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「大企業だからできない」という常識を打ち破る! 社内外で人脈を広げ、新規事業開発にも挑む有志の会「One Panasonic」は、小さな内定者懇親会から始まった

パナソニック株式会社
取り組みの概要
社内有志グループによる交流会で、社長・経営幹部との直接対話と部署横断型活動を実現
取り組みを始めたきっかけ
風土の異なる3社の合併による、現場レベルでの一体感の必要性
取り組みを運用する秘訣
若手だけにとどまらず、ミドル、経営層までを巻き込んで運営していること
よかったこと
大企業ならではの組織の壁を乗り越えて得たメンバーのつながりと、部署を横断した新規事業の種の芽生え

仲間を集め、社長へ直訴…。一人の情熱が、巨大組織を動かした

全体交流会。経営陣を中心に参加者の笑顔が印象的

日本を代表するエレクトロニクスメーカー、パナソニック。26万人以上の従業員数(グループ連結)を抱える巨大組織の中で、有志のグループ「One Panasonic」がユニークな存在感を放っている。部門を横断してメンバー同士の交流を図り、ベンチャー企業のように自由な発想と、大企業ならではの豊富なリソースを結び付けて部門横断型活動を促進していく取り組みだ。

40人でスタートした内定者懇親会がすべての始まり

「きっかけは、自身が内定者時代に抱いた課題感でした」。One Panasonicの代表を務める、コーポレート戦略本部・人事戦略グループ主事の濱松誠さんは結成のいきさつを語る。「入社前に、『より多くの先輩社員とつながりを持てるようになれないか』と考えたんです。2006年の入社後、自発的に内定者と先輩社員の間を取り持つ懇親会の開催を始めました」。最初の年は40人だった参加者は年を重ねるごとに増え続け、6年後の2012年には総参加者が約400人に。積極的に社内交流を図ろうとする一大若手グループが形成されていた。

ちょうどその年、会社にとっての大転換期が訪れる。パナソニック、パナソニック電工、三洋電機の3社が合併。それぞれに風土が異なる企業同士、それも3社が同時に集まるということは、容易ではない。濱松さんは「若手のつながりを生かし、現場レベルでの交流を促進してシナジーを生み出せないだろうか」と考えた。各社の若手が集まり、新生パナソニックと同じベクトルに向けて歩みだすきっかけにしたかったのだ。

そして、その新生パナソニックのベクトルを社長自らの言葉で語ってほしい、有志で若手が行動していることを知ってほしいと、社長(当時)の大坪文雄さんへ直接メールを送って参加依頼を直訴。「大坪も濱松の思いをくみ取り、交流会へ参加することを快諾してくれたんです。彼の熱意に周囲がどんどん巻き込まれていきました」と、その思いに共感した一人、広報グループ主事の則武里恵さんは当時を振り返る。

かくして、有志の会「One Panasonic」はスタートした。

部門の壁を越えて知見をインプットし、思いや夢をアウトプットする場

One Panasonicの活動は、四半期に一度実施される「全体交流会」が中心だ。社長をはじめとする経営幹部や社外の著名人をゲストに招き、200人規模の参加者が集まる。訓示やあいさつのように一方的に経営方針を聞くのではなく、経営陣の考えを聞き、相互に思いをぶつけあえる、他社のナレッジを吸収するなど、日常業務では得難いインプットができる場となっている。

また、テーマ別の分科会も積極的に行われている。その一つである「共創ベース」は、所属部署での実現が難しい商品開発アイデアのブラッシュアップを考える分科会。単一部署ではリソースに限界がある場合でも、部門横断の交流や社外人脈によって糸口が見つかるという。「パナソニックの掲げる経営スローガン”Cross-Value Innovation”が、少しずつ実現していると感じています」と濱松さんは話す。

