プレゼンが時間ピッタリ終了、質問を受けまくる…成功談から学ぶコツ【前編】──澤円のプレゼン塾

「澤円のプレゼン塾」2016年一発目の投稿は、めでたさを演出すべく「成功」をテーマにしたいと思います。
今回は澤が今まで行った数千回のプレゼンの中で得た成功体験から、「時間きっかりにプレゼン終了」と「質問を受けまくる」コツをご紹介させていただきます。

澤のプレゼン成功体験1:時間きっかりにプレゼン終了!

澤のモットーは「時間ぴったりにプレゼンを終了させる」です。

もちろん、単に終わればいいわけではありません。伝えるべき内容は完全に伝えきって、なおかつ後半にやたらとスライドを飛ばしまくったりすることなく、ペースを維持しながらきっかりに終わる。これ、成功すると完全にクセになります(^^)。

もちろん、時間調整のためにスライドを何枚か飛ばしたり、途中で時間調整をしたりすることはあります。そんな時も「調整している感」を出さずに、いかにペースを守りつつ時間通りに終わらせるか。これが勝負です。

人によっては、徹底的にリハーサルをしてそのペースを覚えるというアプローチの方もいると思います。

私の場合は、一年通じてほぼ毎日、それも1日で2セッション・3セッションは当たり前なので、どうしてもリハーサルをする時間を取るのが難しくなります。

なので、「スライドを飛ばしても意味が通るような言葉の選び方」や「少し時間を延ばすときに使えるエピソード」を、できる限り多くストックしておくのが大事です。

澤のスライドを見たことがある方にはおなじみのことなのですが、写真や図が多くて文字が少ないのが特徴です。これには理由があって、「時間調整の自由度を高めるため」なのです。

文字がびっしりだと、どうしても説明的なプレゼンになってしまいがちです。なので、イメージを想起させるスライドを用意して、言葉の長さは柔軟に調整するようにしています。

さらに難易度が上がるのが、対談形式のセッション。相手がとても親しい人ならまだしも、ビジネスイベントだと直接顔を合わせての事前打ち合わせが一度できればラッキーです。

その状況で、相手の話すペースやセッションの核となるような言葉を引き出しながら、かつ時間をコントロールするのは、なかなかやりがいのある仕事です(^^)。

数年前に私が登壇したイベントで、90分のセッションの途中でゲストを呼んで対談をしました。当初の予定では、最初30分を私一人、途中で20分ゲストと対談、残り40分はまた一人でプレゼンという組み立てを想定していました。

最初の30分は予定通り。その後ゲストを呼びいれて対談を始めたのですが、この話が大変に面白い。これはもっとゲストから話を引き出した方がいいぞ…と判断して、想定の倍の40分をゲストとの対談に使い、40分で話す想定のプレゼンを20分に圧縮しました。

決して早口になりすぎることもなく、そして言いたいことを削るでもなく、「話し方」と「言葉の選び方」を変えて、全体の90分という枠はきっちりと守ってプレゼンを終了しました。満足度がとても高かったことは言うまでもなく、その時に録画された対談のビデオは、ほかの会場でも紹介できるレベルの出来栄えとなりました。

この時も、事前ミーティングは一度しか行われておらず、その打ち合わせの場が初対面の相手でした。ただ、しっかりとプレゼンの「ビジョン」と「核」が対談相手の方と共有できていたこと、そしてその方のプレゼン能力の高さが、セッションの質を上げながら時間内に収まるという状況を生み出してくれました。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

澤のプレゼン成功体験2:質問を受けまくる

皆さんは、海外で何かしらのセッションに参加されたことはあるでしょうか?

私は、Microsoftという外資系の企業にいるため、年に数回は海外でセッションに参加することがあります。聴く側の一人として参加することもあれば、プレゼンテーションをする側の場合もあります。

日本国内でも、お客様が全員外国からの方で、英語でプレゼンテーションをする機会しばしばもあります。日本と海外のオーディエンスの違いを一つ挙げるならば、「積極的に質問するかどうか」に尽きると思います。

海外で実施されるセッションは、必ずと言っていいほど質問が飛び交います。プレゼンテーションをしている最中であっても、お構いましに挙手をして質問を投げかける参加者が少なからず存在します。

