見は、「日本人が英語を話せるようなるには1日もかからない」です(2時間で話せるようになる講座や企業研修を実施し、これまでに約1,000人の方に受講いただいています)。
そもそも英語学習に関しては、多くの方が様々な勘違いをしています。中には「英語は暗記科目である」「英語が話せるためにはたくさんのボキャブラリーが必要」といった大きな勘違いもあります。
言語学的なデータとして明らかになっていることですが、英語では約1,000単語が繰り返し使われ、日常会話の8割を占めています。これは、日本の中学校で習う英単語にほぼ相当します。
つまりこの数字からも、ボキャブラリーを増やさなければダメだというのは単なる勘違いだということが分かるでしょう。いきなり頑張って単語やフレーズを覚えようとするのは、最初のボタンを掛け違っているようなものなのです。
「英語が話せない」は主観に過ぎない
さらに、学習者の方々にも、英語を教える人たちにも一度しっかりと考えていただきたいことは「英語が話せる」という言葉の意味です。
先ほども挙げた「3,000時間が必要」という話は、レベルとして、ある程度専門的な会話が英語で行なえるようになること(つまり、高いスピーキング力とリスニング力を身に付けること)が想定されています。
ところが、誰もが高い英語力を欲しいわけではありません。もちろん、身に付くならばそれに越したことはないでしょうが、人によって目標は違いますよね。
例えば「外国人の友達を作って、楽しくコミュニケーションが取りたい」人もいます。少しくらい下手な英語でも、「外国人と仕事ができればOK」な人もいるでしょう。海外旅行が好きだから、「不自由のない程度に旅行会話ができれば満足」かもしれません。
ここで大切なのは、その人がどう考えるかという主観です。「英語が話せる」と思えるかどうかも、まさにその主観の問題なのです。
「英語が話せない」と思ってしまうことの弊害
現状の英語力のレベルは、人によって違います。全くの初級レベルの人から、ネイティブ顔負けの実力を持つ人までいるでしょうが、そこは重要ではありません。重要なのは、その人が「自分は英語ができる/話せる」と思えることなのです。
世の中には、TOEICで高得点を持っていながら「私は英語が話せない」と思っている人が少なくありません。また、例えば500~600点くらいの人が、もっとスコアが高い人たちを横目に「自分の英語力はまだまだ」で「自分は英語が全然できない」と思い込んでいるようなケースもたくさんあります。さらに、長年の間ずっと「自分は英語ができない/話せない」と思い続けてしまっています。
人間の心は、とてもロジカルにできています。ですから「英語が話せない」と思うと、英語を話そうとしなくなるケースがほとんどです。「できない」と思っていると、堂々と使おうとしなくなります。その結果、経験値が積めなくなります。つまり、「話せない」と思うことで「英語の上達が遅くなる」という弊害が起こってしまうのです。
一方で、TOEICスコアが300~400点台であっても、堂々と英語でコミュニケーションを取り、海外に何度も行ったり、外国人と仕事をしたりできる人もいます。彼らは、「英語が話せない」などと言い訳をせずに、英語を使ってどんどん行動をしているのです。
中学レベルの英語力があれば問題なし!?
最も大切なのは、「英語が話せない」と“決めつける”のをやめることです。
なぜなら、日本の義務教育で英語を学んだ人であれば、誰でも英語は既に話せるからです。例えば、以下のような簡単な中学レベルの英語だったら誰でも使えるはずです。同じレベルで使える外国語が他にあるでしょうか?
ほとんどの方は、英語以外にはないはずです。学校で教わってきたことで、あなたはすでに英語が話せるだけの力を持っているのです。
* 住んでいる場所(I live in ○○.)
* 好きなものごと(I like ○○.)
* したいこと(I want to ○○.)
* 「これは何?」といった質問(What is this?)
……etc。
英語で言葉に詰まってしまう2つの大きな原因とは?
