人に嫌われることが怖かった自分が、意志を貫けるようになったワケ|ライフネット生命保険 人事 岩田さん

「何かが足りない…。もっともっと頑張らないと」
「うまくいかないのは自分に欠点があるから?」
仕事をする上で、こうした息苦しさや辛さを感じたことは誰にでもあると思います。そんな時、どのように壁を乗り越えたらいいのでしょうか。この連載では「自分の弱みは、誰かの強み」をテーマに、自分らしく自然体で働く人の働き方ストーリーをリレー形式でお届けします。

今回は、株式会社クラウドワークス田中健士郎(→)さんからのご紹介で、ライフネット生命保険株式会社で働く岩田佑介さんにお話をうかがいました。

岩田 佑介(いわた ゆうすけ)さん

2010年に総合人材サービス会社に入社。シンクタンク部門にて、行政向けの企画営業に従事しながら、民間企業向けの人事コンサルタントを兼任。2016年よりライフネット生命保険株式会社に入社し、人事総務部長を務める。また複業として社会保険労務士事務所を開業し、バーチャル人事部サービス「reborn」の立ち上げにも参画。
ライフネット生命保険株式会社 
岩田社会保険労務士事務所 
バーチャル人事部サービス Reborn

違和感を覚えていた営業職で表彰され、深まる心の葛藤

―まずは岩田さんのキャリアを教えていただけますか?

2010年の4月に新卒で人材会社に就職しました。社内に新設されたシンクタンク部門に配属となり、主に中央省庁や自治体などの政策事業のコンペに参加し、案件を獲得するという企画営業を6年間やりました。私は学生のころから人事に近いことをやりたいと思っていたので「今の仕事は大きなやりがいはあるけれど、本当にやりたいこととは違うなぁ…」と思っていました。それでも、外部環境の追い風もあり、結果として売り上げがすごく上がっちゃって。年間40億円という売り上げを達成して、社内の表彰を受けたりしていました。

―結果を出しながらも、かなり早い段階からご自身の中で葛藤があったわけですね。

ええ。就活で最初から「人事がやりたいです」と言うのは難しく…。まず人材業界に入って人事に近いことを学ぼうと思ったんです。ところが実際の配属は行政団体向けの企画営業。営業でそれなりに成績を残せていたこともあって、最終的には、企画営業と同時に、希望していた民間企業向けの人事コンサルタントの仕事を兼務させてもらえるレアなポジションで仕事ができました。こんな自分のワガママを聞いてくれた前職の会社にも、応援してくれた当時の上司にも本当に感謝です。それだけに「営業」として絶対に数字を出さないといけない、というプレッシャーもありました。

―同じ会社で、営業をやりながら希望の職種も兼務できたのはすごいですね。どうやって実現したのですか?

大きなきっかけは、社内で人事コンサルタントの業務を行っていた「生涯の師匠」に出会ったことです。実はその方は隣の席に座っていたのですが。第一印象は正直、「あまりイケてないおじさん」でした(笑)。やっている仕事の中身に興味があって話をするようになると、その方の行動や仕事ぶり、会話、あり方すべてが自然体で余裕を感じさせる、まるで「仙人」のようなんです。「自分がやりたいことをやりたいようにやっている人がこんな近くにいた!」と感激しました。「カバン持ちからやらせてください」と“社内弟子入り”して、師匠の仕事を手伝いながら、いろいろなことを吸収しました。それを理解していただいた職場と生涯の師匠のおかげで、転職後も、今こうして人事の仕事ができていると思っています。

―営業で成績を残していると、他の職種へキャリアチェンジするのは思い切りが必要ですね。

「もしかしたら営業の方が自分に向いているのではないか」とずっと考えていました。尊敬できる上司や先輩に囲まれて、担当しているクライアントも素晴らしい方ばかりでした。でも、「結果も出ていて、人間関係にも恵まれた環境なのに、“企画営業”という仕事を全力で楽しめていない」そのことに気づいたとき、営業としてのキャリアの限界点を感じました。やっぱり自分は人事をやりたい、人事に100%集中したいと心が決まり、ライフネット生命に転職をし、現在人事を担当しています。

「弱い心」は一人では手放せない

―岩田さんご自身の「弱み」についてはどのように捉えていらっしゃいますか?

