あなたの会社に自慢できる社則やユニークな社則はありますか?それはあなたの会社が提供する商品やサービスに直結しているものですか?
創業76年、東京証券取引所一部上場のねじメーカーの日東精工は、最近『人生の「ねじ」を巻く77の教え』(ポプラ社)を出版しました。同書は、40年に渡り、社員研修や勉強会のために蓄積され、役職レベルに応じて作成された3冊の資料「リーダーハンドブック」「経営幹部のガイドライン」「ザ・プロフェッショナルへの道」をまとめたもの。
多くの企業で生産される乗物や機械の縁の下の力持ち である“ねじ”。会社で共有される顧客ニーズに則った製品づくりや、それを実現するための心構えとは?日東精工の企画室の荒賀誠さんにお話を伺いました。
顧客ニーズで作った「ゆるめられない」「薄い」など個性的なねじ
ねじといえばポコッとした丸い頭を思い浮かべる人が多いかと思いますが、より軽く、薄く、というニーズにあわせて、頭部がわずか0.2ミリという薄さの商品を開発しました。締めたときのでっぱりが少なく、デザイン的にもスマートなため、携帯電話、家電製品を中心に多く使われています。
また、「締めてゆるめる」のがねじの特性ですが、製品の分解を防止するために、「ゆるめることのできない」ねじも求められています。
3つの「あ」にこだわる
お客さまの要望にきちんと応えていくことが、私たちのつとめであり、同時にプライドでもあります。下記3つの「あ」の気構えで、私たちはねじをつくり続けています。
足…現場、お客様のもとへ何度も足を運び、何が求められているかを知る
汗…試行錯誤を繰り返し、納得のいくものをめざす
頭…スペシャリストの知恵を結集する
要望があってからそれに応えるのではなく、相手に求められる前に、事前に「かゆいところまで手が届く」のが本当のおもてなし。弊社のねじは、世の中の流れや時代のニーズをしっかりと捉えつつ、ほとんどがお客様の用途に応じてつくるものです。また、「できない」という言葉はタブーにしています。よそではできないと断られたものを開発したり、物理的に不可能と思われた受注生産を可能にしたりといったことを積み重ね、良きパートナーシップが築けているのだと思います。
シンプルだけど大事な「磨くと拭く」
ねじの基本構造はとてもシンプルで、だからこそ細部へ繰り返し繰り返しこだわることが重要です。また、それが相手の方への誠実さだと思っています。
できて終わり、できたからOKではなく、形、材質、性能など、工夫はどこまでも可能だと思って、ピカピカのねじづくりに日々取り組んでいます。
「会社の歯車」であることに誇りを
「組織人である自分を悲観して『どうせ組織の歯車のひとつに過ぎない』という言い方をする人がいます。しかしそれは、歯車の重要な役割を知らないから口にできることで、思い上がりというものです。たとえば時計の歯車は、ひとつ欠けても動かなくなってしまい、歯車なしでは時計は正常に動くことができないんです。
ねじも同様で、ひとつひとつのねじにきちんと意味や役割があります。ジェット機であれば300万本のねじが使われていて、その1本でも緩んだりはずれたりすれば、大きなトラブルとなりかねませんし、人の生死にもかかわってきます。
日頃、歯車やねじを意識されることはないかと思いますが、時にそんな言葉を思い出していただき、自分の仕事や使命に誇りをもっていただければと思います」
社則でありながら、日東精工のいい話を集約した価値あるテキストになっていると、社内外から多くの反響が届いているようです。あなたの会社にも何かしらのルールを記した資料があるはず。それを楽しい会社員人生の指針になる「ガイドブック」へとブラッシュアップして、自分や会社の「ねじ」を巻きなおしてみませんか?