よく言われることですが、英語はコミュニケーションの「道具」です。料理に例えるならば、「包丁」のようなもの。「私は包丁が使えない」と思っている人は、料理ができるようにはなりませんよね。
同様に、「私は英語が話せない」と思っていては、英語でうまくコミュニケーションが取れるようには、なかなかならないのです。
英語は使わなければ上手になりません。使うことではじめて「経験値」が得られ、本当の学びを活かしてレベルアップすることができます。
主観の問題だからこそ、英語を「話せない」ではなく、いますぐに「話せる」という認識に切り替えるべきなのです。
そしてどんどん英語を使うことで、上達を加速させていく──。ぜひそうすることを、多くの方にオススメします。
ただし、英語を実際に話そうとすると、言葉に詰まってしまうこともたくさんあるでしょう。でもそこで「やっぱり英語は話せない」などと早合点してはいけません。英語は普段使っていないから、言葉に詰まってしまうだけなのです。
その代表的な2つの原因をご紹介します。
<原因1>単語が思い出せないだけ
普段から英語を使う生活をしていなければ、昔覚えた英単語がなかなか思い出せなくても仕方がありません。私は「ボキャ忘却症」と名付けておりますが、それにはリハビリが必要です。
リハビリといっても難しいことは何もなく、単語カード(フラッシュカード)を使って、思い出して口で言う練習を重ねるだけです。パッと口で言えるようになりたい単語やフレーズの「日本語訳」をカードの表に書きます。そして裏に、その英語を書いておきましょう。
知らない単語を新たに覚えるわけではなく、既に知っているけどパッとは思い出せない単語で練習するわけですから、難しいことは全くありません。
<原因2>頭の中の日本語が難しいだけ
これは、新刊『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!(⇒)』にも書いていますが、多くの方が陥りがちな落とし穴です。日本語は、母国語であり自由自在に使いこなすことができますから、一文の中にたくさんの情報を詰め込んだり、複雑な構造をした文を無意識に使ったりしているのです。
例えば、約束の時間になっても相手が来ない時に、「遅いと思って電話したらまだ寝ていた」というような発言をすることがありますよね。
それと同じことを英語で言ってみてください。パッと英語にできたならば素晴らしいです。もし、ここで英語に詰まってしまっても、そこで「英語は話せない」とか「英語は難しい」などと勘違いをしないでいただきたいのです。
なぜならこれは、英語の問題ではないからです。頭の中にある、元となる日本語が難しすぎるだけなのです。
実は先ほどの文には、たくさんの情報が詰まっています。
↓
「(彼が)遅い」と「(私が)思った」。
そして「(私が彼に)電話をした」ら、「(彼は)まだ寝ていた」。
このように分解してみると、たくさんの情報が短い文の中に詰まっていたことが分かります。例えばこれを英語にするならば、以下のように表現できるでしょう。
So I called him.
And he was still in his bed.
中学レベルの単語ばかりですから、答えを見たら「これなら言える」と思う人が多いでしょう。つまり、日本語での表現をそのまま英語に訳すことが、難しすぎただけなのです。
日本語を「ほぐす」ことから始めよう
外国語を学ぶときの基本は「直訳」です。「遊ぶ=play」「家族=family」という感じで意味を覚えていますから、逆に英語を使う時にも当然ながら直訳で表現することが基本になります。
ただし、母国語である日本語は、難しい単語を山ほど知っています。そのまま直訳すると、どんどん難しい単語を覚えなければいけなくなってしまうのです。
英語の日常会話の8割は簡単な中学英語ですから、難しい言葉はほとんど必要ないということです。ですから、ボキャブラリーを増やしたり、フレーズを使えるようになる練習をしたりする前に、頭の中にある日本語を「ほぐす」練習から始めてみてください。
例えば、「小学生にも伝わるような平易な言い方を考える」ことが一つの効果的なやり方です。
まとめ:「私は英語が話せる」と認めよう
「日本人は英語が話せない」という言葉を耳にするたびに、私は本当に残念な気持ちになります。一方的な主観にしか過ぎない否定的な考えが、多くの人の心に刷り込まれてしまっているからです。そもそも「話せない」と思うことにも、「話せる」と思うことに、大した根拠はありません。そう信じるかどうか、というシンプルな話なのです。
しかし、「話せない」と思い込んでしまうと上達が遅くなり、下手をすると死ぬまで一生、そうやって否定し続けることになってしまいかねません。でも反対に、「話せる」と認めることを選んだならば、英語をただ「学ぶ」ところから、実際に「使う」ステージに進め、経験値を高めながら上達を加速させることができます。
「私は英語が話せる」と認めることには、特に時間はかかりません。その後で、上記の2つの「英語が話せない原因」を解消するために、1~2時間も練習すれば、そのコツを掴むことができるでしょう。
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