平均は7.7万円！職種でギャップが出る残業代の実態

残業続きの毎日に積み重なる疲労は、仕事の達成感だけでは償われない。やはり、それ相応の残業代が支払われてこそ、活力がわくというもの。では、自分の残業代は果たして、妥当なのか？　周りのエンジニアたちはいくらくらいもらっているのだろう。

（取材・文／須田忠博　総研スタッフ／宮みゆき）　作成日：03.11.12

　前回は、エンジニア1000人アンケート調査の結果から、残業代の支払い形態と満足度にスポットを当てた。そこには、サービス残業に不満を募らせるエンジニア像が鮮明に浮かび上がった。そこで今回は、同調査をもとに、残業代の金額そのものからエンジニアにとっての残業を考える。

職種でギャップが出る残業代の実額

■エンジニアの平均残業代は7.7万円！

	データ1　毎月の平均残業代

　最初に、調査結果のデータ１を見てほしい。エンジニアが毎月もらっている残業代の金額を示している。

　平均の残業代は7.7万円、標準偏差は5.2万円。毎月の平均残業時間数（38.4時間、標準偏差33.0時間）と残業時間に比べ、残業代のバラツキは少ないのは、おそらくサービス残業となっている割合が多いからだろう。

■残業時間はこんなに違うのに！　そこで、データ2の「16万～20万円」と回答した人の毎月平均残業時間を見ると、70時間以上が5割を超える。おそらくプライベートな時間はほとんどないに違いない。		■サービス残業に「不満」が圧倒的　さらに、データ3の毎月の平均残業代別の満足度を見てみると、当然のごとく、残業代が多くもらえるエンジニアは満足度が高く、サービス残業となっているだろうエンジニアの満足度は低い。

データ2　毎月の平均残業時間数 (※毎月平均残業手当が「16～20万円」のみ)		データ3　毎月の平均残業代と満足度

■職種で変わる！残業代格差

　また、ソフト・ネットワーク系技術者と電気・電子・機械系技術者の残業代を比較すると、ボリュームゾーンに偏りがある。前者は「8万～10万円」が最も多いのに対して、後者の中心は「3万～5万円」だ。両者の平均残業時間数に偏りはなく、同じような分布をしていることから考えわせると、ソフト・ネットワーク系技術者の基準月額が電気・電子・機械系技術者よりも高いためであり、さらに深夜労働に対する割り増し分が増幅させているためと推測される。同じ残業の１時間でも、ソフト・ネットワーク系技術者と電気・電子・機械系技術者の“値段”には格差があるわけだ。

　このことは一見、ソフト・ネットワーク系技術者の条件のよさを物語っているように受け取れる。しかし、本当にそうだろうか。

■残業代は給与のどのくらいを占めている？

	データ4　毎月の給与に占める残業代の割合

　データ4を見てもらいたい。残業代が毎月の給与に占める割合だ。全体平均は約2割。ところが、内訳を見ると、電気・電子・機械系技術者よりもソフト・ネットワーク系技術者のほうが、残業代の割合が多い傾向を明らかに示している。

■高年収ほど高い割合を占める残業代

　さらに同じ対象者を年収別に集計したものが、データ5。年収が多くなるにつれて、残業代が月給に占める割合も多くなる傾向が見てとれる。つまり、フルチャージで残業代をもらっている人は残業代で高い年収をキープしていることを意味する。

データ5　毎月の給与に占める残業代の割合（年収別）

　もちろん、残業はないに越したことはないし、残業代がなくとも高年収になるのが望ましい。だが、ここでもし残業代が付かなくなったらどうなるだろう。フルチャージから一定額の支払いへ社内の制度が変わったらという想定でもいい。残業代が給与に占める割合の高い人ほど困惑したり、生活支出にも影響が出てくる。

　残業代を抑制する方向へ世の給与システムが移行しつつある今、単に残業代が多いからと喜んではいられない。その意味では、電気・電子・機械系技術者よりも多く残業代をもらっているソフト・ネットワーク系技術者のほうが、危険性を持っているといえるのかもしれない。