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「海外で暮らす夢」「家族との時間」……社員それぞれの願いを、リモートワークが実現した。スキルを持って集結したメンバーが体現する、場所を超えた働き方とは

株式会社RHEMS Japan
取り組みの概要
カナダでの勤務も可能に。社員それぞれが働きたい場所で働くリモートワーク
取り組みを始めたきっかけ
オフィスという場所に縛られず、働きやすさを最優先した代表の思い
取り組みを運用する秘訣
オンラインのコミュニケーションツールを駆使し、距離の弊害を解消
よかったこと
海外生活、家庭最優先といった、社員それぞれの理想のライフスタイルを実現

本社所在地には、何の意味もなかった

オンラインツールで離れていても何をしているか見えるように

RHEMS Japan(レイムスジャパン) のオフィスは、一般的な企業についてイメージするそれとは異なる。そもそも基本的にはオフィスや事務所といった言葉を使わない。概念そのものが違うのだ。本社所在地は東京都中野区だが、そこには代表取締役CEOである佐藤マイベルゲン玲さんがひとりきり。佐藤さんにしてみれば、そこは執務室でも何でもない、ただの自宅だ。ほかの社員は北海道や、はるか遠い海の彼方のカナダなど、別々の場所で仕事をしている。

「場所」に縛られる働き方への疑問

もともとは渋谷区内にオフィスを構えていた同社。クライアントのサーバー管理・保守を生業とする一般的なエンジニアグループで、同業の大手企業から転職した、申し分ない経験値を持つ3人のメンバーが集まっていた。

「仕事柄、個人の作業に集中するためにヘッドセットを付けて周りの音を遮断したり、社内コミュニケーションをチャットで行ったりする風景が当たり前になっていました」と佐藤さんは振り返る。経験とスキルを持つ者同士だから、無駄な時間の使い方をしない。「そんな様子を見ていて、これならオフィスに毎日来る必要はないんじゃないか?と考えるようになったんです」。かつて会社員として働いていた頃から、オフィスという「場所」に縛られる働き方には疑問を感じていたという。

ツールで日常業務をつなげ、別々の場所で働くことを可能に

懸念だったのは、社員同士のコミュニケーション不足による一体感の欠如や、作業面のオペレーションを直接行わないことによる業務への支障。

佐藤さん自身で外部から調達できるさまざまなコミュニケーションツールを試した。離れた場所にいるメンバー同士が、メールや電話以外にも動画や音声で意思疎通を図れるのか、試行錯誤を繰り返した。その結果、渋谷のオフィスを引き払い自宅住所に本社登記を移したのだ。

社内コミュニケーションや会議は、最大10人まで同時参加してビデオ通話ができるGoogleの「ビデオハングアウト」を使って行う。作業面でのオペレーションは、画面を共有しながらお互い同時に作業を進めることができるアプリ「Screen Hero」を活用。相手のマウスカーソルの動きが見えるため、テクニカルなアドバイスを行う際にも重宝しているという。

一方で、対面での打ち合わせが必要となったときのために新宿のレンタルオフィスを確保。社員が気軽に集まれる場所にもなっており、佐藤さんも週に1回は顔を出す。

「社員にとって働きやすい状況を作ることが目的でしたが、実際にやってみた結果、コミュニケーションレベルや業務生産性が向上し会社業績にもプラスとなっています」と佐藤さんは話す。普段離れていることによって、社員間のコミュニケーションは、むしろ活発になったという。

カナダで勤務する北島さんと打ち合わせをする代表の佐藤さん

代表の理想は「仕事3割、プライベート7割」

社員が人生で最も大切にしたいことを実現できるように

役員を務める北島拓さんは、海外で生活することが長年の夢だった。リモートワークで成果を出し、2013年にカナダへ移住。午前中は語学学校に通い午後は仕事と、現地での生活を楽しんでいる。弊害ではないかと思われるカナダとの時差については、「時差を利用して、日本では深夜対応になってしまう業務をこちらで行うというようなメリットもあります」と語る。

社員の遠藤五月男(さつお)さんは、生まれ故郷の北海道で家族とともに暮らす。共働きで、保育所に通う子どもの送り迎えを担当。「朝はゆっくり連れて行き、17時頃に迎えに行きます。リモートワークのおかげで、単身赴任をすることなく家族全員で暮らすことができました」と話す。妻もこの働き方を強く支持しているそうだ。

二人に共通しているのは、「人生で最も大切にしたい価値観」を実現していること。そして、仕事はそのための手段であると割り切っていることだ。佐藤さんも「最終的には仕事3割、プライベート7割という生き方をしたいと思っています」と言い切る。

100パーセントのリモートワークで、社員が活躍し続ける会社を目指す

代表である佐藤さんが31歳、ほかのメンバーは全員年上。「みんな独立してやっていてもおかしくないメンバー」だという。それでもRHEMS Japanで働くことを選ぶのは、正社員としての安定とリモートワークという自由な働き方を両立できるからだ。ITインフラの保守・管理という仕事には、長年業界に関わってきたミドル層の知見が大いに生かされる。無理のない働き方を実現し、ミドル層のメンバーが活躍し続けることは、事業にとっても大きな意味を持つのだ。

自宅を仕事場にしながら社員皆がつながり成果を出す。東京、北海道、さらにはカナダという物理的距離も乗り越えた。従来のオフィスが持つ意味は、ほぼ失われているようにも思える。今は社員数が5人に増えたが、リモートワークを変えるつもりはないという。「新たに迎え入れた社員の教育など、課題もまだあり、全員が今のやり方を完璧だと思っているわけではありません。当面は新宿のレンタルオフィスも活用しながらですが、今後も試行錯誤をしながらリモートワークによって100パーセント完結する会社を目指していきます」と展望を語ってくれた。

経験豊富なメンバーがしっかり成果を出し、自分の価値観を何よりも大切にして働き続けられる会社。多様化するワークスタイルのひとつの成功例が、ここにある。

受賞者コメント

佐藤 マイベルゲン 玲 さん

『一人でも海外で勤務している社員がいたらかっこいいんじゃないか』といった思いからリモートワークを始めました。現段階で成功しているかどうかというと、これが100パーセントの解ではないと思っています。これからも試行錯誤しながら成果を出していきたいと思います

審査員コメント

金井 壽宏

全社員がそれぞれの働きたい場所で働くリモートワークを行い、「カナダで語学留学を行いながら働き続ける」など、社員が理想とする働き方を徹底的に追求しながら、業績も伸ばしてこられた点に取り組みの意味を感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第1回(2014年度)の受賞取り組み