叱ってちょーだい

毎回著名人にあなたの悩みをぶつけていただく、このコーナー。熱く、愛を持ってお答えします。
悩
「予算の獲得が下手で困っています」

システムエンジニアとしてさまざまな企業で受託業務をこなしながら、スキルアップの勉強もしています。最近ではプロジェクトのマネージャーやリーダーを任されるようになりましたが、私の根回しやアピールが下手なせいか、ほかのプロジェクトチームより、いつも少ない予算しかもらえません。もっと予算を獲得していい成果を出せるようにしたいのですが、どのようにしたらよいのでしょう。(SE 30歳 男性)

腹を使え!
今週の叱り役

海洋冒険家
白石 康次郎さん

information
Spirit of yukoh(白石康次郎公式HP)
『海洋冒険家 白石康次郎の挑戦〜Over the wave〜 単独世界一周ヨットレース 5OCEANS』(DVD/ポニーキャニオン/5,040円税込)のお知らせなど、白石さんの最新情報はこちらから。
http://www.kojiro.jp/
1967年、神奈川県生まれ。神奈川県立三崎水産高等学校専攻科(機関)卒業後、第一回単独世界一周レース(現・アラウンドアローン)優勝者、故多田雄幸氏に弟子入り。93年、26歳で最年少単独無寄港世界一周を達成。その後も世界の過酷なヨットレースで数々の記録を出す。

期待を上回る仕事を積み重ねていこう

根回しやアピールがうまくできないから予算を取れないと思っているようだけど、それは違うな。あなたは、今の立場で予算を決めることはできないよね。ほかの人が決めるわけでしょ。だったら、不安がって悩んでもしょうがない。あなたのやるべきことがあるはずです。例えば、10万円をもらって10万円分の仕事をするのは当たり前。10万円の予算で12万〜13万円分の仕事をやって評価されて、次に13万円の予算をもらうことができたら、今度は15万〜16万円分の仕事をする。そうやって期待を上回る仕事をひとつずつ積み重ねながら、次につなげていくんです。

僕なんか、日々その繰り返しだよ。ヨットで世界を回るのが珍しいから、講演会や取材に呼ばれて「面白い」って喜ばれるの。でも、ただ面白い話をしただけじゃ、その場限りで終わり。自分に何ができるかを考え、期待以上のことを提供できて、初めて「またお願いしたい」って、次の仕事につながる。そこに戦略やマニュアルはないんだ。たとえマニュアル本にある方法を真似たって、人それぞれ持っている魅力は違うでしょ。自分にできること、やりたいことを全力で一生懸命伝えるしかない。人によく思われようとか、予算を多くもらおうとか、邪念が入ってはダメなんです。

スポンサーからレースに参戦するための大きな予算をいただく場合も同じで、最初からポンと何千万円ももらえることなんてないんです。自分が参戦したいレースのことを伝えると、例えば「じゃ、うちの商品の健康食品をあげるよ」から始まって、その後の僕の頑張りを見て、物から資金の援助に替わり、しだいに予算が増えていく。僕から「お金をください」とは絶対言いません。金額が決まるときは、細かいヨットの話を聞かれる訳ではなく、食事をしながら雑談の中で決まるんです。スポンサーは、雑談をしながら、僕のヨットレースに対する本気度、腹の中を見ているってことです。

予算を獲得することが問題ではない

僕の場合は、スポンサーになる側にとってのリスクが大きいんです。大きい金額を出したからといって、採算に合う訳でもない。僕がレース中に事故で死んでしまうかもしれない。だから、「絶対に世界一周してみせます」なんて調子のいいことは言えない。「嫌ならスポンサーになるのはやめてください」とはっきり言います。リスクを冒した上で、その先に大きな夢があるから、頑張る姿を日本中の子どもたちに見せるのが僕の仕事だ、と伝えるんです。

こんなこともあったな。あるスポンサー会社の社長に、レースが終わってあいさつに行ったら、「1000万円出すから、来年もう1年間スポンサー契約をしよう」って言うんです。6カ月間の過酷なレース直後で、もしかしたら次のレースはないかもしれない僕に対して。だから、お断りしたの。「何もしないのにいただけないから、そのお金は貯金してください。3年後のレースに出るので、そのとき取りに来ます」と言って。そうしたら、社長はその場で「1億円以上出そう」と。僕が目の前の1000万円を辞退したことで、3年後のレースを真剣に目指していると判断したんだろうね。別に僕はそうなるシナリオを計算していたんじゃない。本心を伝えただけで、結果としてそうなったということなんです。

つまり、予算獲得が問題じゃなく、あなたが今のプロジェクトに腹を据えて取り組む気持ちがあるかなんです。僕の場合は手作りの船からスタートして、世界一周に2回失敗した後、スポンサー獲得に8年かかり、クラス2の一番安い中古船でなんとか完走した。その4年後にやっとクラス1の中古を買えたけど、レースを目指してから22年もかかって、未だに新艇じゃないんだからね。潤沢な予算があれば、誰だってやりたいことはできます。予算が少ない中で、どこまで本気でやれるか。足りないのなら、どこをどう削るかを考える。そうやって、少ない予算でこれだけやりきったってところを見せてやろうよ。

EDIT・WRITING
羽塚順子
DESIGN
マグスター
PHOTO
刑部友康

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