コミュニケーション力を上げたいと思ったら、まずは自分と相手を知ることから。
前回の記事では、そのための便利な4タイプ診断法、「ソーシャルスタイル理論」をご紹介しました。
ソーシャルスタイル理論とは、外から見えるその人の態度を観察して、4つのタイプに分類したもの。自己主張の強弱と、感情表出の強弱の縦横2軸で分類します。感情というと「喜怒哀楽」と思いがちですが、「怒」の感情は、自己主張として考えた方がしっくり来ます。自分のタイプを知りたい方は、前回の記事にあるチェックシートでご確認くださいね。
それではここから、「各タイプ別対応法」を4回に分けてお伝えします。
第1回目は「ドライビングタイプ」。
リーダー的ポジションに多いこのタイプ、基本的対応とあなたのタイプ別注意点をしっかり理解して、対応力を上げて行きましょう。
ドライビングは社長タイプ。相手に判断をゆだねよう!
ドライビングタイプの見分け方
- 基本的に早口
- 断定的にしゃべる
- 自己主張をしっかりする
- 上から目線
- 威張る
- 「怖そう」と感じさせる
自分がしっかりコントロールしたいこのタイプ、他人に指図されることを、ことのほか嫌います。指図されたくありませんから、上昇志向が高く、指示する側に回りたいという意欲も高めです。色んな業界にお邪魔していて感じるのは、ある程度大きな企業の管理職、そしてオーナー系の経営者、開業医、コンサルタントや弁護士などの士業など、「人の上に立つ」ほとんどの方が、この傾向を持っているということです。
提案やアドバイス、様々な情報提供も、自分が上だと認めた相手からの言葉しか受け入れません。ドライビングタイプに一目置かれる存在を目指すのが正攻法ではありますが、上司や先輩、お客さまがこのタイプだったりする場合など、立場的に「無理だよ……」という方も多いかもしれません。が、そんな場合にこそ目指したいのは、「こいつ頑張ってるな」と思ってもらえる【かわいい後輩的存在】。
「よく勉強している」「成長意欲がある」「凹んでも再チャレンジする」など、自分を成長させようとする相手に見どころを感じます。
論理的思考を好む傾向も高いので、意見を求められた時には「~だと思います」という持論だけでなく、自分なりの「根拠」や「理論」を添えて伝えることが大切です。「なぜそう思うのか」と常に問われると予測して、しっかりデータや情報の準備をしておきましょう。
ドライビングタイプへの効果的な対応
- 「教えてほしい」という姿勢を見せる
- 情報をしっかり伝え、判断は委ねる
大切なのは、相手とのポジショニング。上下関係ハッキリさせたいタイプですから、ライバル心を煽るのは逆効果。表面的な主導権は相手に渡し、あくまで「自分が決めた」と思わせることが大切です。
ドライビングタイプへの声かけ例
「○○について教えていただけませんか?」
「○○さんのご意見をぜひお聞かせください」
特に効果抜群なのが、相手に質問したい時。相手の意図が見えない段階では、自分の意見を言いたがらないドライビング。「○○についてどう思います?」と聞くよりも、「○○についてどう思うか教えていただけませんか?」と聞く方が相手の言葉を引き出しやすくなります。
もしもドライビングタイプを褒めるなら……
×「すごいですね」「さすがです」
○「Aさんを見習って自分も○○しています」
「勉強させていただいています」
そもそも褒められ下手なドライビングタイプは、褒め言葉を嫌がります。
“○“のパターンでもあまり頻度高く使っていると、「コイツ下心があるんじゃないのか」と疑いがち。褒められなくても平気という方も多いので、相手に響いてないなぁと感じるならば、褒めること自体を一旦脇においておきましょう。
あなたのタイプ別ワンポイント
ドライビングへの一般的対応を心得たら、今度は自分のタイプに応じた注意点を押さえておきましょう。
ドライビングなあなたは……
ドライビング同士でまず始まるのは、相互の腹の探り合い。時間短縮を考えるなら、さっさと情報開示した方が話も早くスムーズです。競争心は程々に、あえて相手を立てて動かす「No2ポジション」もおススメです。
エクスプレッシブなあなたは……
お調子者と思われがちなエクスプレッシブ、注意すべきは無駄話。仲良くなる事は相手にとって必須条件ではありません。信頼してもらうポイントは、しゃべり過ぎない事と心得ましょう。
エミアブルなあなたは……
「どうしてあんなに怒るんだろう」と敬遠せず、相手の正義は何だろうと考えてみる事も大切です。よく気がつくエミアブルは、ドライビングの得難いサポーターになり得ます。ねぎらいの言葉は多く得られないと初めから理解してあげましょう。
アナリティカルなあなたは……
せっかちなドライビングにクドい話はNGです。話は最後まで聞いてもらえないと予測して、(1) 相手への依頼など必須伝達事項>(2) その理由(短く)>(3) 概要説明>(4) 詳細説明の順に進められるよう準備しておきましょう。
以上、ドライビングタイプへの対応法、いかがでしたか?次回は「エクスプレッシブタイプの処方箋」をお伝えします。どうぞ、お楽しみに!
著者:谷 益美さん
1974年香川県生まれ。株式会社ONDO代表取締役。専門はビジネスコーチング及びファシリテーション。企業、大学、官公庁などで年間約300本の対話を通じた実践的学びの場作りを行う。2015年&2019年、優れた講義を実施する教員に贈られる「早稲田大学Teaching Award」を受賞。雑誌やウェブサイトへの記事寄稿、取材依頼等多数。