「下町ロケット」佃製作所が新たなピンチに!──竹内涼真演じる現場社員は、どう動けばいい?

10月から始まったドラマ『下町ロケット』新シリーズ。2015年放映の第1弾に続き、佃製作所が次々とピンチに見舞われます。大きな取引先からメイン事業の打ち切りを匂わされたり、突然業態変更をすることになったり──ドラマでは佃社長(阿部寛)が奔走しますが、もし自分が竹内涼真演じる、佃製作所で働く社員だったらどう動くべきでしょうか。

ドラマのストーリーを題材に、大手広告代理店・博報堂時代に世界的な広告祭で数々の賞を受賞し、現在は様々な事業や、話題のキャンペーンを成功に導いているThe Breakthrough Company GO 代表取締役 三浦崇宏さんに、もし自分が現場の一社員としてドラマのような状況に遭遇したらどうしたらいいか伺いました。

The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/Creative Director 三浦 崇宏さん

博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。日本PR大賞、グッドデザイン賞、カンヌライオンズの各賞などを受賞。NTTdocomoやLINEの新規事業などをプロデュース。またペイミーやスマートドライブといったスタートアップのサポートも実施。現在は集英社の漫画『キングダム』の「今、一番話題のビジネス書」と銘打ったPRも話題に。Twitter:@TAKAHIRO3IURA

【1】会社の主要取引先がなくなる! その時の処世術とは

佃製作所のメイン取引先の一つである帝国重工が、ロケット事業から撤退するという噂が社員の間で広まります。動揺し、佃社長(阿部寛)のもとに群がる社員たち。メインの取引先と取引が打ち切られることがわかった時、現場の社員はどう動くべきでしょうか?

現場の社員こそ会社の財務状況を知っておこう!

【ビジネス現場ではこう動く】会社の財務状況を把握!そして技術力を磨こう!

そもそも会社に食べさせてもらおう、社長になんとかしてもらおうというメンタリティがダメですね。会社員なら誰しも、勤めている会社のメイン取引先がなくなるなんていう事態はありえること。「次にどうしたらいいかわからない」という状態にならないようにしておくことが大切です。

そのために重要なのは、会社の財務状況を知っておくということです。みんなが騒いでいても、帝国重工以外の取引先があるから安心だ、あるいは帝国重工の中でもロケット以外の部門と取り引きできるということがわかっていれば、慌てることはありません。

スタートアップや中小企業に勤めている人は、月一ペースで会社の財務状況を把握しておいた方がいいでしょう。そもそもメインの取引先が1社ダメになったくらいで危うくなるなら、それはすでに経営がうまくありません。会社の経営を支える柱は、最低3社は必要なんです。1社なくなるかもしれないだけでこれほど慌てるなら、経営がうまい社長ではありません。他社への転職を検討してもよいでしょう。

そもそも、技術力さえ高ければどこへでも転職できます。現場の人間は、いつ何があっても動じないよう技術力を磨いておくべきです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【2】やりたくない部署に配属された。その時、どうする?

本当はロケットエンジン用バルブの開発をしたかった立花(竹内涼真)。しかし、トラクター用のバルブを作ることになり、不満が募ります。希望とは違う仕事にアサインされた時、どうすればいい?

キャリアと業界を「引き」でとらえ、仕事に没頭しよう

【ビジネス現場ではこう動く】やりたくない仕事こそ、一心不乱にやる!

ここは大きく二つ「引き」でとらえるポイントがあります。一つは、自分のキャリアを「引き」でとらえること。もう一つは、業界構造を「引き」でとらえること。

まず、キャリアについてですが、反抗する前に、今の仕事が自分の人生においてどういう役割を持つのか考えること。やりたいこととは違っていても、最終的に自分のキャリアにつながると考えてみましょう。今すぐロケットのバルブを作るより、目の前にある任された仕事で成長してから挑んだほうが、もっと良いポジションでロケットのバルブを作ることができるはず。転職の力学とは、そういうものです。今の会社でスキルを積んで、次の会社でステップアップできるのです。

もう一つ、業界構造を引きでとらえたほうがいいということ。昔、アメリカのジョンソン大統領がNASAを視察した時、一生懸命床を掃除している清掃員にこう聞きました。「君は、何をしているんだい?」すると彼はこう答えたそうです。「人類を月に送るお手伝いをしています」と。

自分の仕事を、「ロケットを作っている日本で最高の会社を支える仕事だ」と再定義して、やりがいを見つければよいのです。社会と自分の関係の中に、仕事はある。自分の仕事が社会の中でどのような役割を持っているかがわかれば、くだらない仕事など何一つありません。それを、手元のバルブと自分しか見ていなければ、大事なことを見失ってしまいます。

実は僕にも同じような経験があります。新卒で広告会社に入社した時、本当はクリエイティブの部署に行きたかったのに、配属されたのはマーケティングという論理性が必要な、当時のぼくは向いてないと思っていた部署でした。

今はクリエイターとして仕事をしていますが、マーケティングがわかるということが大きな強みになりました。一見突飛な発想も、どんな意味があるのかロジカルに説明できる、社会に何が求められているかをベースにしたアイデアを出すことができる。無駄な経験なんてないと、声を大にして言いたいのです。

置かれた場所で、貪欲に素直であることが成長への一番の近道。目の前の仕事を全力でやることが、結果、次のキャリアにつながるのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【3】仕事をしないリーダーのもとに配属されたら?

