アフリカ本格進出をもくろむ日本企業が急増中! 「最後の巨大市場」アフリカを切り拓く人材が今、求められている

アフリカ市場が今、脚光を浴びている。資源価格の高騰を背景に、2000年代以降高い経済成長が続いており、「最後の巨大市場」とも評されている。ここにきて、高い成長力に注目した日本企業がアフリカへの本格進出に動き出しており、それに伴い「アフリカ市場を開拓する」ビジネスパーソンの中途採用ニーズも高まっているという。どんな業界、企業がアフリカ進出を目指し、どんな人を採用しようとしているのだろうか?識者の分析とともに、アフリカでまさに今、働いている人の生声から探ってみたい。

【アフリカ市場の今】資源価格上昇とともにGDPも上昇し、成長の好循環期に。中間層の急増で個人消費が活況を呈し、あらゆる業種にビジネスチャンスあり

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株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 公共経営コンサルティング部
新興国・BoP市場コンサルティンググループ グループマネージャー 小池純司氏

■高い経済成長と日本政府によるODA拠出で、本格進出を狙う日本企業が急増

アフリカ市場は今、著しい経済成長を遂げています。「資源大陸」であるアフリカは、原油高により2000年代の経済成長は年平均5%という高水準の伸びを続けてきました。

2000年代は、資源高に伴いプラントなどインフラ産業が活況となりましたが、現在に至るまでにそのすそ野が広がり、さまざまな産業が発展。それに伴い雇用も拡大し、低所得層から脱した「中間層」が急増、個人消費も活況を呈しています。すなわち「資源高を起点とした経済成長の好循環」が生まれており、今後も高い経済成長が期待されます。

そんな高い成長力に注目した日本企業が、ここにきて続々とアフリカ進出を目指しています。転機になったのは、2013年6月。安倍首相が「アフリカへの民間投資拡大のため、今後5年間で1兆4,000億円の政府開発援助(ODA)を拠出する」との意向を表明したのを機に、日本企業の間でアフリカ市場への注目がにわかに高まりました。当社にも、さまざまな業界からアフリカ進出のコンサルテーション依頼が寄せられています。

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■電機、自動車などの製造業にチャンス。ローカライズが成功のポイント

現在も伸びており、今後も伸びが期待されているのは、製造業。中間層の急増を受け、家電や、自動車の普及が急速に進んでおり、「高価格でも品質やデザインがよく、ブランド力の高い製品・サービス」が人気を集めています。例えば、アフリカ市場でのソニーブランドの信用力は高く、南アフリカにおけるオーディオ機器マーケットではトップクラスのシェア。アフリカ人はとても耳が良く、特に重低音に敏感であるため、重低音を効かせた仕様にローカライズしたオーディオセットが飛ぶように売れています。また、携帯電話保有人口も増加中。現在、アフリカ人の2人に1人が携帯を保有していますが、2020年には1人1台の時代が来ると予想されています。それに付随して、携帯向けコンテンツなどの各種サービスや、eコマース普及による消費財マーケットの一段の拡大も見込まれています。

消費意欲自体が非常に旺盛なので、現地の市場環境や現地人の志向に合わせ商品やサービスをローカライズできれば、製造業に限らずどの分野であっても伸びる余地はあります。例えば、化学メーカーのカネカが作ったエクステンション(つけ毛)は、アフリカの若者の間で大流行中。アフリカ人の多くの髪質は縮れていて、長く伸ばしにくいため、ヘアバリエーションを楽しみたい現地女性にヒットしました。このようにニッチ分野であっても、日本企業がビジネスを拡大できる余地は大いにあります。消費性向が高く、異文化も受け入れやすい若年層人口が増えているため、アパレル産業や外食産業なども有望と見ています。

一方で、アフリカは「製造拠点」には向いていません。物流網の普及はまだ途上であり、輸送日数がかかるうえ、コストも高いのが特徴。盗難リスクも高く、保険費用負担も発生するため、さらにコスト高が生じています。製造業の場合も、アフリカに置くのは「営業・販売拠点」のみで、中東やインドなど近隣の第3国に生産拠点を置いて製品を移すという方法を取るのが、現時点では望ましいでしょう。


■採用の中心は営業職。多様な人種とフラットに付き合い、人脈を築く力が必須

アフリカ市場に本格進出するに当たり、現地で働く人材を中途採用しようとする動きが高まりつつあります。ニーズがある職種は、営業職がメイン。現地で新しい販社を立ち上げ、製品やサービスをローカライズしながら拡販する役割です。

