生産性がグングン上がる!「ポモドーロ・テクニック」って知ってる?

同じように仕事をしているつもりでも、サクサク進められるときと、時間ばかりがかかって前に進まないときがあります。自分の集中力の欠如にがっかりしたり、人と比べて残念な気持ちになったりすることもあるかもしれません。
そんな人におすすめしたいのが、「ポモドーロ・テクニック」。どんな方法なのか、その効果と実践するときのポイントや注意点を、気候学の研究者にしてライフハックブロガーでもある堀正岳さんに聞きました。

トマト型ポモドーロタイマー
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集中力と生産性が上がる「ポモドーロ・テクニック」とは

ポモドーロ・テクニックとは、集中する時間と休憩時間を繰り返すことで、仕事のペースを生み出す時間管理術の一つです。
起業家で作家のフランチェスコ・シリロ氏が提唱したタイマーを活用した時間管理手法で、「ポモドーロ」はイタリア語で「トマト」の意味。シリロ氏がトマト型のキッチンタイマーを愛用していたことから、この名前がつきました。

手順は以下の通り。

  1. タイマーを25分に設定して作業を開始する
  2. タイマーが鳴ったら、3~5分の休憩をとる
  3. 4~5回に1回は、15~30分の長めの休憩をとる

というもの。
例えば、「企画を作らないといけない」といった曖昧なタスクを念頭に置きながら、ルーティンの仕事もしていると、気にかかってどちらの仕事も進まない→進まないことで精神的に追い詰められる→ストレスが高い状態になることでさらに効率が下がるという負のスパイラルに陥りがちです。

これに対してポモドーロ・テクニックは、細かく仕事を定義して、「今から25分間はこれをやればいい」と時間を区切ってタスクを絞ることで、集中できる→余計な気がかりが消えてストレスが下がる→心の負荷が少ない分、生産性が上がるというプラスのスパイラルを生み出します。無理をせずに長い時間集中できる仕事のリズムをつくり、時間と能力のバランスを高めるテクニックであり、シンプルだからこそ実践しやすく効果につながりやすい手法なのです。

では、実際の手順に沿って、具体的なポイントを紹介しましょう。

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ポモドーロ・テクニックを実践してみよう

用意するものはタイマーとToDoリスト。便利なアプリを利用する方法も

必要なものは、ToDoリストを書き出す用紙(ノートでもカードでも可)とタイマー。集中と休憩の区切りを物理的に知らせてくれるのがタイマーです。キッチンタイマーでも、スマートホンのアラーム機能でも構いません。視覚的に残り時間を把握しやすいため、人気があるのがTime Timer社のタイマー。中央のノブを回して時間をセットし、赤い部分が消えたらタイムアップ。アラーム音で知らせてくれます。

ポモドーロ・テクニックに対応したアプリも便利です。「Focus To-Do」はタスクの書き出し、時間の設定、タイマー機能が1つになったアプリ。ベースとなるポモドーロ時間(25分)も自由に設定できるようになっています。

やるべき仕事をToDoリストにして書き出す

ToDoリストにタスクを書き出すだけでも、生産性をあげることができます。改めて書き出すことで、自分の中で言語化できている仕事と、できていない仕事を選り分けることができます。漠然としていたタスクを客観視でき、もやもやしていた頭の中が整理でき、仕事がしやすくなるのです。

ToDoリストの書き方にはコツがあります。動詞まで入れて書くことです。「~を~する」という形式を心掛けましょう。例えば「企画書」と書くだけでなく、企画書の「現状分析の資料を集める」「データをグラフにする」「手順をフローチャートにする」など、できるだけ具体的に個別のアクションに落とし込むことで、やらなければいけないことが整理でき、作業時間も見積もりやすく、時間配分もしやすくなります。

想定時間を割り振ってプランを立てる

できたToDoリストに対して、どのくらいの時間を充てるか書き出しましょう。ポモドーロ・テクニックでは<集中時間25分+休憩時間5分>を1つの単位として考え、1時間かかりそうなものなら、「2ポモドーロ」、1時間半かかりそうなタスクなら「3ポモドーロ」を充てます。

ただし、時間の単位は仕事に合わせてアレンジして構いません。25分という時間に魔法の効果があるわけではなく、時間を区切ってペースを生み出すことに意味があるのです。

例えばプログラミングなどでは小さなタスクを繰り返すことが多いため、10分の作業と2分の休憩を1時間に5回実行する「ダッシュ法」という方法を使う人もいますし、商談などが多ければ50分の作業と10分の休憩にするなど、業務内容と自分のペースに合わせましょう。

重要なことは、短い休憩のほかに、2~3時間に1度は長い休憩をとること。短い休憩では、遠くを見て目を休ませたり、緊張状態の脳をリラックスさせたりして次の集中に向けて準備するのに対し、長い休憩は散歩をするなど、作業の疲れを取り除きリフレッシュするために使います。

自分の仕事のペースを作るために、集中と休憩をしっかり分ける、いわば脳の緊張と弛緩のバランスをとることが、ポモドーロ・テクニックの肝要な部分なのです。

1日が終了したら、記録をつける

ToDoリストを作り時間配分をして、ポモドーロ・テクニックをスタートさせても、計画通りには終わらないこともあるでしょう。機械的な作業をしているわけでない限り、見積もった時間通りに仕事が進まないことはあって当然です。

