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家族を犠牲にしてまで仕事をすることは、評価しない! 子どもを思う社員の気持ちに寄り添った「週1三時」退勤の制度

株式会社桃栗柿屋
取り組みの概要
週に1回、三時(15時)に帰宅できる制度を運用。子どもとのふれあいに活用
取り組みを始めたきっかけ
社員数増加により社内制度の整備を進める中、「家族を犠牲にしない働き方を実現してほしい」という社長の思いから
取り組みを運用する秘訣
社員の自己責任で運用するという社長の意思を浸透させた
よかったこと
子どもとの時間が取りにくい業界で、子育てと仕事を前向きに両立する女性社員のロールモデルができた

1人につき20のアイデア。付箋で埋め尽くされた会社の青写真

オフィスに飾られている「楽しいルール」を活用した社員の様子

女性の目線で「家」の問題に共感し、解決策を提案する。そんなリフォーム会社が業績を伸ばしている。滋賀県内に3拠点を展開する桃栗柿屋もその一つ。住宅リフォームと不動産事業を広く手掛け、創業10年を迎えた2013年より、業容拡大で社員が増加。現在は社員15名(うち女性7名)で、20代の若手社員も増えてきたことから、福利厚生や社内制度の充実を図ってきたという。

社員みんなのアイデアの山から生まれた「週1三時」退勤

「自由で自立した、利益の出る会社にしたい」。2013年夏、社長のそんな思いをきっかけとして、とあるミーティングが開催された。通常営業日を半日費やして行われた会議のテーマは社内制度。1人あたり約20件のアイデアを次々と付箋に書き出し、壁に貼り付けていった。「なんか自由な意見が多いなあ、という印象でした」。事務・販売促進を務める清水翔子さんは、そのときの様子を笑顔で振り返る。実現できそうなアイデアを集約して、自社独自の「楽しいルール」として制度化することになった。

その中でも社長は、ノー残業デーを設けることについて深く検討していたという。「もともと当社は、個人のプライベートにもお互いどんどん踏み込んで、家族の話をたくさん共有するような社風。だから、社員の家族のためにノー残業デーはぜひ実現したいという思いがあったようです」と清水さんは話す。ただ、単なるノー残業デーなら他でもやっているし、大したインパクトはないのではないか? 考えた末に出た結論は、「どうせなら三時にしちゃおう」。週に1回、15時に退勤できるという破格の制度が生まれたのだった。

社員の自己責任に任せる社風が、制度を使いやすくした

桃栗柿屋では、社員それぞれの持つ裁量が大きい。同業他社であれば社長が決裁するような大きな金額が動く際にも、担当の社員が責任を持って判断する。少数精鋭で戦ってきたからこその同社の強みでもある。一方でコミュニケーションを重要視しており、全体会議や部門ミーティングを徹底して情報共有を行っている。

立場に関わらず、誰もが週1回15時に帰宅するという制度を運用していくにあたっては、こうした同社の特長が生かされたようだ。「各自が自立してスケジュール管理しよう、というポリシーがあります。仕事を進捗させて、早く上がれるように声を掛け合っています」と清水さんは語る。15時上がりの申請は、前日にエクセルシートへ書き込むだけというシンプルな手順。会議をきっちり行い、個別の裁量でスピーディーに仕事を進めるスタイルが、早上がりを可能とする効率アップにつながっているのだ。

週1三時で帰宅した後、お子さんと過ごす村井さん

「子どもが何より最優先」そう思うから、仕事も頑張れる

あきらめかけていた、子どもと過ごす時間

アドバイザーの村井理恵さんは、4歳の息子を保育園に預けてバリバリ働くお母さん。普段は18時半に迎えに行くが、週1三時の日は15時過ぎに子どもと会える。「まだ外が明るいので、公園で遊んだり、一緒に買い物をしたり、ともに過ごす時間を満喫しています」と話す。クライアントに渡している自己紹介シートでは息子のエピソードに触れ、週1三時の制度についても話しているのだそうだ。社内外での理解を得て、毎週必ず制度を利用している。

前職は不動産会社に勤務していた村井さん。不動産という仕事上土日は出勤が必要。また、男性が多い職場で子どもを優先することへの理解が得られず、「子どもとの時間が取れない仕事だと考えていた」と打ち明ける。桃栗柿屋では、みんなが家族の話題を嬉しそうに話していた。その雰囲気の中で、自身も子どものことをどんどん周りに相談するようになっていったという。「以前は、育児も仕事も同じように高いレベルでこなさなければいけないと思い、追いつめられていた気がします。ここに来てからは、『私にとっては子どもが何より最優先』」とはっきり言えるようになりました。だからこそ、短い時間で仕事をこなそうというモチベーションにつながるんです」と語ってくれた。

新しいメンバーへ伝えられる価値

方法も運用もとてもシンプルな制度だが、社員とその家族にポジティブな影響を与えている「週1三時」。清水さんは「新人が入社すると、週1三時を活用するために仕事の生産性をどうやって上げていくのか、考えてもらうようにしています」と話す。村井さんは「こうした制度を活用して勉強や資格取得をしておくと、子育てと仕事の両立がしやすくなると思います」と“若手”にエールを送る。会社にとっては、住宅という商品を語る上で欠かせない女性の視点を、今後も長く社内で生かし、働き続けてもらう環境づくりのきっかけとなった。

「家族を犠牲にすることは評価しない」と言い切る桃栗柿屋。社長の思いと社員の自立した行動が結実し、働きやすい職場づくりはさらに加速していくだろう。今日も元気な笑い声をオフィスに響かせながら。

受賞者コメント

清水 翔子 さん

個性的な社員が集まっている会社で評価をいただいたことがうれしいです。今日ここに来ることを皆に話したところ、『評価されるべくしてされた取り組みだ』と喜んでいました。代表が社員を信頼しているからこそできる制度なのだと思っています

審査員コメント

アキレス 美知子

「家族を犠牲にしてまで仕事をすることは評価しない」という考えから、女性が家庭と仕事を両立し、長く活躍できる環境を目指し、いわゆる週に1回のノー残業デーにとどまらず、3時退勤に踏み切った点に、チャレンジ性を感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第1回(2014年度)の受賞取り組み