転職トップ > 転職成功ノウハウ > Dr.門野の転活悩み相談 > IT業界での豊富な営業経験を活かし同業転職を目指すが、面接で落ちる
(株)リクルート 門野友彦 1985年リクルート入社。企業内教育研修などの営業、企業向け組織人事コンサルティングを担当した後、リクナビNEXTの前身であるリクナビキャリアや、スカウトシステムの開発、運営に携わる。現在は、新たな人材マッチングサービスの企画・検討に注力。転職活動カウンセリング経験も豊富。 |
2011年8月10日
光井恭子さん |
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大学工学部卒業後、ネット系企業3社で営業技術職に関わったのち、外資系IT企業で8年間、大手ITソリューション企業で4年間、営業を担当。異動を機に今年2月で退職し、IT系営業職に応募しているが、書類は通るものの面接が突破できないでいる。 | |
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今年の2月まで、IT関連企業で営業を行っていました。既存顧客に新製品であるミドルウェア製品を提案して受注につなげ、販売代理店に受け継ぐ一方で、販売代理店に対する販売施策の提案やセミナーの実施、セールスプロモーションの企画実行などを担当してきました。それ以前は、外資系のITソリューション企業に8年間勤め、自社開発ソフトの日本市場導入を一人で担当してきました。営業として幅広い経験を積んできたという自負はありますし、営業成績も悪くないと思うのですが、なかなか一次面接から先に進めないんです。
応募状況はどんな感じですか?
今までに20社ほどに応募しましたが、8割がた面接に進んでいます。でもほとんど一次面接落ち。最終面接に進んだ企業が3社あるのですが、いずれも内定には至りませんでした。もう何が原因なのかわからなくて…。
書類通過率8割ですか!それはすごい確率ですね!確かに、応募書類を拝見すると、今までの経歴と実績、スキルが読みやすくまとめられていますね。どの会社も、光井さんの営業実績を高く評価され、ぜひ会いたいと思われたのでしょう。ただ、半年で20社というのは少ないですね。月10社を目安にすると、半年間で少なくとも50社は応募しておきたいところ。今からでも遅くありませんから、まずはできるだけ多くの企業にアプローチしましょう。…で、今までの面接では、どんな質問をされることが多かったですか?
営業経験が長いためか、「前のお客さんとは仲がいいの?うちに持って来られる?」と聞かれることがありますね。私は製品そのもののよさを的確にお伝えすることで営業成績を伸ばしてきたので、「顧客と仲良くなることで買ってもらう」みたいな営業の仕方はピンときません。この質問を受けるたびに、返答に困ってしまいます。あと、規模の小さい企業には「なぜうちみたいな小さな会社に応募するの?」などとも言われますね。決していい加減な気持ちで応募していないのですが、はなからそう思われている節があり、いくら志望動機を伝えても通じていないと感じることが多いです。また、「なぜ前職を辞めたのか」はどの会社にも聞かれますね。
退職理由は、どのように答えているのですか?
サポートサービス営業への異動を打診されたのが、退職の理由です。今までずっとソフトウェア製品の営業をしてきたし、サポートを売る営業とは売り方やルートが全く異なるので、新たな営業スキルをまた一から身につけなければなりません。今までの経験を中途半端にリセットしたくなかったので、退職して別のIT企業に転職して力を発揮したいと思ったんです。…辞めた当時はすぐに決まると思っていたのですが、こんなに時間がかかるとは思いませんでした。
うーん、なるほど…。今までのやりとりで感じたことを率直に申し上げると、光井さんの「思い」が全く伝わってこないですね。これが原因の一つなのではと思っています。書類からも、発言からも、光井さんが「何ができて、何が得意なのか」は十分すぎるぐらいに伝わるのですが、光井さんが「何をしたいのか」が伝わってこないんです。
思い、ですか…?
もう40歳を過ぎていますし、スキルアピールで十分だと思っていました。今さら「思い」を伝えるなんて青臭いし、企業にも必要とされていないと思っていたのですが…。
いえ、十分なスキルをお持ちの光井さんだからこそ、「思い」のアピールが必要なんです。十分な実績をお持ちだということは書類でわかりますが、光井さんがどの方向を向いているのかがわからないと、当社の目指す方向と合っているかどうか判断できず、マッチングが図れません。長く働いてもらえるイメージも湧きません。
正直に言うと、一番やりたいのは前職のようなスタイルの営業ではなく、2社前の外資系IT企業で手掛けていた、「新しいモノを売りだす仕組み作りから考え、それに沿って自らが拡販する」営業。新しい製品を日本に導入して、育てる仕事にとてもやりがいを感じていたんです。まだ世に広まっていない「価値」を、私の営業経験、プロモーション経験を活かして普及させたいという思いを持っています。
なるほど!それを面接で言うべきですよ!「異動で経験がリセットされるから」は退職のきっかけであって、本当の退職理由ではないですよね?新しい製品を世に広めるための仕組みを考え、自ら拡販に動く。こういう仕事がやりたいという思いがあるから、異動先の仕事はしっくりこず、前の会社を辞めるに至ったのではないですか。この「思い」があれば、今までの光井さんの経歴と退職理由に一本筋が通ります。そして、応募先も「新しい価値を世に拡販する仕事」を中心にしたほうがいい。「思い」がそのまま志望理由になりますし、そういう思いを持っていながら別の方向に進むのは、光井さんの本意ではないでしょう?
確かに、その通りです。
この「思い」は、応募書類にも書くべきですね。書類の冒頭にサマリーとして、今までの経験から、こういう仕事をしたいという思いに至ったという事実を、3〜4行程度にまとめておくといいでしょう。経歴に一本の軸ができますし、面接の場でも、その思いを前提に質問が飛んでくるようになるから、こちらの土俵に持ち込めます。今までの面接でされたような「しっくりこない質問」自体も、大幅に減るはずですよ。
応募書類でも面接でも、「やってきたこと」を伝えるのに一生懸命で、何がやりたいのかには全然触れてきませんでした。
書類に書くことで、書類通過率は今より下がる可能性はありますよ。やりたいことが明確に書かれていれば、それに合わないと感じる企業は面接に呼ばなくなるからです。ただ、つまりはマッチング度の高い企業から面接に呼ばれることになるから、結果的に光井さんの希望通りの環境と出会える可能性が高まりますよ。
なるほど…わかりました!さっそく書類につけ加えます。
光井さんは営業としての経験、スキルは申し分ないですし、話し方もハキハキとしていていかにも「できる人」という印象です。今までも、たくさんいる応募者の中で最後の「思い」の部分で競り負けてしまっただけだと思いますよ。思いの部分をスムーズに伝えられたら、面接の内容も変わり、光井さんの魅力がもっと伝わるはず。自信を持って、頑張ってください。
「この仕事がやりたい」という熱い思いがあるのに、それをうまくまとめられず、アピールもしてきませんでした。スキルを一生懸命アピールしているのになぜ受からないのかと落ち込んでいましたが、これからは自信を持って仕事への思いを伝えたいです。(光井さん)
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