とはいえ、営業スキルに長けた人が力を発揮できるかと言えば、そうとも言い切れません。そもそもアフリカは多民族国家が多いうえに、欧州や中東、インドから比較的距離が近く、歴史上の理由からもさまざまな民族が流入しています。つまり、現地で働くとなれば、さまざまなバックグラウンドを持つさまざまな人種と一緒にビジネスを進めることになるわけで、営業スキルよりも「人種に関わらず皆とフラットに付き合える力」「彼らの中に入り込み、現地ネットワークを築ける力」などが求められます。

また、現地ネットワークを築くには、5年以上の長期滞在が基本。日本からの距離は遠く、頻繁に戻ってくることは難しいでしょう。現地に腰を据える覚悟、精神的なタフさなども必須条件と言えます。従って、社内の人材を抜擢しようと考えても活躍できるかどうかは未知数であり、初めからアフリカ赴任志向のある人材を中途採用しようとする動きが高まっているのです。

なお、英語力は必須条件。加えて、アフリカにおいてはカメルーンやセネガルなどフランス語を公用語とする国が多いので、フランス語もある程度操れれば大きなアドバンテージになります。

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ウガンダでアフリカ支社の立ち上げ、消毒剤の普及や販促を担当する、サラヤ・イーストアフリカの宮本さん。
アルコール消毒剤拡販のため、衛生面に関する医療現場への啓蒙活動からスタート。ウガンダが抱える社会的課題の解決のため、ビジネス面から尽力できるのが嬉しい

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サラヤ・イーストアフリカ Managing Director
宮本和昌さん(31歳)ウガンダ共和国・カンパラ在住


■ウガンダでのミッション

サラヤ初のアフリカ支社立ち上げを担い、サラヤ・イーストアフリカ(SEA)の登記が完了した2011年5月より現地代表として働いています。

米国の大学卒業後、サウジアラビアの日本国総領事館で派遣員として2年間勤務し、その後海外青年協力隊の短期隊員としてウガンダ共和国のムピジ県農業課に赴任しました。そこで、ウガンダや東アフリカ地域の持つ可能性に魅せられ、任期終了後もウガンダにとどまることを決意。自らNPOを設立して活動していたところ、サラヤより支社立ち上げの協力を打診され、今に至ります。

私のミッションは3つあり、1つ目はSEAが最も力を入れている商品である「アルコール消毒剤」の普及と、それに伴う医療施設における衛生啓発、および販促です。東アフリカ地域では、院内感染予防に対する意識が低いため、まずはじっくり腰を据えて病院スタッフに啓蒙活動をしています。医療現場の意識を変え、アルコール消毒剤の需要に変えていくという長期的なミッションを抱えています。

2つ目は、商品生産ラインの立ち上げです。今後、アルコール消毒剤の需要を増やすことができても、日本から持ってきていてはコストが見合わず、だれも購入ができません。多くの医療現場で購入可能な価格を達成するには、ウガンダで一から生産することが必須だと考え、ウガンダの企業と合弁会社を立ち上げて原料の一部を分けてもらいながら、同社の工場敷地内の建屋を改築して生産ラインを立ち上げることになりました。何もかもが手さぐりでしたが、どうにかパイロット生産にこぎつけ、現在は生産ライン立ち上げに向けた最終調整に奔走しています。

3つ目が、新規市場の開拓。「メイド・イン・ウガンダ」製品ができれば、ウガンダ以外の東アフリカ共同体参加国(ケニア、タンザニア、ルワンダ、ブルンジ)にも関税なしで輸出が可能になります。それぞれの地域で信頼できる代理店を見つけ、彼らとともに物流だけでなく、それぞれの地域に即した広告展開や啓発方法を考え、実行していく計画です。

■ウガンダで働く魅力、やりがい、大変さ

ウガンダを含む東アフリカ共同体は、比較的政情が安定しており、堅実な経済発展を見せています。人口増加も著しく、ウガンダでは現在3,450万人の人口の約半分が15歳未満で、2050年には1億人に達すると見られています。

そのため、ウガンダに実際に暮らしてみると、「若い国」ならではの元気の良さ、活気の良さが満ちあふれているのを感じます。赤茶けた砂ぼこりが舞う道路を裸足で駆け回る子どもたちには心癒されます。大人たちは経済発展や生活の改善を実感しているため、国や子どもたちの未来に明るい希望を抱いています。

赤道直下にも関わらず、首都カンパラは1,000メートルを超える標高のおかげで年間を通じて20~30度と過ごしやすく、1年中快適。濃い緑の木々があふれ、鮮やかな花々が咲き乱れる美しい国でもあります。

一方で、さまざまな社会インフラが、急激な成長に追いつけないでいます。停電、断水はしょっちゅう。幹線道路はあちこちに大きな穴が開いており、公共の交通機関も未発達。物流網も発達していないので、自ら各分野、地域で1社1社信頼できる業者を探すしかありません。