ただし、見積もりとの差を減らしていくことはできます。そのために有効なのが、実際にどのくらい時間がかかったか、おおよその数字を記録しておくことです。例えば企画書を作るときに、「現状分析の資料を集める」ために1時間、「データをグラフにする」ために30分など、かかった時間がわかっていれば、次回同じように企画書を作るときに時間の見積もりがしやすく、より実現可能なポモドーロにすることができます。

またその都度、タスクにかかった時間のログを取っておくことで自分に合う仕事のタイムスケジュールも組みやすくなります。
例えば、午後よりも朝イチで取り掛かったほうがサクサク進んだ仕事なら、次回は午前中に組み込み、昼食後のちょっと眠くなりがちな時間帯には、考えなくても機械的に進められる仕事を充てるといった工夫がしやすくなるのです。

1週間で振り返り、タスクを整理する

1週間の終わりに記録を振り返り、翌週のToDoリストに活かします。
週間レビューをするときは、見積もり時間と実際にかかった時間との差、タスクの区切り方やどんな順番が作業しやすかったのかなどを振り返るほか、手を付けないままになっているタスクは何かをチェックすることも大切です。

「いつかやろう」と思いながら、結局やらないまま残っているタスクや、意味がなくなっているのに引きずっているタスクは思い切って切り捨て、必要を感じたときに改めてリストに入れましょう。

パソコンとノートとペン
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ポモドーロ・テクニック実践時の注意点と対処法のヒント

電話・上司・メールによる割り込みへの対処法

集中して作業をしているときでも電話はかかってきてしまうもの。
携帯電話なら集中時間中はマナーモードにして出ず、仕事の区切りがついてから、折り返すというのも一つの方法です。

電話に出ないわけにいかない業務や会社の固定電話の場合は、「集中時間中は、手元のメモに今やっていることを書いてから4コール目で出る」など、マイルールを作ることをおすすめします。ゲーム中にセーブをするのと同様に、今やっていることを書いてセーブしておくと、電話が終わったあと、作業の続きに復帰しやすくなります。同じように上司に呼ばれたときも、セーブ用のメモを1行書き留めておくといいでしょう。

せっかく集中して始めても、メールが気になると集中が途切れてしまいます。新着メールを受信した際に、音やポップアップで通知する機能はオフにして、メールボックスの確認は、1日何回、何時にするなど時間を決めておきましょう。

タイマーがプレッシャーになる人はプレイリストを利用

集中時間中のタイマーのカウントダウンが気になる人は、自分の好きな音楽プレイリストを利用する方法もあります。30分、あるいは60分などのプレイリストを定番にしておけば、この曲が流れてきたら約半分、この曲なら残り3分など、曲をもとにペースをつかむことができます。

休憩時間は次の集中のために確保する

ポモドーロを決めて作業に取り掛かっても時間通りに終わらない場合、時間を優先してタスクが途中でも休憩にするのか、タスクを優先して時間を延長するのかは、仕事の状況によります。しかし、「終わらない」から、あるいは「調子がいいから」と、延々と続けてしまうことは避けましょう。集中できる時間は限りがあります。無理をすれば、集中力が燃え尽き、後で大きなロスが発生しかねないからです。

終わらなければ次のポモドーロで完了タスクにすることを目指し、休憩時間は頭の中を開放することを優先。メールのチェックやSNSの閲覧、ネットサーフィンなどは避け、基本はパソコンを離れる時間に充てましょう。軽くストレッチをする、窓の外をぼーっと眺める、コーヒーを飲むなど、リラックスのために使いましょう。

長い休憩や遊びのスケジュールをあらかじめ入れておく

忙しいとわかっているのに動画を見てしまったり、ネットショッピングで洋服を探してしまったりという経験はありませんか?
これはRevenge Procrastinationとも言われるもので、日本語に訳すと「復讐的先送り現象」。「どうせ、夜中までやらないと終わらないのだから、今ここでちょっとスマホのゲームをしたっていいよね」など、忙しくて辛いからこそ、現状から逃避して、意趣返しのようにぐずぐずしたり、先送りしてしまったりするのです。

そうならないためにも、余暇の時間をあらかじめ自分に対して予約しましょう。仕事のスケジュールと同じように遊びのスケジュールを決めてあげることが、全体のバランスのためには大切です。1日の間でも4~5ポモドーロ実行したら15分の昼寝をする、30分散歩に出かけるなど、「時間が空いたら」ではなく、予約した空き時間を自分のために有効に使いましょう。

堀正岳さん堀 正岳さん

研究者・ブロガー。北極における気候変動を研究するかたわら、「人生を変える小さな習慣」をテーマとしたブログ、Lifehacking.jpを運営。知的生産、仕事術、ソーシャルメディアなどについて著書多数。理学博士。著書に『ライフハック大全―人生と仕事を変える小さな習慣250』『知的生活の設計―「10年後の自分」を支える83の戦略』『仕事と自分を変える「リスト」の魔法』(以上、KADOKAWA)など

取材・文:中城邦子 編集:鈴木恵美子
記事制作日:2016年10月26日 記事更新日:2023年1月31日
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