弁理士の仕事とは、産業における財産の権利を取得し、対応を行うことです。例えば企業で新しい技術を開発し製品化した場合に、この技術の権利を守るために弁理士が特許権の取得を行います。権利の取得を行わないでおくと、万が一同じ技術について他社が先に特許を取得してしまうと、この技術を使うことができなくなってしまいます。産業活動において、権利の取得は非常に重要な意味を持っているのです。
さて、弁理士の資格を持つには、国家資格を取得する必要があります。弁理士の資格取得には、学歴、年齢制限がなく誰でも受験できますが、難易度は高く司法試験や公認会計士試験などと並ぶレベルです。それだけに資格を取得すると、企業内では知財、特許部門、法務のスペシャリストとして活躍できるほか、独立開業も可能となります。では、弁理士の資格を持っている場合の年収はいくらくらいなのでしょうか。リクナビNEXTの会員登録者のデータから、弁理士資格を持っている人を調査しました。
弁理士資格を持つ人の平均年収は669.5万円
リクナビNEXTの2010年12月から2015年11月までの新規登録者のうち、弁理士資格を持つ人の平均年収は670万円。年代別に見てみると、20代:492万円、30代:596万円、40代:756万円、50代:925万円と、比較的年収が高い人が多いことが分かります。もう少し、詳しく年代別、および職種別に年収にどのような特徴があるのかを見てみましょう。
リクナビNEXTのデータから弁理士の資格を持っている人で、知財、特許部門、法務部門の職種で働いている人の率を調査しました。その結果、それらの部門で弁理士として働いている人の割合は69%でした。このデータから、弁理士の資格を持っている人はその多くが、これらの職種でスペシャリストとして活躍していることがわかります。しかし、残る31%は、弁理士という資格を持ちながら、直接、弁理士の資格が生かせる部門ではない職種、例えば研究職や営業職・一般事務職などの職種で働いています。そこで、この違いによって、年収に差が生じているのか、違いがあればどれくらい違うのかを比較してみることにします。
知財、特許部門、法務部門の職種で働いている人の平均年収は、692万円でした。それ以外の職種で働いている人の年収は620万円でした。その差は、約11%。リクナビNEXTデータだけで弁理士資格による年収の違いを見る限り、弁理士の資格を最大限生かせる知財、特許部門、法務のスペシャリストとして働ける職種に就くと年収が約1割程度上がるようです。
会社の知財、特許など法務のスペシャリストのため、30代から高年収の人が多い
次に、弁理士の資格を持っている人が知財、特許部門、法務部門の職種で働いている場合と、それ以外の職種で働いている場合とで、年代別で年収がどのように変わるのかを調べてみました。その結果、知財、特許部門、法務部門の職種で働いている人の年収は、20代で483万円。30代で611万円。40代で783万円。50代で993万円でした。一方、知財、特許部門、法務部門以外の職種で働いている人の年収は、20代で504万円。30代で563万円。40代で686万円。50代で812万円。
知財、特許部門、法務の職種で働いている人の年収は、それ以外の職種で働いている人の年収を30代から上回り、その差が年代を追うごとに拡大していくことが分かります。30代でその差は約10%。40代で14%。50代では22%まで拡大します。知財、特許、法務の職種でスペシャリストとして活躍することで、年収は30代以降から年代を追うごとに大きく増加していくことが分かりました。
なお、弁理士資格を持っている人が働いている業種のトップは、メーカー系(電気・電子・機械系)で全体の30%。以下、専門コンサル系が17%、メーカー系(素材・医薬品他)が15%と続きます。この3つの業種で約6割を占めることが分かりました。
弁理士資格を生かすと高年収に加えて正規社員での雇用比率が高い
弁理士資格を持っている人は年収が高い傾向があり、そして知財、特許部門、法務の職種に就くことで、さらに高い年収が期待できることが分かりました。また、弁理士資格を持っている方の正規社員の比率は94%と、全体と比較しても非常に高いことがあげられます。リクナビNEXTの2015年12月の新規登録者データを見ると、全体の正社員比率は78%と、弁理士資格を持っている人と比較すると、資格を持っている人の正社員率は高いことが明らかになりました。なお、弁理士資格を持つ正社員の平均年収は682万円ですが、非正規雇用の人の平均年収は486万円と大きな差がついています。弁理士資格があると、高い年収、正規社員として安定した雇用が期待できます。専門的な知識を有し、企業の競争力を高める源泉となる特許戦略を担う弁理士は、今後も安定したニーズがあるといえるでしょう。
画像:足成