とはいえ、大きな可能性を秘めた、これから伸び行く国、マーケットでビジネスを通じて課題解決に貢献できることが何より嬉しいですね。そして、その中でわれわれも大きなチャンスをつかむことができるはずだと確信しています。

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■今後のキャリア展望

東アフリカのビジネス立ち上げフェーズが終了し、事業拡大の段階に入ったら、ひとまずの役目は終了します。いつになるかはわかりませんが、そのころ全く新しいプロジェクトや事業立ち上げで、自分を必要としてくれる会社が現れたら、そちらをお手伝いさせていただくかもしれませんね。正直言って、自らのキャリアパスに対する明確なビジョンはありません。「国際貢献に携わりたい」という目標から大きく外れない範囲で、やりたいこと、やれること、ほかの人はやらないことを選んできたので、これからもその軸で、気負わずに突き進んでいきたいと考えています。

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ケニアでセールス・マーケティング、人事・総務など現地法人の運営全般を担う、ロート製薬の阿子島さん。
本社オペレーションによる、初めてのアフリカ現地法人立ち上げがミッション。アフリカビジネスの成否を担う、重要な役割を担っています。

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ロート・メンソレータム(ケニア)社(ロート製薬株式会社)
阿子島文子さん(31歳)ケニア・ナイロビ在住

■ケニアでのミッション

今秋よりケニアに赴任し、現地法人(子会社)の立ち上げを行っています。セールス・マーケティング、製品の輸入販売、人事総務、経理など、現地法人の運営全般を担っています。

ロート製薬では以前から、子会社であるメンソレータム・イギリス社を通じてアフリカへの輸出ビジネスを展開しています。ケニアでは薬局やスーパーマーケットにて大衆医薬品を中心に販売しており、消炎鎮痛剤「Deep Heat」ではカテゴリーのシェアトップを維持しているほど、現地の人々に浸透しています。

このたび、改めて現地法人設立に踏み切ったのは、スキンケア商品と医薬品販売事業を中心にケニア事業のさらなる拡大を図るため。南アフリカに子会社はありましたが、日本本社からの直接オペレーションとしては、アフリカ大陸ではケニア社が初めての事務所になります。ケニア社を東アフリカ市場の柱として成長させ、ほかのアフリカ諸国へのビジネス展開の足掛かりとする予定。つまりロート製薬のアフリカビジネスの今後につながる、重要な任務を背負っています。

■ケニアで働く魅力、やりがい、大変さ

高い成長性に注目し、新しい企業が日々参入し、新しいビジネスが生まれているケニア。今まさに変化し、進化するアフリカ経済を体感できるのが、この国で働く醍醐味ですね。一方で、日本との商習慣や国民性の違いは非常に大きいです。ケニアの国民性を「ポレポレ(ゆっくりゆっくり)」と表現するように、時間に対して大雑把で、ビジネスが予想通りに進まないこともしばしば。「そんなこと聞いてない!」「今度は何のトラブル!?」と何度言ったかわかりません(笑)。信用できる情報や人を見つけるのも一苦労で、最適な方法を自分で見つけ、判断しなければならない難しさがあります。ただ、陽気でフレンドリーな国民性なので、とても付き合いやすく、なじみやすいですね。人と人との距離が非常に近く、バスやカフェで隣に座った見知らぬ人同士が談笑しているシーンをよく見かけます。「人と人とがつながっている」「お互いに思い合っている」という意識を大事にするため、特に用事がなくても電話やSMS、SNSで頻繁に連絡を取る習慣があります。

ケニアは赤道直下の国。どんなに暑いのかと思われるかもしれませんが、首都ナイロビは1,800メートルの高地で1年を通じて15~25度という避暑地のように過ごしやすい気候です。また、ほかの地域には、年中暖かく海水浴やマリンスポーツを楽しめるインド洋沿岸、アフリカ大陸第2位の高さを誇るケニア山、野生動物のサファリを楽しめる国立公園など多種多様な観光資源があります。首都は都市として発展しながら、生活の中でさまざまな大自然を身近に感じることができるのは、この国最大の魅力だと感じています。

■今後のキャリア展望

国や地域にこだわらず、「アフリカ」「ヒト」「ビジネスのサスティナビリティ(持続可能性)」にこだわって、ワクワクする仕事に挑戦し続けたいと思っています。

アフリカを知れば知るほど、その奥深さと魅力に引きつけられます。ご存知の通り、アフリカは54カ国にわかれ、それぞれの国や地域、民族によって異なる個性があり、また一方で共有性も持ち合わせています。今まさに時代が動いているアフリカの勢いを、今後も直接肌で感じながら、ビジネスを確立する一助を担いたいと考えています。

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※リクナビNEXT 2014年1月22日記事より転載

EDIT&WRITING:伊藤理子

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