「ようこそ先輩」でミドル層と若手が交流

世代も所属も関係なく、理念に共感する者同士で新たな価値を作る

総参加者数1700人。大企業に蓄積された知見の流動が生む、新規事業の芽

ベトナム出身で入社3年目の技術者であるグエン・ジュイヒンさんの夢は「ロボット研究を昇華させ、日本が再び技術大国として復権するための力となること」。そして「その技術でベトナムの発展に貢献したい」と考えている。いくつかのアイデアを持ちつつも、経営陣に対して直接伝える機会がないことを悔しく思っていた。経営陣と直接対話できる場を求めて最初にOne Panasonicに参加して以来、毎回欠かさず交流会に出席。自分の夢を参加者に語り、人脈を広げてきた。「今のアイデアを実現するための仲間も見つけ、プロジェクトが大きく動き始めました」と目を輝かせる。

大住駿介さんはグループでソリューション営業に携わる入社2年目の社員。入社前に濱松さんと出会い、その志に惹かれた。交流会に参加してきた感想として「大手企業では、トップを巻き込んでいくなんてできないんじゃないかと思っていました。ただ、この活動を通して、やってできないことはないと気付かされました」と話す。有志のグループが必死に呼びかけたことで、経営トップや社外との交流の場が実際に生まれている。その熱意に刺激され、仕事への意欲がいっそう高まったのだという。「この熱意を共有できる仲間が増えてほしい。その思いから、後輩や内定者に参加を呼び掛ける役割をしています」。

これまでの総参加者数は1700人。交流会後に実施しているアンケートでは、参加者の実に95パーセントが「モチベーションが向上した」と回答している。

部門横断から業界横断へ-広がっていく取り組みの輪

内定者懇親会から始まったこの活動は、もはや若手だけのものではない。1年ほど前から、「素晴らしい人材がパナソニックにたくさんいることを若手に伝えたい」と、ミドル層と若手が話す企画「ようこそ先輩」を交流会に盛り込んでいる。初めは若手の会だからという意識が強かったミドル層にも、「後輩にとって自分の経験が役立つなら」と、参加の輪が広がっているという。「ミドルは裁量を持っているからこそ、新しいことや何かを変えていくことに対してもっとポジティブにならないといけない。自分自身なかなかできていないので、One Panasonicの活動に触れるたび、それではいけないと思わされています」とグローバル&グループ採用センターで企画チームのリーダーを務める伊藤誠剛さんは語る。ミドル同士のつながりから、新しい事業の企画が生まれるという予想外の効果も多いという。

One Panasonicは、今後どこを目指していくのか。濱松さんは「自発的に行動できる人がもっと増えるように仕掛けていきたいですね。そして、もっといろいろな人をつなげ、パナソニック内でのより大きなムーブメントにしていきたい。SNSでの社外からの反響も大きく、連携できるフィールドの広がりを感じています」と話す。

パナソニックという会社を愛し、パナソニックから世の中を変えていこうとする力強いメンバーが大勢いる。その集団に、社外からの注目も日々高まっているのだ。社内の部門横断はもちろん、ゆくゆくは業界横断のプロジェクトが当たり前になっているのかもしれない。「将来的には『One Japan』として、もっと大きなインパクトを社会に与えたいですね」と、濱松さんは最後に力強く語ってくれた。

One Panasonic結成当時の様子
経営幹部や社外の人をゲストに招く「全体交流会」

受賞者コメント

濱松 誠 さん

1800人の参加メンバーの思いを背負ってこの場に来ました。従業員の火打ち石になりたい、そして未来をつくりたいと思って活動しています。他の企業にも同じ志を持つ仲間が増えてきました。これからも火を絶やさずに続けていきたいと思います。

審査員コメント

守島 基博

グループ全体で26万人を超える従業員を抱えながら、社内横断的な交流の場を作り上げたことに加え、大企業が陥りがちな縦割り的組織からの脱却に果敢に挑戦し、今なお維持・発展を続けており、そのパワーと推進力を賞賛すべきと考えました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第1回(2014年度)の受賞取り組み