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(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2014年8月27日
谷塚美乃里さん |
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米国の大学で美術やデザインを学んだ後に帰国。地方自治体の町おこしプロジェクトに携わる3年間の有期雇用職員となり、デザイナーとしてポスターやグッズの企画・デザインを担当する。5月に任期満了となり、デザイナー職を探しているが、書類落ちが続いている。 | |
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(職務経歴書を見ながら)…谷塚さんは、非常に面白い経歴の持ち主ですね。ご実家は東京なのに、5月まで地方自治体で勤務されていたのですね。そしてその前は、アメリカに。
はい。アメリカの大学で美術とデザインを学び、4年前の秋に卒業しました。しばらく東京にある実家を拠点に就職先を探していたのですが、なかなか職が見つからず、困っていた時に、ある地方自治体の町おこしプロジェクトの人材募集について紹介されている新聞記事を読んだんです。プロジェクトに関わるさまざまな役割のスタッフを、3年間の有期雇用で採用するとありましたが、その中にデザイナー職もあったため、「面白そう!」と迷わず応募しました。その地方には何の縁もなかったのですが(笑)。
かなり東京から離れていますが、自然豊かな場所ですよね。3年間、いかがでしたか?
とても貴重な経験をさせていただき、充実した3年間でした。町おこしのためのポスターやステッカー、グッズ、特産品のパンフレットや商品パッケージなど、県外の方にPRするためのあらゆるものの企画・デザインを手掛けました。Tシャツなどは予想を上回るヒットになり、部内で表彰もされました。ゆるキャラも作ったんですよ。
それはいい経験をされましたね!そして、次もデザイナーとして働きたいと。
はい。制作会社のデザイナー職を中心に、すでに30社ほどに応募していますが、面接に進んだのは5社で、すべて一次面接で落ちています。
ご自身では、落ちている原因はどこにあると思いますか?
経験不足と判断されているのではないかと思っています。デザイナーとして3年間勤めましたが、一つの分野のデザインに専念して来たわけではなく、地域のPRに関わるもの何でも手掛けてきました。広く浅く、さまざまなデザインを経験したことは、私にとってプラスになっていると思っていますが、応募している制作会社やデザイン会社では「専門性がない」と判断され、落ちているのではないかと…。
なるほど…。
あまりに書類通過率が悪いので、最近では翻訳家の道も考えています。TOEICで900以上のスコアを保有しているので、本当は英語力も活かせるデザイナーを目指したいのですが、両方を叶えるのは難しそうなので…。それに、クリエイティブ業界は時間が不規則とも聞いています。私は一生仕事をしていきたいと考えているので、長く働くならば翻訳のほうがいいのかなとも思い始めています。
話をうかがっていると、少し視点を変えてみたほうがいいような気がしますね。谷塚さんの想いを、掘り下げてみましょう。
谷塚さんは、どんな役割に興味があり、仕事でどんなことを実現したいと思っていますか?どんな小さなことでもいいので、自由に話してみてください。
う〜ん…難しいですねえ…うまく言葉にできません。
ならば、少し以前にさかのぼってみましょうか。なぜ、アメリカの大学卒業後に、縁もゆかりもない地方自治体を選んだのですか?
大学で美術やデザインを学ぶ中で、アーティストの道を進むのではなく、アートで人をつなぐ仕事をしてみたいと思うようになりました。地方自治体の求人募集を見たとき、この想いを叶えられると思ったんです。デザイン経験を武器に、この地域を知らない全国の人々に、魅力を伝えることができるという役割に惹かれました。
なるほど、いい想いですね!先ほど、「英語力が活かせるデザイナーが理想」とおっしゃっていましたが、例えばどういう役割を想像していますか?
日本の魅力を海外に伝えられるような仕事をイメージしています。例えば、海外向けの商品やサービスのパッケージや販促物、地域や観光PRに関わる媒体などのデザインに関われたら、私の強みを発揮できると思うのですが…。
いろいろな想いが出てきましたね。ならば、デザイン会社や制作会社を目指すのではなく、デザイン会社や制作会社に「発注する側」に応募したほうがいいのではないかな?すなわち、メーカーなどの商品企画、販促企画などです。
え、その線は全然イメージしていなかったのですが…なぜ、発注サイドのほうがいいと思われるのですか?
谷塚さんは今まで、町おこしのために自分で企画を考え、デザインまで手掛けてきたのですよね?つまり、当事者として町の魅力を考え、どうアピールすればより多くの人に伝わるかを考え抜いてきた。その経験は、「発注側」のほうがダイレクトに活かせると思うからです。販促物などのデザインを「発注される側」の制作会社よりも、自社商品の魅力をどうすれば広く伝えられるかを当事者としてじっくり考える「発注側」だったら、経験不足と判断されることはないでしょう。3年間、多様な経験を積んできた谷塚さんのスキルや手腕が、きっと魅力的に映るはずです。それに、発注側のほうが、語学力を活かせる場面が多いはずです。国内市場が徐々に縮小していく中、海外に向けて自社商品やサービスを売り込もうとする企業の動きは今後さらに高まるはず。ネイティブ並みの語学力を持つ谷塚さんの活躍余地も広がるでしょうし、「日本の魅力を海外に伝えたい」という想いも叶えられます。志望動機として、応募書類にも記すといいでしょう。
確かに…。今まで「デザイン職に就くなら制作会社」としか頭になかったのですが、選択肢として大いにありですね。
はい。それに、「クリエイティブ業界は時間が不規則」という懸念も解消できるでしょう。発注される側は、どうしても発注側の意向やスケジュールに振り回されてしまうため、時間が不規則になりがちですが、発注側ならばある程度自分で時間のコントロールができるはず。谷塚さんの意向に沿った形で、長く働ける可能性が高いと思いますよ。
わかりました。視野を広げて、応募先を再検討してみます。
「メーカーなど、発注側にアプローチする」という視点は、今まで全くありませんでした。発注側のほうが、日本の魅力を海外に発信できるチャンスが大きそうですし、経験やスキルも活かせそう。新しい発見が得られたので、今後の活動にも意欲的に取り組めそうです。(谷塚さん)
- EDIT
- 伊藤理子
- DESIGN
- マグスター
- ILLUST
- もりいくすお
- PHOTO
- 平山諭