自分は他者と「争うこと、競争すること」が苦手です。前職時代が、今までで一番、自分の弱みを手放せていなかった時代でした。企画営業としても、コンペで「競合他社をどうやって蹴落とすか」という観点で、「ウチでできます、やれます」と言わないといけない。人事コンサルタントとしても、経験の浅いジュニアの段階からクライアントに対しては「何でも知っているプロ」だと虚勢を張らないといけない。やみくもなファイティングポーズで毎日戦っていました。
「わからない、できない」と言えない環境と本来の自分の性格とのギャップで、疲労感や徒労感、無力感がすごかったのです。

―そこで、自分の弱さを知った?

ええ。自分の心が疲弊してくると、競合他社だけではなく、まわりの人にも虚勢を張って、相手を批判するというような弱い所が出始めました。その弱さを自覚したとき、自分が求めていること、やりたいことは、争いや競争の世界ではなく、みんなを“協奏”させる人事の仕事だと痛感しました。弱みに直面して、本当にやりたいことを見つけられたことが、自分が弱みを手放した瞬間でした。
また最近では、複業仲間との出会いを通じて「わからないこと、できないことは正直に言ってもいい。わからないことは、お客さまも含めて、みんなで一緒に考えればいい」ということにも気づかされました。

ただ、今でも時折、何か辛いことがあったりすると、あのころの虚勢を張ったファイティングポーズが知らないうちに出てしまう。それでも前と違うのは、上司や同僚、複業の仲間たちが私を見ていてくれて、折々に「いまファイティングポーズが出ているよ」と、指摘や問いを投げてくれます。そこでまた手放す。心の弱みは自分ひとりでは手放せないと思います。私の周りには、対話ができる人、客観的にみてくれる人、自分の師匠となる人、パワフルなメンターが周囲にいて、このことは私の一番の強みかもしれません。

「あたたかさ」を大切にする

―上司や仲間との対話で印象的な言葉はありますか?

今の会社に入社してから、上司に「岩田さんは器用だけど、ウィル( Will=意思)が見えない」とフィードバックを受けました。それが今でも心に残っていて。人に嫌われたくない気持ちが強くて、またこれまでお客さまの言いなりでやってきた弊害もあったのだと思います。その上司の言葉で、自分が何をしたいのかを大切にしていないことに気づきました。

直近での自分のウィルから出てきた仕事としては、今年の4月から、新しい人事制度に「成長度評価」というのを導入しました。社員が1年間でどれだけ成長したか、その伸びを全体の評価で最も高いウエイトを占めるようにしました。評価することよりもその過程が大事で、上司が部下のウィルを聴くという、あたたかい対話の場が大前提で、その場が持たれなければ、そもそもこの評価制度自体が成り立たない仕組みにしました。「上司と部下とのあたたかい関係を組織の中にインストールしたい」という、自分の深いウィルから生まれたものです。歴代の上司から、自分がしてもらった「あたたかい対話」が、そのウィルの原体験になっていると思います。

前例の無いこうした人事制度に、社内や経営陣からはいろいろな意見がありました。
「どうなるのかは、やったことがないから分からない。でも組織に必要なコンセプトだと確信しているし、何よりも“やりたい”」とこの制度の実現に向けて想いを貫こうとしている自分がいる。「かつてはクライアントの言いなりだった自分が、この人事制度にはこんなにも情熱が注げるんだ」と、自分の新しい一面に新鮮な驚きがあり、自分自身の成長を実感した体験でした。

この人事制度のタイトルは「Challenge & Growth1.0」。この制度も私たちと同じ、生まれた時から完璧じゃない。もっと成長していく「のびしろ」がある。バージョンアップしていくんだ―という意味で、「1.0」を付けました。「これは無理」とか「使いづらい」っていうのも出てくることがあるかもしれません。そういう体験もみんなで共有しながら、アップデートして拡大していく可能性を秘めています。以前の自分なら、前例主義で面白みのない人事制度をつくっていたかも知れません。今では「わからないこと」を正直に言えるようになったので、こういう制度を作れたのだと思います。

―岩田さんの夢は「子どもたちがなりたい職業ランキングに『人事』をランクインさせること」だと聞きましたが、岩田さんにとって人事の魅力とは何でしょうか。

人事のミッションは、会社にカルチャーを作ることだと思っています。社員と一緒に会社の世界観を築いていく仕事。人事を通じて会社の中に、「あたたかい仕組み・メカニズム」や「あたたかいカルチャー」を作り上げ、その会社がみなもととなって、社会全体をあたたかくしていく。面白い仕事です。この魅力を伝えながら、いずれは「子どもたちがなりたい職業ランキング」に「人事」をランクインさせることが夢のひとつです。

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インタビュー・文:野原 晄 撮影:平山 諭

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