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ITの力で婚活イベントが大盛況! 地域から寄せられる困りごとの相談に、社員みんながサポーターとして立ち上がる

株式会社LASSIC
取り組みの概要
自分に身近な問題の解決アイディアを募る社内取り組み。ここから生まれたアプリで地域を盛り上げる
取り組みを始めたきっかけ
業務にとらわれない自由な発想で地域貢献策や商品開発につなげたいという会社の考え
取り組みを運用する秘訣
会社イベントだけでなく、日々アイディアを受け付ける。地域から相談された案件にも予算を付けて承認
よかったこと
社員が地域の役に立つことで、自身の存在意義が増し、成長の機会となる

「ITで儲けようと思うなら、鳥取で創業しない」

社内アイディアソンで活発に議論する社員

撮影した写真をもとに笑顔のレベルを判定してくれるアプリ、スマイルアジャスター。「感情×IT」をテーマに事業展開するLASSICが生み出した、ユニークな製品だ。鳥取市に本社を構える同社には、社内のアイディアをどんどん吸い上げ、地域の活性化に向けて尽くそうという思いがある。

商売は二の次で、地域の困りごとを聞いて回った

「1000万円を準備して鳥取駅前で事務所を借りようとしたけれど、断られました。人脈も地脈もない中でのスタートは、苦労しましたよ」。代表取締役副社長の西尾知宏さんは、2006年の創業時期をそう振り返る。鳥取市の出身。東京で30代前半まで働いていたが、地元の知人に刺激を受け、「地域に貢献したい」という思いで鳥取での創業を決意した。だが、鳥取での事業を成り立たせるためには地元の人脈・地脈が必須。出だしで大きくつまずき、オフィスさえ決まらない日々が続いたという。関係性を作るために毎日地域の困りごとを聞いて回り、「何かできることはないか」と考え、実現してきたからこそ今の会社がある。

その経験が、社内の取り組みにも生かされている。社員それぞれが地域のつながりから地元活性化のための企画や運営協力を依頼されることが多く、アイディアを出し提案があれば事業化して予算を付けることも多いという。 こうしたアイディア出しやプレゼンが日常的に行われているのも、同社の特長だ。半年に一度開かれる社内イベントで、「感情×IT」や「2020年のLASSICとは」など、設定されたテーマに対してのアイディアをプレゼン。実用化されたアイディアで出た利益は提案者に還元するという取り組みも始まった。地域活性化の企画や運営も、社内イベントも、利益に結びつくアイディアを求めるのではなく、鳥取にいるからこそ「自分にとって身近で、関心のある問題について考えてほしい」という思いで取り組んでいる。

ITとは無縁に思える相談も多く寄せられ、黒字が見込めない案件もある。そういった企画にも取り組むのは、社員のアイディアが会社の一番の資産であると考えているからだという。「合理性だけを求めると、人を大切にできなくなってしまう。そもそもITで儲けようと考えるなら、鳥取で創業しません」と西尾さんは笑う。

婚活イベントを企画。男性側に積極的になってもらうため、自社アプリを活用

鳥取県智頭町の那岐地区で開催されている婚活イベントがある。これまでに3回行われ、毎回複数組のカップルが誕生するという実績のあるイベントだ。ICTサービス事業部でエンジニアとして働く森原駿太郎さんは、このイベントに企画段階から関わっている。

「もともと、エンジニアとは別にイベント企画の仕事にも興味があったんです」と語る森原さん。有志にも関わらず、森原さんを含む10人程度のスタッフが集まり、那岐地区の人々とディスカッションを重ねた。「イベントの課題は『男性側が委縮してしまい、なかなか盛り上がらないこと』でした」。男性参加者が積極的に女性参加者へアプローチできるようにする企画が求められていたという。解決策を考えているときに、自社で開発した「スマイルアジャスター」を使う仕掛けを思いついたのだそうだ。

笑顔を点数化するというアプリの機能を使って、「アプリに向かって告白の練習をし、高得点だった上位3名から女性にアプローチできる」というゲームを考えた。アプリ自体のユニークさも相まって、会場は盛り上がったという。

鳥取の婚活イベントに協力するスタッフのみなさん

会社だけが人生じゃない

自分のアイディアを実現していく喜び

なぜIT企業に婚活イベント支援の依頼が入ったのか。もともとのきっかけは、地元の山道メンテナンスをボランティアで手伝っていた社員が、「会社のみんなで清掃活動をしたい」と提案したことだったという。活動に参加し、地元の方との接点が増えてきた頃に、「嫁探し」についての悩みを聞くようになった。適齢期の女性を集客できるようなさまざまなイベントを一緒に考えた結果、婚活イベントの実施につながっていたのだ。

「町会やマンションの管理組合など、社員が所属する地域社会との接点はとても大切です」と西尾さんは話す。能力開発やモチベーションの向上は、会社にいる時間だけでなく、地域で過ごす時間でも磨かれると考えているからだ。今ではそれぞれが所属するコミュニティから、さまざまな相談ごとが寄せられるようになった。業務と直結していなくても、社員のアイディアを実現する機会があればゴーサインが出る。それを実行し、形にしてくことで社員のモチベーションが高まっていくのだ。

地方で活動するからこそ提供できる価値を、日本全国に広げたい

今後は他県への拠点展開を加速させていく予定もあるというLASSIC。西尾さんは「それぞれの地域で困りごとを解決するプラットフォームにしていければ」と構想を語る。人口減少社会にあって、限界集落と呼ばれる地域も出てきている。「感情×IT」というLASSICの事業ドメインを生かし、地方を元気にしていくことができないかを真剣に考えているという。「地元の役に立つことで、自身の存在意義が増し成長の機会も得られます。社員がそう感じられる場を、これからも増やしていきたいですね」。

どれだけの収益を上げていたとしても、都心ではできない活動、得られない経験があるのだ。効率主義とは真逆の新しい企業のあり方が、鳥取から広がっていくのかもしれない。

受賞者コメント

若山 幸司 さん

当社は鳥取本社をはじめとして、地方の4拠点でIT開発を行っています。『らしく』の実現をサポートする、という会社理念に沿って、自発的に行動する若手社員がいることを誇りに思っています

審査員コメント

金井 壽宏

鳥取県を拠点とする同社周辺地区での「嫁探し」などの課題解決のために、自社のサービスや社員のアイデアを提供し地域活性化に貢献、また、社員が地域に関わることがモチベーション向上に繋がっている点に、取り組みの意味を感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第1回(2014年度)の受賞取り組み