残業すれば仕事に一生懸命で、「会社に忠誠を尽くしている=信頼できる」という図式が成り立っていた時代は終わりを告げつつありますが、残念ながらその発想で育った人たちはそのまま慣性の法則で、その考えを捨てることは出来ないようです。
と、自分で書いていて耳が痛いのはなぜだろう…。
さて、外資系企業エグゼクティブの国際秘書として活躍してきた能町光香さんによる『なぜあの人は定時に帰っても信頼されるのか』(ポプラ新書)には、能町さんが秘書時代に獲得した能率をあげ、定時に帰っても信頼されるための仕事術が満載です。秘書という立場上、デキる上司の振る舞いについても示唆に富んでいます。今回は、同書からいくつか紹介しましょう。
最初の6ヵ月間を大切にして、徐々に信頼関係を作る
郷に入っては郷に従え…という言葉のとおり、新しい会社に入ったら、最初の6ヵ月間はその会社のスタイルに合わせてまずは仕事をしてみましょう。能町さんは、その期間は対面コミュニケーションを特に重視し、丁寧に信頼関係を作ることに尽力するそう。そして、6ヵ月を過ぎた辺りから、自分なりにカスタマイズを加え、自分の仕事のスタイルに近づけます。こうして不必要な摩擦を避け、自分らしく働くための土台を作ることで、周囲を気にせずに定時に帰ることが可能となります。
これは新しいチームや部署に異動した場合でも応用できそうですね。もちろん、既に長く在籍しているチームで行うなら、状況は把握しているわけですから、すぐにでもスタートできそう。信頼を得る、というのは何事にも勝る土台です。
自分のペースに相手を「巻き込む」
自分の力が最も発揮でき、かつ楽に働くためには、自分のスタイルに人を巻き込んでしまうのもまた有効です。たとえば、朝型の能町さんは、朝早く会社にいる、というスタイルを確立し、周囲を巻き込んだおかげで「早朝の駆け込み連絡基地」という社内の新たなニーズを満たしました。その分、「夜はいない人」という認識になり、当日に処理してほしい仕事は午前中に来るようになったそう。
自分にとって都合のいいやり方をただ追求するだけでなく、周りへの気配りも怠らない。結果的により信頼を得ることができ、一挙両得。何事もこの境地を目指したいものです。
このほかにも、
・当日の夜に残業するのではなく、翌日「朝」や「ランチタイム」に残業する
・完璧を目指して提出が遅れるより、一日早く80%のものを出して、依頼者の意図と合っているか確認する
…など、同書には「この手順を踏めば周りも納得する」と思える合理的で仕事が早く終わりそうな方法がたくさん。残業代ゼロ法案も気になる今日この頃。やってもやってもなぜか仕事が終わらない…という人は一緒に改善を目指しましょう。ファイト!(と夜中のオフィスでひとり、気合を入れてみる)。
文:明灯尋世
とある中小企業で日々、上下に挟まれて突破口を探すアラフォー女局長。知識は、行動に移してこそ身につく。組織の中でも自由であれ。家族は姑、夫、犬一匹。