『転スラ』の「スライムに転生」「人に擬態」を英語で言えますか?

主人公が異世界にスライムとして転生するというファンタジー『転生したらスライムだった件』、略して『転スラ』。そのマンガに登場する様々なセリフを題材に、英語をちょっと学んでみませんか?
『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている英語学習の“お医者さん”西澤ロイさん。英語学習の改善指導なども行っている西澤さんが、『転スラ』を題材に、英語表現のスキルアップのヒントをお伝えします。

転スラ
▲(C)伏瀬・川上泰樹/講談社

「どうやら俺はスライムに転生してしまったようである」

英語でのフレーズや英文をただ暗記してしまうと、応用が利きづらくなってしまいます。せっかく英語を学ぶのであれば、少しでも英語に対する理解が深まり、自分でもしっかりと使えるようになった方が良いですよね。そのための“クスリ”として、マンガ『転生したらスライムだった件』()のセリフを英語でどのように表現できるか解説します。

まず取り上げるのは、転生した直後の主人公リムルの言葉です。

リムル「どうやら俺はスライムに転生してしまったようである」
(第1話「死亡~そして転生」より)

「転生」は、名詞ではreincarnation、動詞ではreincarnateという言葉を使って表現します。長いので難しく見える単語ですが、語源としては

re(再び)+in(中)+carn(肉)+ate(~させる)

つまり、「再び肉体の中に宿らせる」という意味なのです。そのため「転生する」という意味では、受け身にして「be reincarnated」のように言う必要があります。

転スラ
▲(C)伏瀬・川上泰樹/講談社

上のセリフは、例えば以下のような英語で表現できるでしょう。

Maybe I was reincarnated as a slime.
(多分、スライムに転生してしまった)
I seem to have been reincarnated as a slime.
(スライムとして転生してしまったようだ)

なお、2つ目の英文が文法的にちょっと難しいと思う人は、スルーしてしまってください。「~のように見える/思える」という意味の「seem to (do)」を使っています。「転生した」という過去の話を伝えたいのですが、toの後には「動詞の原形」が来なければなりません。その場合、完了形(have+過去分詞)を使う決まりのため、「to have been reincarnated」になっています。

ちなみに、マンガの表紙に併記されている英語タイトルは、残念ながら文法的には正しくありません。

Regarding Reincarnated to Slime

と書かれているのですが、前置詞regardingの後は「名詞」でなければなりません。
例えば、

regarding my reincarnation to a slime(スライムに転生した件)

もしくは、

regarding my reincarnation as a slime(スライムとして転生した件)

であれば文法的にも正しくなります。

なお、英語版の正式なタイトルは

That Time I Got Reincarnated as a Slime(私がスライムとして転生したあの時)

と訳されているようで、Wikipediaには英語版のページが存在しています。

英語版Wikipediaのページ

「社会の窓を全開したまま大通りを闊歩していたかのような気分だ!」

次は、巨大なオーラ(妖気)を出したままにしていたことに気づいたリムルの言葉です。

リムル「社会の窓を全開したまま大通りを闊歩していたかのような気分だ!」
(第2話「ゴブリン村の守護者」より)

「社会の窓が開いている」は

Your fly is open.

のような表現がよく使われます。なお、このflyを「ジッパー」という意味で暗記している人もいるかもしれませんが、厳密に言うとズボンのジッパーやボタンを隠す箇所(比翼)を指しています。

転スラ

上のセリフは、私だったら例えば以下のような英語で表現するでしょう。

It’s like my fly was wide open. I’m so embarrassed.
(社会の窓が全開だった感じで、超恥ずかしい……)
I feel like I was walking the street with my fly open.
(社会の窓を開けた状態で、通りを歩いていた気分だ)
I feel like I walked a long way and my fly was open.
(長い距離を歩いて……社会の窓が開いていたような気分だ)

上記は元が難しいセリフなので、英語もちょっと難易度が高いです。
しかし、「Your fly is open.」は非常に簡単なフレーズですので、ぜひ使ってみてください(使う機会はなかなかないかもしれませんが……)。

「やっぱり! そうだと思った」

あなたは、「やっぱり」を英語で言えますか?
以下は、主人公リムルが、運命の人であるシズと出会った時の会話です。

シズ「故郷はどこ? スライムさん」
リムル「…日本だよ」
シズ「やっぱり! そうだと思った」
(第8話「懐かしい香り」より)

「やっぱり」という日本語は、いろいろな意味に解釈できるため、なかなか英語には訳しづらい言葉です。1対1で英語に変換しようとはしない方が良いでしょう。

ここでの「やっぱり」は、「予想通りだった」という気持ちで使われています。「やっぱり! そうだと思った」というカタマリは、例えば以下のような英語で表現ができるでしょう。