プレゼンターも慣れたもので、答える余裕があれば答えますし、「それは後で答えるね」とあっさり受け流す場合もあります。

セッション会場で聴衆に与えられた能動的な行動の権利が「質問すること」であると考えれば、日本人以外の方々にとってはその権利を行使しているだけにすぎません。そしてセッションをより魅力的にするためにも、聴衆からの質問は、プレゼンをする側にとっても大変重要な要素でもあります。

さて、日本でプレゼンテーションをする場合はどうでしょう。

プレゼンテーションの最中に手が上がって質問を受けた経験は、私の場合とても少ないです。数百人~数千人規模の大きな会場では、記憶になし。数人~数十人の比較的小規模なセッションであっても、質問が出るのはそれほど多くありません。

※私は、このことについてかなり懸念を持っていて、「日本が真のグローバル社会を目指すなら、とにかく質問力を磨くべし」が持論になっています。このことについては、また別途この連載でも扱いたいと思ってます。

とはいえ、聴衆からの質問は、プレゼンテーションのクオリティを向上させる上でも、非常に大事な要素です。

また、次回以降の自分のプレゼンテーションに活かせるヒントもたっぷり含まれています。ぜひ質問をしてほしいところですが…それにはどうすればよいのでしょうか?

澤がプレゼンテーションをしている時に心がけているのは、「相手が何人であろうと『会話している』雰囲気を作ること」です。

プレゼンテーションの会場で質問するのはなかなか勇気がいりますが、質問をすれば「自分のためだけにカスタマイズされたプレゼン」を得ることができるので、とても有用です。

その機会をぜひ得てもらうためにも、「何を話してもらってもいいんですよ!」という雰囲気を全身から放出しながらプレゼンテーションを進めます。

会場にいる一人ひとりの方が「澤との会話を楽しむために来ている」と思ってくれるように、できる限りおしゃべりしているようにプレゼンテーションします。

そして、すっと質問を募るのです。訊き方にもコツがあります。単に「質問はありますか?」だけだと、まだ答える側に負担が大きいと思いましょう。もっと答えやすい質問の投げ方をすることで、聴衆が口を開きやすくしてあげることが大事です。

  • 「ここだけはもっと詳しく知りたい!というポイントはありませんか?」
  • 「いやいや、そこは違うよ!という点は何かありましたでしょうか?」
  • 「『実はこの言葉の意味が分からない…』なんてことがありましたらご指摘ください」
  • 「xxさん、私の説明で不明な部分はありましたか?」
  • 「質問ではなくても、感想やご意見、あるいはご自身の体験と照らし合わせてのエピソードなども大歓迎です!」

こんな感じで、聴衆からの質問を受け付けるのです。そして、この質疑応答が盛り上がると、自分も聴衆も非常にいい経験として記憶に残ります。

一人の方が質問した後で「私もその点についてお訊きしたいのですが…」なんて質問が続いていくと、本当にうれしい気分になります。

なにしろ、自分がプレゼンテーションしてくれた内容に興味を示してくれて、かつ今後のプレゼンテーションに活かせるヒントまでもらえているわけですから。

ちなみに、いただいた質問にはしっかりと向き合って、自分の知識と経験を総動員してその場で「即席プレゼンテーション」でお答えします。単にだらだら話すのではなく、しっかりとメリハリをつけて、分かりやすい言葉を選んでお答えします。

これはテレビ番組の「笑点」でやってる「大喜利」みたいなもので、その場での反応速度が問われます。なので、少々難易度は高めではあるのですが、だからこそ質問をどんどん受けて経験値を高める必要があるのですね。

実は、プレゼンテーションが苦手という人の中には、「質問に答えるのが怖い」という理由を挙げる人が少なからずいらっしゃいます。このテーマは、別途深掘りして説明したいと思っています。

今回は、一つだけポイントをお知らせすると──

「質問には、すべて完璧に答える必要はない」

ということです。

あくまで会話の延長線上での質疑応答と考えて、「自分が答えられる部分を明確にする」と定義してください。そして、「答えられない部分」については、いくつかの答え方をストックしておいて、その言葉で切り抜けてください。

  • 「では、オフラインで別途お話しさせてください」
  • 「御社担当営業からご連絡差し上げるようにいたします」

こんな感じですね。

後編では、「スライドや表現をパクられる」「言語化されたフィードバックを得る」をテーマにお話ししていきたいと思います。

著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術
Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

PC_goodpoint_banner2

Pagetop