転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > 英語力を活かした仕事がしたいが、方向性が定まらないでいる
(株)リクルートキャリア 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2013年10月30日
田中悠平さん |
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国内外3つのホテルにて、レストランスタッフや客室清掃スタッフを経験。海外のホテルから帰国後、興味を持っていた介護業界に転身するも、半年で退職。漠然と、自分の武器である英語を活かした仕事を探したいと考えているが、方向性が定まらないでいる。 | |
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学校卒業後、国内のホテル2社、オーストラリアのホテル1社で働いてきました。昨年帰国したのですが、当時ホテルの求人があまりなく、周囲に「気配りができるから介護業界が向いているのでは?」と勧められたこともありホームヘルパー2級の資格を取得。今年初めに介護施設運営会社に入社しました。でも、目の前の仕事に手いっぱいになってしまい、体まで壊してしまって…。やむなく半年で退職しました。今度は、得意の英語力を活かした仕事に就こうと考え、活動していますが、なかなか内定に至りません。
どんな求人に応募しているのですか?
進学塾の講師を中心に、航空会社やカウンセリング会社などに応募しています。ただ、本当にその仕事がしたいのかと言われると、わからなくて…。このあたりの迷いが、面接で伝わってしまっているのかもしれません。なかなか決まらないので、最近ではホテル業界にもいくつか応募しています。ブランク期間を増やしたくなくて。でも、ホテルには「なぜ介護業界に転身したの?そしてなぜ介護業界から離れるの?」と聞かれることが多くて…。体調を崩したのが退職の原因なので、なかなかうまく説明しにくいんです。
なるほど。ホテルにも応募しているのですね。…そもそも、なぜホテル業界は第一志望業界から外れてしまったのですか?英語力も活かせるだろうし、何より3社で経験を積んだのですから最も力が発揮できる場所だと思うのですが。
上司のパワハラや同僚の悪口など、人間関係が悪いホテルを経験したことがあって、国内のホテルに勤めても、またあのような辛い環境で働くことになってしまうのではないかと思ってしまって…。また、ホテル時代はフロント業務を目指していたのですが、なかなかレストランスタッフ、客室清掃係からステップアップできなかったというのも理由の一つです。接客業自体は大好きなのですが…。
そもそも、ホテルを就職先に選んだ理由は?
大学時代にワーキングホリデーでオーストラリアに渡ったのですが、そのときにたまたま知り合った現地ホテルに勤める日本人が、とても人間的に素晴らしくて。仕事に対する姿勢や、知識、ホスピタリティ、言葉遣いや立ち居振る舞いなど、私が憧れていた「大人」の姿そのものでした。彼のような大人になりたくて、「ホテルに入れば思いが叶うのではないか」と思ったんです。
もしその思いに今もブレがないのであれば、やはりホテルを軸に考えたほうがいいのではないかな。ほかにやりたい仕事があるなら別ですが、ピンと来ていないのであればなおさら、ホテルに戻ることをお勧めしたいですね。
でも…先日の面接では、「一度介護業界に転身したのに、なぜまた戻ってくるのか」と言われてしまいました。介護業界への転身が、今の転職活動での最大のネックになっていると自覚しているので、いい切り返し方がわかりません。
そうですか?僕は、介護業界を経験したのは、田中さんにとって最大の武器になると捉えていますよ。
本当ですか!?
半年の勤務経験とはいえ、現場で高齢者にしっかり向き合い、ご支援してきたのですよね?高齢者の生活パターンを肌で感じつつ、ちょっとした変化も見逃さない観察眼を身につけたはずです。高齢者の気持ちを理解できる場面もあったのでは?
はい。高齢者のお世話自体は、とてもやりがいがありました。皆さん私のことを子どもや孫のようにかわいがってくださいました。認知症が進んでいるのに、私の名前だけは覚えてくださった方がいて、「田中さん、ありがとう」と言われたときは嬉しくて涙が出ました。でも、目の前の仕事量の多さにいっぱいいっぱいになってしまい、なかなかお一人お一人に心を配ることができなくて…。私が介護業界で目指したかったものと、現実とのギャップが大きすぎて、心が折れてしまったんです。
そこまでみっちり、高齢者とかかわってきた経験は、田中さんの最大のアピールポイントですよ。高齢化社会の進行により、これからはどの業界においてもシニア対応が急務になってきます。ホテルに来るお客様に占める高齢者の割合も、今後さらに上昇するでしょう。そんなお客様に対して、介護業界で培った知識とホスピタリティを発揮できる。そうアピールされたらどうでしょう?ましてや、東京オリンピック開催で、海外からのお客様も増加します。田中さんのご経験ならば、海外のお客様はもちろん、「海外からいらっしゃるご高齢の方」のケアもできますよね?
言われてみれば…確かにそういうアピールができますね…。
介護業界に転身したこと、そしてまた戻ってくることについても、先ほどうかがったお話を考えると筋が通ります。介護の仕事って、すごくホスピタリティが必要な仕事ですよね。「ホスピタリティにあふれ、言葉遣いや立ち居振る舞いも完璧な“大人”」を目指す中で、「介護業界を経験すれば、ホスピタリティがさらに磨ける」と考えたのでは?私ならばこのように話すと思います。…思いを持って介護業界に転身したものの、道半ばで挫折してしまった。ただ、高齢者の気持ちをおもんばかる努力を続け、ホスピタリティを磨くことはできた。この貴重な経験は、絶対にホテル業界でこそ活かせると思っています…。これぐらい言い切ってしまいますね。
なるほど…確かに「介護業界ならば経験が活かせるし、さらに磨ける」と思ったのは事実です。こういう伝え方ができるのですね…。
要は「思いの整理の仕方」です。今お話ししたのは、私が考えた「内定のためのテクニック」ではなく、田中さんからうかがった思いを整理しただけですよ。また、過去の勤務先に人間関係が悪かったところがあったせいで、ホテル業界への復帰に躊躇されていたようですが、それは業界全体のことではなく、個社の話です。今度はそういうホテルを選ばなければいい話。4社も経験して選択眼も鍛えられたでしょうし、ホテル時代の仲間にヒアリングしてみるなど、事前に見極める方法はあるはずです。
おっしゃる通り、過去に少しとらわれすぎていたかもしれません。ホテルの仕事自体は好きだし、やりがいを感じていたので、もう一度自分の気持ちを整理してみます。
ホテル業界での豊富な経験、海外での接客経験と英語力、そして高齢者対応の経験。この3つが田中さんの強みです。応募書類の段階で、この3つを意識して整理し、自己PRとしてまとめてください。今までより書類通過率がグンと上がるはずだし、強みを話せるから面接でのやりとりもスムーズに進むと思いますよ。
わかりました!
介護業界で挫折したことで、完全に方向性を見失っていました。自分の志向や強みを客観的に見ていただいたことで、やっぱり自分にはホテルが向いているのだと腹落ちできました。教えていただいた強みを中心にまとめ、新たな気持ちで転職活動に挑戦したいです。(田中さん)
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- 伊藤理子
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