「とりあえず言ってみる」ダメもと提案の3大メリット

「ダメで元々」の提案をしないといけないことがあります。

上司から「先方には、この額でお願いしてみろ」とか「締切りを3日、早められないか頼んでみて」などと指示され、「いやいや、そんなムチャな要求しちゃっていいんですか?」と申し訳ないような提案をダメもとでしなければならないシーンです。

社内で「この企画書は厳しいかな~、でもダメもとで出してみよう」ということもあるでしょう。

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ダメもとの提案で不思議な現象があります。

「ダメで元々だ」と断られることを予想していたはずなのに、実際に断られると傷ついている人が多いことです。

「やっぱりダメだったか・・・」と落ち込んでしまうのです。

そこ、落ち込むところじゃないでしょう。
予想が当たったのだから、「やっぱり」と、むしろ喜ぶべきところです。
一つ、選択肢が消えたことが確認できたのですから、前進してます。

それを忘れて、落ち込んでしまい、再び提案する気力を失ってしまうのは、もったいない!

ダメもと提案のメリット

ダメもと提案で気力を失わないためにも、そのメリットを押さえておきましょう。意外に役立つヤツなんですよ。

メリット1 通ればラッキー

ダメもと提案でも、たまに通ってしまうことがあります。
ラッキーです。
こっちが、申し訳なさを感じたり、色々と不安に思っていたのは何だったのだ、と拍子抜けしちゃいます。

相手のことなんて分からないので、とりあえず確認してみる、という気軽な交渉マインドを持つと良いんですよ。

私がそんなマインドになれたのは、子供の頃に見たアニメがきっかけでした。

最近の会議の内容は思い出せなくても、小さい頃に見たマンガやアニメのシーンをハッキリ覚えているという人は多いでしょう。

今回は、『タッチ』(あだち充)のキスシーンです。ワイド版2巻から紹介しましょう。

主人公の上杉達也がボクシング部の試合で負けて部屋で落ち込んでいるのを、ヒロインの浅倉南が慰めに来ます。彼女は、主人公の弟で、イケメン優等生の上杉和也とカップルだと周りから思われていたんですね。
そんな彼女に、上杉達也は、「こんなとき、やさしい女の子なら・・・だまってやさしくキスするんじゃないか」
と言うと、浅倉南がキスしてきたのです。

このシーンを見た小学生低学年だった私は、驚愕し、「マジか!?いやー、言ってみるもんだなぁ」とダメもと交渉マインドを学んだのでありました。

そう、相手の気持ち、状況なんて分からないものです。とりあえず提案してみると、通っちゃうラッキーがあるかもしれません。

ただ、気をつけないといけないのは、断られても落ち込まないこと。「ラッキー」に期待しすぎて、「ダメで元々」という最初のスタンスを忘れると、元も子もありません。

メリット2 断ったという負い目を与えられる。

心理学の世界では、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックと呼ばれるものがあります。ドアが開いたら、まず顔をいきなり突っ込めという喩えです。

最初に大きな頼み事を断られた相手に、小さな頼み事をすると受け入れてもらえやすいという話です。

一回断っているから、という負い目があり、断りにくくなるのですね。

こちらがダメもと提案から譲歩した場合、相手も負い目を感じて「譲歩しなければ」と考えてしまうのです。

また、ダメもと提案で数字を出す場合には、アンカリング効果も期待できます。最初に出した数字が、その後の基準になってしまうことがあります。
そのため、ダメもとでも自分たちに有利な数字を最初に出した方が、良い結果につながりやすいということです。

『プライスレス』(ウィリアム・パウンドストーン著/青土社)という書籍の中で紹介されている1996年のアメリカでの実験です。
大学生80名が陪審員を担当する模擬裁判の実験がされました。
避妊ピルによって被害を受けた女性が健康維持機構に損害賠償を求めたという設定です。
この設定で、はじめの要求額をいくらにするかによって、模擬陪審員が認める賠償額がどう変わるか実験されました。

結果は次のとおり。

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法外であっても、要求額が多い方が認定額も多くなっています

最初から目標額を伝えて交渉するよりも、ダメもとで極端な数字を出しておいた方が、目標額を達成しやすくなるのです。

メリット3 他の選択肢を探るチャンス

「ダメもと提案」→「断られた」

これで終わりではありません。

「断られた」ことをきっかけに、他の解決方法がないか、探るチャンスが生まれます。
断られた理由を聞いたり、その際の会話をきっかけに、相手が何を望んでいるのか、情報を引き出しましょう。

「ムチャな金額要求」→「断られた」→「期限のことを言ってたな」→「支払期限や支払方法で調整できるかも?」

「締切りを早めて欲しい」→「断られた」→「納品の仕方について何か言いたそうだった」→「納品方法を変えれば何とかなるかも?」

というように、「金額」や「締切り時期」というこちらの要求以外の軸で交渉が進むことは結構あるのです。

交渉が難航したときは軸を変えると良いのです。

ダメもとで出した企画書でも、その中の一行に着目され、そこから新しい企画が実現することだってあります。

このようにダメもと提案でも、他の選択肢を探るきっかけになります。そして、他の選択肢を探る作業を相手と進めると、いつの間にか共同作業をしているようになります。相手が「自分ごと」と感じてくれるようになれば、実現可能性は高まります。

上司に企画を出す際も、早い段階で相談したり、方向性をぶつけてみて意見をもらうと、通りやすくなります。共同企画っぽくなるからですね。

ダメもとでも、動いてこそ、相手とのやりとりが始まるのです。

注意点

ダメもと提案のメリットを紹介してきましたが、ダメもと提案で相手の気分を害してしまうこともあります。

「はあ!?何でそんな提案に応じないといけないんだ?」
とキレられることも。

そんなとき、落ち込んでいる場合ではないのは、既に述べたとおりです。
ただし、ここで「やっぱりダメでしたか・・・」なんて、ダメもと提案であったことは認めちゃいけませんよ。

正直者すぎます。

軽い提案をしたとなれば、相手が「軽く見られた」と怒るのも無理ないです。

「やっぱり」なんて発言は、「私もダメだと思ってたんですよ」「予想どおりでしたよ」と自分を守る言葉です。
そんな無意味な自己防衛はいりません。

相手に怒られてしまったら、チャンスだと思いましょう。
感情的な相手は、自分の欲求を表現してくることが多いので、それを探り、他の軸に切り替えられないか、情報を探るのです。

もちろん、怒られないで話を進められた方が良いです。
ダメもと提案で相手の気分を害しそうなときは、あらかじめ、こちらの状況では「誠意ある提案」なのだと説明しておくのも有効です。

「こちらも今回は予算がなく、この金額が精一杯なのですが」
「3日早く納品してもらえると、次の工程でクオリティを上げられるのです」

と、全体の状況を伝えることで、「軽く見られてる」との感情を和らげる効果が出てきます。

まとめ

最低限の注意をしつつ、とりあえず提案してみる。

P.S.

今回のダメもと提案についても、書籍『めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』で取り上げています。浅倉南並みの美女イラストが載っている同書をまだ手に入れていない方は、お一人5冊ほど&Kindle版もあわせて買ってみてはいかがでしょうか!

著者:石井琢磨

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『めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』著者。弁護士。幼少時から家族が次々と壺を買わされるという、ダマされ環境で育つ。偏差値35から中央大学法学部に合格。在学中に司法試験一発合格、消費者事件を中心に活動中。

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