パワハラ、セクハラ…女性部下と会話するのが怖い|川崎貴子の「女性社員ニガテ意識克服塾」

女性社員に対して「どう接していいのか分からない」「何を考えているのか分からない…」そんな悩みを抱えている男性社員の皆さんへ、
女性のキャリア支援やコンサルティングなど、のべ1万人以上の女性にアドバイスをしてきた「女のプロ」川崎貴子さんが、解決策をご紹介します。

今回は、「女性社員にパワハラ、セクハラと言われないために、どう接したらいいのか」というお悩みについてです。

【相談内容】
女性社員をどのようにマネジメントしたらいいのか悩んでいます。交流を深めよう褒めれば「セクハラ」。注意をすれば「パワハラ」。君子危うきに近寄らず精神で声をかけないようにすれば「私だけ無視されている」と人事に訴えられた同僚(男性、課長職)もいます。「受け取る側がセクハラと思ったらセクハラ」というのは理解していますが、だとしたら、どのようなスタンスで女性社員と向かい合えばいいのでしょうか?
(41歳、男性)

 

相談者さんが40代ということで強引に同世代と括らせていただいて。
私たちが会社に入ったころは、企業内セクハラもパワハラも今ほど問題視されていませんでしたね。企業のCMもこれほど頻繁に、ジェンダー的観点からの批判や炎上はしなかったものです。
ですから、「昔はハラハラ言われなくて良い時代だったなぁ」などと懐かしむような当時の上司たち(現在50代~70代?)のマネジメント方法をわれわれは踏襲できません。モデルケースなきまま上司業を遂行するわけですから、相談者さんを含む多くの現役男性上司たちが悩むのは、ある意味当然の事と言えるでしょう。

ただ女性側は、
男性上司がわかりづらいと言う「グレーゾーンのハラスメント」も
定期的に放送される「ジェンダー炎上CM」も

「どうしてわからないのかが、わからない」
「正気?」

と、毎回目玉をひん剥き過ぎて、すっかりドライアイなのであります。

このあたりの認識において大きくて高い壁があるという事を、まず相談者さんにはご理解いただきたいのです。

私たちが新卒のころだって、男性上司の言動に嫌な思いをしたり、それが理由で退職、転職したり、泣き寝入りした女性たちはたくさんおりました。

ですから、今、「上司に厳しい、ぎすぎすした職場や世の中になった」のではなく
「真っ当になってきた」のだと私は認識しております。

「セクハラ発言してもなぜか許される上司」になれる?

「受け手がセクハラと思えばセクハラ」と言われたら、いっそのことセクハラ発言してもOKな上司を目指したくなるのが人情、人間というものです。地雷もないし、気を使わなくていい。女性たちに「許される」男性になるのが一番の解決方法に見えます。

私がOL時代に職場でほんの数人、そのような「許される」男性上司に出会いました。
「A課長に下ネタ振られても、なぜかしょうがないなーって思っちゃう」
「B部長にはスタイルを褒めらても嬉しい」
と、同僚たちは給湯室で噂していたものです。

ほかの男性上司に同じことをされたら
「ほんっとにやだ!」
のオンパレードなはずの言動や行動ばかり。

職場じゃなくても、なぜか女性たちに「許される」男性というのはおります。
働かなかったり、借金があったり、浮気三昧だったとしても、許される男たち。
なぜ、許してしまうのでしょう。なぜか、分からないのです。
女性たちが「なぜ彼だけを許してしまうのか?」を言語化できないことと同様に、この「許されるスキル」は、世間に流布される事はなく、ほかの男性が習得できないという致命的な特徴があります。
彼らはいわばその道の天才。努力で到達できる類のものではないのです。
つまり、「セクハラ発言してもOKな上司」を目指しても、地雷をどっかんどっかんと踏み倒すことになりかねませんし、周りが気を使って苦笑いするのを「許されている」と勘違いする可能性もあります。やめておきましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

セクハラ・パワハラにならない話し方

では、どう接したらいいのでしょうか。
私が男性上司向けに「セクハラ・パワハラにならない話し方」をお話する際、必ず言っていることがあります。
それは、
「いつもご自身の隣に、エア奥さん、エア彼女、エア娘を置いてください」という事です。

部下の女性と何気ないコミュニケーションをとろうとする時、もしも隣に奥さんがいるとすれば、
「Aちゃんはいつもスタイルいいなぁ」
とは言いません。
「Aさんは今日も溌溂としていていいね!」
とは言えても。

