成果主義で広がる！年収格差と転職意向の微妙な関係

「成果主義」による給与制度を導入する企業の増加により、エンジニアの年収増減の差は今後一層広がる可能性が高い。Ｔｅｃｈ総研編集部で行った給与調査でも、約30%が今後は「減る」と予測し、同じく約30%が今後は「増える」と考えている。では、その給与額に対する満足度と今後の収入予測は、エンジニアの転職意向にどう影響しているのだろうか。

（取材・文／須田忠博　総研スタッフ／宮みゆき）　作成日：03.12.10

7割のエンジニアが収入アップをあきらめている!?

　給与額に対して不満があり、今後も収入アップが望めなければ、すぐにでも転職を実現させたいと考える――。これが一般的な定理だが、エンジニアは現在の給与額や、今後の給与・賞与による収入予測をどう考えているのだろうか。

　Ｔｅｃｈ総研編集部が2003年9月に行ったエンジニア1000人の給与アンケートによれば、現在の給与額に「まあまあ満足」「非常に満足」と回答しているのは全体の約40%。今後の収入予測については、約30％が「やや減る」「かなり減る」と予想している。「変わらない」という現状維持を予測する40％を合わせると、約70％以上のエンジニアが、今後の収入増が見込めないと考えているようだ。その理由は、景況や、個人の実績や会社の業績で給与が決定される「成果主義」の導入など、さまざま考えられる。

データ1　不満度に反比例する転職意向度

「増えない給料」への不満は転職意向に比例するか

　では、「給与が増える」ことが見込めないエンジニアたちは、転職という選択肢を考えているのだろうか。そこで、給与満足度と今後の収入予測に、転職意向度をクロスしたデータ2を見てほしい。転職意向が現在の給与満足度の高まりに反比例して低下しているのは世の一般的な定理どおり。

　ところが視点を変えると、「2～3年後ぐらいに転職する意思がある」と答えた層が、給料満足度にまったく関係なく一定の割合で、かつ、おおむね3人に1人という割合の高さで存在している現象も見えてくる。これは一体、何を意味するのだろうか。

データ2　減る？増える？二極化する収入予測と転職意向

給与に不満・不安でも「今すぐ転職しない」理由

　現在の景況に加え、あいまいな評価制度、転職しても収入アップが確約されない状況。今すぐ転職しても給与額アップできるかどうかがわからないのであれば、慎重にタイミングを計るしかない。もしくは、確実に自分の市場価値が示せる業績、キャリアを積んでからという考えが反映されているのではないか。あるいは、会社の業績の先行きを2～3年は見定めてからと思っているエンジニアもいるだろう。

　一方、現在の給与額に満足しているエンジニアは、現在の仕事や担当プロジェクトの多忙さや、現状の満足さから、今すぐでなくとも2～3年後に次の会社へ移ろうと思っているのかもしれない。それぞれ両方の理由が当てはまることもあり得る。

　また、「かなり増える」と思う人に「今すぐ」の転職意向度が高いのは、現在の技術力の市場価値と、その売り時のタイミングをよく理解しているのだろう。

　以上のデータが示すとおり、転職の動機形成において、給料への満足度が連動する層と連動しない層とが混在している。いまのあなたは、どちらの層に属しているだろうか？