どこまで準備しておけば安心なの!?──澤円のプレゼン失敗克服法【前編】

「プレゼンは成功より失敗のほうが圧倒的に多い」とか「常に失敗にビクビクしてしまうので、できればプレゼンはしたくない」とか思う人の方は、かなりの多数派かもしれません。今回の記事ではどうすれば「失敗の罠」を避けられるのか、いろいろな角度でお話ししたいと思います。

技その1:とにかく準備する

当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、準備に勝る薬はありません。準備を入念に行えば行うほど、失敗のリスクは減っていくことになります。準備をしていることで、それがそのまま自信になり、苦手意識の克服を行うことができたりします。

準備には何が含まれるのでしょうか?

  • コンテンツの準備
  • 予想される質問への対応表
  • プレゼンそのもののリハーサル
  • 終わった後にフィードバックをもらえる仕組みづくり

これだけそろっていれば、バッチリですね。とはいえ、時間的な制約もあるし、ほかの仕事や学業と並行してやるのはなかなか大変。準備に時間をかけられなかった…という意識が自信喪失を生み、さらに本番での失敗のリスクが上がることもあります。

失敗した経験のある人が挙げる理由のトップは、おそらく「準備不足」ではないかと思います。では、どれだけ準備すればいいのか?何をもって100%と呼ぶのか?

この答えは一つではありません。何日かけてプレゼン資料を作っても不十分とみることもできますし、何回リハーサルをやっても足りないとも言えます。

では、何をもって「準備ができた」と呼ぶのか。

澤の定義は「自分がプレゼンテーションをしている姿を想像できればOK」としています。
スライドができてOKなのではなく、「この資料を使って話している自分」や「プレゼンの途中で聴衆に語り掛けている自分」や「出てきた質問に笑顔で答えている自分」がイメージできれば、準備完了と定義します。

とはいえ、準備は寸前までする権利がプレゼンテーションを行う人には与えられている、というのが澤の持論です。

なので、最後の1秒までプレゼン品質向上のための準備は続けます。ステージでのプレゼンなら、演台に姿を現す寸前まで。会議室でのプレゼンなら、扉を開ける寸前まで。ぎりぎりまで脳内でプレゼンの準備をします。

その時に大事な心構えは「その場で調整できることだけに集中する」ことです。

参加者の顔や服装で、ちょっとしたアイスブレイクを思いつく、すぐに見せられるネット記事を表示しておく、今朝見た新聞の記事内容をもう一度思い出す、そんなところでしょう。

でも、これは十分なプラスαを提供することができます。すなわち、プレゼンテーションをする貴方の価値が上がったことを意味します。これは確実に自信につながります。

事前準備が不十分だと感じるなら、限られた時間内でできる最高の準備に集中し、それを寸前まで続ける。これだけでも失敗のリスクを大きく下げることができます。

もちろん、資料作成の時間に集中できずにネットサーフィンをしたり、リハーサルをできる時間に飲み会を入れてしまったりするのも自己責任。

後悔するぐらいなら、できる限り前もって時間を確保して準備を進めるのが何にも勝ります。スケジュール調整も、プレゼン成功には不可欠な要素です。
(ビジネスや学業も同じですね、これは)

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技その2:「これができればOK」というチェックポイントを複数用意する

  • 「あー、時間が足りなくてスライド全部話せなかった…」
  • 「デモが固まっちゃった…練習ではうまくいったのに…」
  • 「キーマンが途中で寝ちゃった…テーマが退屈だったのかな」

上記のような経験がある方、少なくないのではないでしょうか。あ、傷をえぐっちゃいましたか?!すいません。

でも、起きてしまったことは仕方がありません。過去は変えられないので、未来に目を向けましょう!

そもそも、プレゼンテーションにおける失敗は、誰が一番初めに気づくかといえば、たいていの場合にはプレゼンター本人です。それも、聴衆が気づかないような小さなミスに動揺し、さらに大きなミスを誘発することも多いのではないでしょうか。

つまり、プレゼンテーションの失敗を大きくするのは、自分自身であることが多いわけです。

プレゼンは「相手に行動してもらうこと」が大前提であることは、なんどもこの連載でも触れてきました。そして、プレゼンで相手に印象付けるものを「核」と定義しました。

この「核」が伝えることに集中しさえすれば、多少の失敗は気にならなくなります。

途中で噛みまくろうと、デモで失敗しようと、スライドのアニメーションが予想と違う動きをしようと、「言わなくてはならないこと」「伝えきらなくてはならないこと」に集中しさえすれば、失敗にかまっていられなくなります。

そのために必要な心構えは、「これさえ伝わればOK」というトーキングポイントを複数用意しておくことです。スライドなら2~3枚。それも、序盤・中盤・終盤に散らしておくのがよいでしょう。

序盤で失敗しても中盤で取り返す、終盤でミスっても序盤と中盤のトーキングポイントでの印象付けで最悪の事態を回避する。このようなリスク分散は、自分の精神安定のためにも効果的です。

  • 「うーん、今日のお客さんはノリがいまいちだなー」
  • 「いけね、前半の決め台詞でつっかえちゃった」

こんなことになったとしても、「これさえできればOK」というポイントさえ用意しておけば、リカバリーは十分可能となります。

すべてのスライドを完璧にやろうとすると、時間が足りない感覚になり、結果的に失敗リスクが上がります。

選択と集中。まさにビジネスと同じ発想で臨みましょう。

──「プレゼンツールや質問対策はどうすればいい?」に続きます!

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著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術
Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

(撮影:栗原克己)
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