従業員に感謝の気持ちを伝え、モチベーションを高めるために立ち上がった「人事部感動課」。メンバーの日常から感動のタネを探し、仲間たちがドラマを演出する
サイボウズ株式会社
従業員に感謝の気持ちを伝え、モチベーションを高めるために立ち上がった「人事部感動課」。メンバーの日常から感動のタネを探し、仲間たちがドラマを演出する
サイボウズ株式会社200名以上の社内報に毎日目を通すのが、事業支援本部「人事部感動課」福西隆宏さんの主業務の一つ。グループウェアの社内日報にある所感欄に、くまなく目を通す。日々アップデートされる社員の「今」を知るためだ。どの部署で誰が何を担当しているか、仕事のどんな場面で喜び、笑い、あるいは悩み、泣いているか。全社を横断しリアルタイムに把握している。海外拠点を含めると社員数は500名を超えるが、この中で毎日200名以上の日報を読むという。
元々は開発部に所属し、ユーザー向けのマニュアル作成を担当。社内報の制作にも携わっていた。人事本部長を兼任する副社長から直接声が掛かったのは2011年。「感動で社員一人ひとりを奮い立たせる、テレビ番組を作るようなプロジェクトを立ち上げたい」。鶴の一声で始まった取り組みは、社外にも実績や前例がない。福西さんはメインミッションとの兼務で立ち向かった。人事部感動課が正式に設立され専任となったのは、わずか半年後のことだった。
グループウェアで国内シェアNo.1を誇るサイボウズ。「成長と拡大を続けるサイボウズの社内活性化に、給与や人事評価だけでは限界があったんです」と福西さんは打ち明ける。定例の業務成果の振り返りだけでは見えてこない日々のドラマに光を当て、社員への感謝の気持ちを伝える。それによって本人だけでなく、周囲のメンバーの共感を生み、感動をモチベーションの原動力としていく。そんな目的だったという。
感動課の活動は、「リサーチ」と「イベント」の二本柱で構成される。前述の日報を読み、社員のコンディションを把握することがリサーチの入り口。仕事の壁を乗り越えて喜んでいるメンバーがいると、福西さんはその上長や同僚を巻き込んでプチイベントを企てる。特製の賞状を用意して、会社からの感謝のメッセージを伝える。贈呈の場は部署の飲み会であったり、ときには家族を巻き込んで家庭で行われることもあるという。社員を感動させることが目的だから、すべてはサプライズ。内容はもちろん、関係者への根回しも怠りない。福西さんだけではなく、この過程に関わる周囲のメンバーも感動の演出者となるのだ。「感動課の専任スタッフは私ひとりですが、社員全員が兼任なんです」と福西さんは語る。
そんな感動イベントの総決算が、年に一度決定する「サイボウズ・オブ・ザ・イヤー」と「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」。業務上の大きな成果や、社内での日々の取り組みに対して最も多くの「ありがとう」の声を集めた人が全社総会の場で表彰される。いわば「感謝の年間アワード」だ。無記名の、何十人という数の感謝の声が寄せられ、号泣する受賞者も多い。この感動が社員を奮い立たせ、全社へ広がっていく。
製品セキュリティを担当するグローバル開発本部・品質保証部の伊藤彰嗣さんは、2013年の「サイボウズ・オブ・ザ・イヤー」を受賞。サイト上のバグを発見する外部パートナーへの報奨制度を確立したことが評価された。「セキュリティ管理という終わりのないミッションを抱える中で、小さな進捗を日々メンバーとともに喜ぶようにしています」と語る。
人事部・総務チームに所属する後藤礼さんは、毎朝社内を見て回り、気づいたところがあればこまめに掃除することを心掛けていた。この積み重ねが多くの感謝を集め、特別賞となった。「『いつもありがとう』というコメントをたくさんもらった受賞後は、社内の会話で自分からも感謝の言葉を伝える機会が増えました」と話す。
入社1年目のメンバーも例外ではない。導入研修やルーキーアワードで感動を体験し、それを周囲の先輩や同期がともに喜んでくれることで、人との関わりが能動的に変わっていく例が多数あるという。
これまでの3年間で、のべ300人近くの感動シーンを演出してきた福西さんは「感動課という専任でなければできない仕事だと思う」と感想を語る。アワードのように目立つ部分だけでなく、受賞者以外へ届けられた感謝のメッセージも全員にフィードバックしている。その作業量は膨大だ。一方で、日報からネガティブな要素を見つけることもあった。人事部や直属上長との連携で、即フォローに動くといった副次的な効果も得られているという。
数字で結果を表すことが難しいミッションをフォローするのは経営陣。「感動のシーンに立ち会って、一番泣くのは社長や副社長なんです。トップが直接後押ししてくれている限り、この取り組みを続けていきます」と語ってくれた。
トラブルやクレームなど、悪い情報を共有する仕組みを整えている企業は多いだろう。だが、良い情報(個々人の日常の努力)を広く共有し、感謝と感動によって組織が動く仕組みを持つ企業は他にない。大組織の中では埋もれてしまいかねない日々のエピソードに光を当てる福西さん。ともにサプライズを仕掛け感謝の言葉を届ける仲間。そして、感動をきっかけにして前向きに変わっていくメンバー。すべてが相まって「人事部感動課」の活動となるのだ。
チームワークの重要性を世の中に発信し続けるサイボウズ。一人では形にならないこのプロジェクトが、まさにその理念を体現している。ポジティブな情報がたくさん集まるこの職場は、今後も感動とともに進化していくだろう。
守島 基博 氏
「感動課」という特徴的な部署を創設して、普段見過ごされがちな小さな努力などを見つけ、数字では見えにくい貢献を見える化し本人と周りを感動させることで、社員のモチベーションや連帯感の向上につなげている点に独自性を感じました。
※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。
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株式会社じげん
福西 隆宏 さん
この2月で感動課設立から4年を迎えました。社内にも徐々に活動の意義が伝わり、続けることが大切だと感じます。4年間はあっという間でしたが、ここまで感動課を続けさせてくれた会社に感謝しています。トロフィーを早く社内に持ち帰って、皆に自慢したいです