農業用トラクターのトランスミッション用バルブをつくるプロジェクトに配属された立花(竹内涼真)。リーダーの軽部(徳重聡)は、「野暮ったい設計だ」というばかりで具体的な指示をしてくれません。しかも、定時になるとさっさと帰ってしまいます。不満が募り、とうとう軽部とつかみ合いの喧嘩になってしまう立花。上司が仕事をしてくれない、こんな時、どうしたらいい?

上のやることには必ず理由がある!性善説で受け入れよう

【ビジネス現場ではこう動く】先入観を捨てて、いったんリーダーを信じぬこう!

竹内涼真くん演じる立花は、怒りの沸点が低いですね。これは仕事人として損するタイプ。しかも、矛盾している。上司に対して怒っているのに、答えを教えてもらおうと思っている。上司に反発するなら自力で解決すべきだし、教えてほしいならもっと素直になるべきです。

ここで大事なことは、いったんリーダーを信じ抜くということ。上長というのは、何かしら理由があるからリーダーになっています。技術力があるから、上に取り入るのがうまいから、コネがあるからなど理由はさまざま。現場の人間にとっては一見、理不尽だったり理解しがたいことでも、その人が偉くなっているのは必ず理由があるのです。

組織で生きていくなら、いったん素直になって、上の人間を完全に信じぬくというプロセスを経たほうが成長は早くなる。組織における「貪欲さ」とは、上にたてつくことや、出世しようと野望を抱くことではありません。「素直さ」です。とにかくいろんな人のいいところを見つけること。いちど悪い先入観を持ってしまうと、その人のすべてが悪く見えてしまう。それでは成長できません。

「野暮ったい設計だ」と言われたのなら、「自分の設計は野暮ったいんだ」と丸ごと受け入れたほうがいい。するとこの状況も、技術力を向上させる絶好のチャンスに変わります。それで何カ月かやってみて、この人は信じるに値しないと思ったのなら、その時上にもの申せばいい。最初から「なんだ、この人」と、思っていると自分の成長を阻害します。結局、受け取り方次第なんです。

とはいえ、それで何ヶ月かやってみてもこの人は信じるに値しないと感じるほど仕事をしなかったり、そのチームで成果が出ないなら、その時こそチャンスです。自分が主体的に動いて、下克上してしまえばいいのだから。

【4】社長が突然「今までの事業を捨てる」と言い出した!気まぐれ社長との付き合い方

取引先へのプレゼンの途中で突然、佃社長(阿部寛)が「将来、うちはトランスミッションの会社になろうと思っています」と業態変更を宣言。そんな話聞いていない……。こんな時、現場の社員はどうやって、この会社の将来性を判断したらいい?

誰よりも会社のことを考えているのは社長です

【ビジネス現場ではこう動く】社長が言うことなんて気にしない!明日には言うことは変わっている

これはとてもシンプル。「社長の言うことなんて、いちいち気にするな!」ということです。社長なんて、営業先で誰かに影響されたり、その場の思いつきでいろいろ言うもの。大丈夫、明日の朝にはまたきっと変わっていますから(笑)。

……とここまでは、ビジネス書でもよく書かれていることです。では、なぜ社長は誰よりも早く意見が変わってしまうのでしょう。

それは、現場の人間と比べて進化や変化のスピードが圧倒的に早いからです。社長は、現場の人間にはとうてい想像もつかない人生を送っています。毎日、他社の経営者や業界の重鎮に会ったり、時には著名人や政治家に対してネゴシエーションすることも。日々、さまざまな経験を積んできた方たちと積極的に会って、「意見の交換」ならぬ「経験の交換」をしているわけです。

佃社長だって、前の日に「君のところも、これからはトランスミッションだよ」と誰かに発破をかけられたのかもしれないし、経済系メディアを読んで「もっと変化しなきゃ!」と思い立っただけかもしれない。そういう社長の言葉を真に受けて、現場が右往左往してはダメ。

大丈夫、社長という人種は、あなたが思っているよりもずっと、会社のことを本気で考えています。安心してかまいません。

<番組情報>

日曜劇場『下町ロケット』(TBS、日曜21:00~)

原作・池井戸潤×主演・阿部寛のタッグで送る小説『下町ロケット』シリーズのドラマ化第二弾。今回は7月20日に発売されたばかりの小説3作目『下町ロケット ゴースト』(小学館刊)を主な原作とし、佃製作所に降りかかるさまざまな困難を描く。主力商品となっているロケットエンジン用バルブシステムの納入先である帝国重工が業績悪化し、農業用トラクターに使われるトランスミッションの開発に乗り出すことに。しかしそこにも数々の障壁が待ち受けていた。出演は、阿部寛、土屋太鳳、竹内涼真、イモトアヤコ、安田顕、立川談春他。

WRITING:石川香苗子
新卒で大手人材系会社に契約社員として入社し、2年目に四半期全社MVP賞、年間の全社準MVP賞を受賞。3年目はチーフとしてチームを率いる。フリーライターとして独立後は、マーケティング、IT、キャリアなどのジャンルで執筆を続ける。IT系スタートアップ数社のコンテンツプランニングや、企業経営・ブランディングに関するブックライティングも手がける。学生時代からシナリオ集を読みふけり、テレビドラマで卒論を書いた筋金入りのドラマ好き。
PC_goodpoint_banner2

Pagetop