指導する際も同じく、隣にエア彼女がいれば、
立場をほのめかして部下を叱責するような真似や、大事な女性に人格を疑われるような真似はできないというものです。

また、「セクハラ発言」には非常によく見られるのが、
照れ隠しで余計な事を言ってしまうケース。

例えば、くしゃみをした部下に、
「風邪?大丈夫?」
とだけ言えばいいものを
「風邪?昨日デートだったんじゃないの~??」
とか、
ほんとに死ぬほど余計な事を、照れ隠しで冗談っぽく(本人談)付け足してしまう。
深い意味があろうがなかろうが、このセンスの無さが女性たちを「キモイ!」と大合唱させるのです。

とはいえ、すべての女性部下が善良で真面目な被害者だとは言いきれません。
セクハラ、パワハラを盾に、働かない、さぼってばかりいる、職場の士気を乱す部下だって一定数存在します。そのようなタイプの部下を指導する際は、二人きりや密室を避けるなどの自衛は必要です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

どうしたらお互いの立場や気持ちをわかりあえるのか?

先ほど、男性と女性の間には認識の高い壁がある、と書きましたが、私たちは完全に他人の気持ちになる事はできません。それは同性同士でも同じです。
ただ、想像力を発揮して「相手は不快になるのでは?」「攻撃されたと思うのでは?」と自制する事はできます。

それには、相手の立場を経験してみる、思い出してみるという方法が一つ。
例えば私は、25歳で起業し男性の部下を持ちました。それから22年。何度も部下の男性に「そんなにイケメンなのになんで結婚しないの?」
と、本人(私)はコミュニケーションのつもりで口を突きそうになり、喉元でぐっとこらえました。
給湯室で「そんなこと言われたくない」と思っていたOL時代の自分を必死に思い出して。

もう一つの方法は、さきほどの対処法にも書きましたが、「自分の大切な異性(妻や彼女や娘)がされたら、言われたら、どう思うか」を想像する事です。

以前、私が感銘をうけたオバマ前大統領の文章があります。

母子家庭に育ち、今は女性3人(妻ミシェル、2人の娘マリアとサーシャ)に囲まれて暮らすオバマ前大統領が、2016年にグラマー誌に寄稿したエッセイ「私はフェミニスト」です。
これを読んだ時、社会や企業内で、男女が共に尊重し合い、固定概念を捨てて協力し合える未来が見えるかのようでした。
翻訳を引用して一部をご紹介します。

私の人生で最も重要だった人はすべて女性だった。私を育ててくれたのは、発展途上国で女性に権利を与えるための運動にキャリアのほとんどを捧げたシングルマザー。祖母は、母の子育てを手伝ってくれたほか、銀行勤務でガラスの天井にぶつかった人だ。忙しいキャリアと子育ての両立を図るミシェルを見てきた。多くの働く女性と同じように、夫の選択には疑問を投げかける人がほとんどいないことを知りつつ、彼女は(仕事と子育ての)トレードオフにどのように対処すべきかという期待と判断に悩んでいた。現実には、娘たちがまだ小さかったころ、私は法律の教授としての仕事をかけもちしつつ立法関連作業で家を空けることがよくあった。今、当時を振り返ってわかるのは、私も手伝いはしたが、基本的には私のスケジュール、私の任期がすべてだった。子育ての負担は均衡の取れない不公平な形でミシェルにのしかかっていた。
そして私は今、女性が直面している特有の課題についてよく知っておきたいと思う。それは私のフェミニズム観を形成したものでもある。ただ正直に言うと、2人の娘を持つ父親となったことで性の固定観念がいかに私たちの社会を支配しているかを知るようになったのも事実だ。些細な、そして深刻な社会的な合図が文化として伝播されていった。女性がある種の見た目、行動、さらには思考をしなくてはならないという猛烈なプレッシャーを受けているのを感じている。

娘がいる父親が、妻のいる夫が、母や祖母のいる息子たちが、上司や部下を「自分の大切な人たち」と置き換えて考える時。
息子がいる母親が、夫がいる妻が、父や祖父のいる娘たちが、上司や部下を「自分の大切な人たち」に置き換えて考えられる時。

その時、私たちはコミュニケーションやマネジメントにおいて、何がダメで、何がありなのか。どうしたらもっと両者が理解し合えるのか。
その方法が個々に浮き彫りになり、やがて全体に広がってゆくのだと思っています。

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回答者:川崎貴子f:id:kashiemi:20171127101518j:plain

リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

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イラスト:yoko
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