Yeah, I knew it!
(そうだと思った)
Yes, I guessed it right!
(やった、私の想像が合っていた)
Oh, that’s exactly what I thought!
(なんと、私が思ったまさにその通りだ)

上記のフレーズは、日常会話でもそのまま使えます。
ぜひここぞという場面で使ってみてはいかがでしょうか。

「せっかく人に擬態できるようになったのに!」

次は、味が分からないスライムになってしまったリムルが、人間の姿に擬態できるようになってから言う以下のセリフです。

リムル「そうだよ なんで忘れたんだ!?
せっかく人に擬態できるようになったのに!
美味しいご飯を食べていないじゃないか!!」

(第12話「ジュラの森の強者」より)

転スラ

ここでのポイントは「人に擬態する」です。「擬態」でGoogle検索するとmimicryという単語が出てきますが、この動詞形mimicは「口真似をする」「しぐさを真似る」というイメージです。

リムルが行なう擬態は、見た目の再現度も非常に高い「変身」のようなものですから、「変装する」「仮装する」ことを表すdisguiseの方がピッタリ合うでしょう。

上のセリフは、例えば私ならば以下のように訳すことでしょう。

How can I forget? Now I can disguise as a human, and I haven’t been eating delicious food at all!
(まさか忘れるなんて……。もう人間に擬態できるのに、美味しいごはんを全く食べていなかった)

なお、現在完了形+進行形(の否定文)にしたのは「ずっと~していない」という気持ちを表現するためです。

この「現在完了形+進行形」の形は、「ずっと~している」という今も継続していることに対して使えます。

例えば以下のような表現は、非常に便利ですよ。

I have been learning English for 10 years.
(英語を10年間ずっと学んでいます)
I have been going to the gym since last year.
(去年からずっとジムに通って体を鍛えています)
I haven’t been sleeping well lately.
(このところずっとよく眠れません)

「悪い話ではない。だが決めるのはお前だ」

最後に取り上げるのは、のちに鬼人となるオーガのソウエイが、ベニマルに伝えたこのセリフです。

ソウエイ「悪い話ではない。だが 決めるのはお前だ」
(第14話「大鬼族(オーガ)の事情」より)

転スラ

「悪い話ではない」における「話」は、storyと訳すことはできませんね。なぜなら、storyは「物語」という意味での「話」だからです。

ここでは、リムルがオーガたちに行なった「提案」を指していますので、proposalという単語を使って

It’s not a bad proposal (at all).
(悪い提案では(全く)ない)

などという英語に訳すのが良いのではないでしょうか。

また、「決めるのはお前だ」という言い方には、決まったフレーズがありますので、これを覚えてしまうのもありです。

It’s up to you to decide.

「It’s up to 人」で「(人)次第だ」「(人)の手に委ねられている」ということを意味します。そこにto不定詞を加えることで、具体的な行動の内容を表現することができます。

他にも、以下のような言い方もできますよ。

It’s your choice.
(あなたが決めることです)
You decide.
(あなたが決めて)

最後に:好きな気持ちを借りよう

『転スラ』の有名なセリフを題材に、英語表現について解説してみましたが、参考になりましたでしょうか?

「英語を学ぶこと自体が好きだ」という人や「英語という言語が好きだ」という人は、あまり多くはありません。英語を学びたい/学ばなければ……と思ってはいても、気が進まなかったり、なかなか重い腰が上がらなかったりする人の方がずっと多いでしょう。

そういう時に大切なのは、自分の「好きなもの」を使って英語学習を行なうことで、それに対する「好きな気持ち」を借りること――。そうすれば、決してワクワクはしない英語学習だったとしても、ワクワクした気持ちで行なえます。

『転スラ』に限らず、ぜひあなたの好きなマンガで、「このセリフを英語で言ったらどうなるだろう……?」などと考え、それを英語学習のキッカケにしてみてください。

『転生したらスライムだった件』とは?

『転生したらスライムだった件()』、略称『転スラ』は、小説投稿サイト『小説家になろう』で連載されていたWEB小説を大幅に改訂し、2014年5月よりマイクロマガジン・GCノベルズから刊行。さらに、原作をもとにしたマンガや、マンガ版を元にしたアニメなどのメディアミックス展開が行われている。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

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著者プロフィール

西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター

英語学習がうまくいっていない人専門のイングリッシュ・ドクター(英語の“お医者さん”)。英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数()。さらに、ラジオで3本のレギュラーがオンエア中。特に「木8」(木曜20時)には英語バラエティラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ」が好評を博している。★「イングリッシュ・ドクター」公式HP(

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