プレゼンの上達を阻む5つの勘違い【後編】──澤円のプレゼン塾・レビュー編

プレゼンテーションのスキルアップをしたいと思っている方たちは、それぞれの方法で練習を重ね、上達を目指していることと思います。それはそれで素晴らしいことなのですが、間違った方法で練習し続けても、上達するどころか逆に妨げになるリスクもあります。
今回は、上達を阻む「ありがちな」5つの勘違い【後編】をお届けします。

【勘違い-4】自分の欠点の修正に集中すれば上達する

前編に続き、プレゼンテーションの上達を阻む5つの勘違いについて解説していきます。

いろいろな方のプレゼンのお手伝いをさせていただいていると、「上達=欠点の克服」と思っている方が少なくないように感じます。

勘違い1」でも登場した「フィラー」を徹底的になくそうとしてみたり、立ち方や声の出し方、身振り手振りを直そうとしてみたり。

「欠点さえなくせば、もっともっとうまくなるに違いない!徹底的に欠点をつぶすぞ!」と息巻いて練習に励んでいる方は、ちょっと要注意かもしれません。その熱意が返ってご自身の上達の妨げになるリスクになりえるのです。

「え?だってビデオを見て修正しなさいって自分で言ったじゃないか!矛盾してないか?」と怒るのはまだ早いです。あくまで「過ぎたるは及ばざるごとし」という話をしたいのです。

欠点を直すと、上達した実感を得られやすい面もあるので、プレゼン上級者になる一つのアプローチなのは間違いではないのですが、あまりに欠点の修正に気を取られすぎると、プレゼンの練習中や本番でその欠点が顔を出した瞬間に「またやっちゃった…」と動揺する原因になる場合があります

というのも、欠点克服のアプローチで練習しまくっている人は、自分の欠点に対して神経質になりすぎていて、過剰に反応してしまうことがあるのです。

また、練習で欠点を直すことに集中しすぎて、元々あった「長所」を伸ばす機会が失われるのも勿体無い話です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【対策その4】最初から「完璧」は目指さず、「少しずつ成功率を上げる」

では、欠点の克服はどう考えればいいのでしょうか?

澤は「加点方式」をお勧めします。まず大事なのは、自分の欠点をしっかり理解しておくことなのは間違いありません。その上で、最初から「完璧」は目指さずに、「少しずつ成功率を上げる」くらいにしておけばいいのです。

まずコンテンツをしっかりと作成&理解してあるのは前提として、練習の中で「前よりは上手くできた」というポイントを見つけて自分を褒めてあげましょう。「あそこがまたダメだった」と落ち込むより、「前よりちょっと良くなった」と前向きな気分になった方が、精神衛生上いいことは言うまでもないですよね。

欠点の修正に気が向きすぎる人は、プレゼンに対してかなり強い苦手意識を持っていたり、経験が浅くて成功体験が少なかったりする場合が多いように感じます。

なので、まずは「成功を認識すること」を練習する方が、結果的に上達スピードを速めてくれると思います。

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【勘違い-5】なるべく多くの人からフィードバックをもらえば上達する

数多くの人からフィードバックをもらい、それを反映していけば万人に受け入れられるプレゼンができるのではないか」とお思いの方もおられると思います。

そのような側面があるのも間違いありませんが、今回のこの記事を読んでいる方は、どこかプレゼンに不安を持っている方が多いと仮定して、あえてこれも「勘違い」の一つとして挙げさせてもらいました。

多くの人にフィードバックをもらうのはとても大事なことではあるのですが、上達に悩んでいる時期や、まだプレゼンデビューをして間もない人は、あまりに多すぎるフィードバックは混乱を招くだけの「毒」になってしまうリスクがあります。

フィードバックを与える側が全員メンタリングの得意なプロならいいのですが、一般的なオーディエンスが暮れるフィードバックの多くは、「印象」や「感想」と呼ばれる類のものになりがちです。

もちろんそれはそれで大変貴重なフィードバックなのですが、個人差の大きい「印象」「感想」を自分の上達につなげる情報として咀嚼するには、それなりの経験や知識が必要です。そうしないと、他人の反応に一喜一憂したり、自分のスタイルを確立できなくなったりします。

むやみやたらに人から意見を聞くことは、かえって自分を苦しめる原因を増やすだけになるかもしれません。

【対策その5】具体的なポイントに絞って訊く

ではどうすれば他者からのフィードバックをうまく活用できるのか。これは相手がどんな人かによって変わってきます。

もし相手が他者のプレゼンにアドバイスをする専門知識を持っている人なら、「どうでしたか?」とざっくり訊いても構いません。きちんと会話をしながら正しくフィードバックをしてくれることでしょう。

相手がそうではない場合…例えば、職場の上司や先輩、会社や学校の同期、イベントの参加者などからフィードバックを受ける時は、「かなり具体的なポイントに絞って訊く」のが効果的でしょう。

「声は聞きやすかったですか?」「前回と比べて自信があるように見えましたか?」「視線が下がっていませんでしたか?」というような質問をすれば、相手はイエスかノーで答えられます。これを複数人に聞けば、自分のプレゼンの「傾向」を図ることができます。フィードバックがリサーチデータになるわけです。

「今日のプレゼンはどんな感じでしたか?」と質問してしまうと、「結構良かったよ」とか「私はあの話題は好きじゃない」とか、自分の上達に活かしにくい答えが返ってきがちです。フィードバックのプロではない相手にも気を使って、答えやすい質問を用意しておくのがコツです。

そして、耳が痛い答えが返ってきても、ポイントが絞られていれば、修正する方法は見つけやすいと思います。

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著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術
Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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