新規サービス立ち上げに伴う自由と、大規模サービス開発における自由。全く違う「2つの自由」の経験から、「自由を創って、自由を使いこなす」ことを意識しているというリクルートコミュニケーションズの吉田啓二氏。リクルートコミュニケーションズへの入社の経緯から伺いました。
目次
モチベーションの源泉は、プロダクトを生み出したいという強い想い
これまで自分で起業した会社も含めて、4社の企業を経験してきました。
1社目はSIerで金融機関向けの業務システムの開発を行っていましたが、顧客要件の幅に限定されない、もっと自由な環境での開発にチャレンジしたいという想いが強くなり、プロダクトをつくるために起業をしました。
ちょうどベンチャーブームだったこともあり、立ち上げに対する支援を得ることができましたが、現実は、そう甘くありませんでした。一人でゼロから作り出していくことのむずかしさを痛感し、結局1年で廃業を決意。
ベンチャー企業への転職を経て、自分自身がより大きく成長できる環境にいかなければ、理想のプロダクトづくりは実現できないと考え、リクルートコミュニケーションズへ入社しました。
周りにはハイスキルなエンジニアが多く、リクルートグループ各社が展開しているあらゆるサービスに深く関わることによって、事業の立ち上げ~ビジネスとして成功させるノウハウも身につけられる。この環境で、再びプロダクトを生み出すためのチャレンジが始まりました。
株式会社リクルートコミュニケーションズ 吉田啓二氏
SIerで金融機関向けの業務システムの開発を行った後、起業。プロダクトづくりを目指すも方針転換し、ベンチャー企業へ転職。クラウドファンディングサービスの企画開発~リリースを担当。2014年にリクルートコミュニケーションズに入社。リクルートグループ各社のプロダクト開発にエンジニア担当として携わる(新規サービス立ち上げや、国内最大級の店舗予約サービスの改善業務など)。
新規事業の立ち上げと、大規模サービスの開発。全く違う「2つの自由」
これまで様々なプロジェクトに参加してきましたが、ここには大きく「2つの自由」があると感じています。
ひとつは、新規サービス立ち上げに伴う自由。昨年携わった新規サービスの立ち上げメンバーはわずか3名。しかも3か月間で企画~開発・リリースまで進めるプロジェクトでした。
限られた状況の中で自分のアイデアを練って、具現化していくやりがいを感じましたが、一方、もし期日までにリリースが出来なければ、それは立ち上げを担っている自分たちの責任。自由な環境においても、自律的にプロジェクトを推進していく必要があります。
いざスタートしてみると、とにかく人がいないので、エンジニアという枠を超えてタスクを積極的に拾っていかないと推進できない状況に。スモールスタートのサービス立ち上げにおいては、自分の役割や範囲を決めずにプロダクト成功のためにできることはなんでもする、という姿勢が大事だと実感しました。
もうひとつは、大規模サービス開発における自由。国内最大級の店舗予約サービスの開発では、機能改善のためのアイデア出しからその後の開発にも関わる自由がある反面、大規模プロジェクトゆえに、周りのメンバーを巻き込み、調整していく必要がありました。
部門や職種を超えた合意形成や、事前の情報共有(根回し)などは直接プロダクト改善には繋がりませんが、円滑にプロジェクトを進めていくための必須ノウハウだと考えています。
様々な立場になったつもりで考えて、全てのステークスホルダーにとって利益をもたらす施策を考え、実践していくことが重要です。
大規模プロジェクトで痛感した「自由を使いこなす」ことの難しさ
環境によっていろいろな自由がありますが、いずれの場合もそれをうまく「使いこなす」ことが重要だと思います。
私も、担当しているプロダクトの範囲を越えて意見を出し合えるという自由をうまく使いこなせなかったために、プロジェクトを停滞させてしまったケースがありました。
私は担当プロダクトの成長を加速させるためには、他のアプリとの連携強化が肝になると日頃から考えていました。
早速、アプリを担当しているチームとミーティングを実施しました。私は自身のプロダクトの成長を考え、アプリ担当者へ改善要望を伝えたのですが、アプリ担当者の反応は芳しくなく、それ以上、検討・議論が進まない状況になってしまいました。
その後、あらためて互いのプロダクトのミッションやゴールを確認するディスカッションを経て、双方にメリットがあると思われる提案をしたところ、連携を強化していく会話ができるようになりました。
これ以降、アイデアレベルでもいいので、思いついたことはすぐに周りに提案し、まずはフィードバックをもらう。さらにそのやり取りの中から両者の視点で物事を考え、落としどころを探っていき、スピード感を持ってプロダクト改善を進めるようにしています。
どんな環境でも活かせる「自由を創り、使いこなすスキル」
本当の自由というのは、与えられる環境だけを指すのではなく、その環境を最大限生かしてこそ、意味を成すものだと思います。
つまり「自由を使いこなす」力を身につけることが、目標を実現するための大きな原動力になるのです。
このスキルを身につけるためには、自分の範囲・役割を自分で制限しない事と、自分の思いを周囲にしっかりと伝え、スピーディーに推進していくことが重要です。
プロダクトを作れる環境でなくても、このアクションは可能だと考えています。
例えば受託開発などにおいても、自分が担当している一つの機能開発だけを見るのではなく、プロジェクト全体に目を向けたり、クライアントの先にいるエンドユーザーがどんな要望を持っているのかを考えたりすることで、自由の余地を発見する事ができると思っています。
「自由を創って、自由を使いこなす」これを常に意識しながら日々の業務に注力していくことによって、その先に必ず、世の中に役立つプロダクトを自らの手で生み出せるチャンスがあると信じています。
※本記事はエンジニアのためのTechLife Magazine「motech」(※2015年4月3日掲載)からの提供記事です