同じ業種から有能な人材が転職してきてくれたので、思い切ってすぐにフロアマネージャーに抜擢しました。以来、店の営業成績は上がってきたのですが、昔からいる部下たちの間では、「新人のくせに」「あいつは生意気だ」という陰口が多く、あまり人望を集めていないようです。この頃店のムードがあまり良くありません。このまま営業成績を取るか、店の雰囲気をとるか。長期的にどちらが良いか、悩んでいます。（店舗経営・36歳）

人望がある人は何の仕事でもできる

営業成績が上がらなきゃ経営は成り立たないでしょ。店舗経営って、売り上げが上がってなんぼの世界。店の雰囲気だけでやっていけるの？　やっていけないよね。

この「新人のくせに」って言ってるヤツが扇動してるんじゃないかな（笑）。僕だったら、こいつに、まず他の店を任せてみるとか、経理だとか、今までと違う仕事をさせて様子をみる。仕事がデキる人って、何をやらせてもそこそこできるはずなんだよ。人望があるから。だから、人もお客も動くんだよね。人望がない人は、何の仕事をやらせてもうまくいかないの。

そうしていくうち、本人が自分で気づくか、辞めていくかのどちらかでしょう。理由を聞かれたら、「あなたがいた時もいない時も、あの新人マネージャーが入ってから売り上げが上がってる。どうしてなのか、考えてみてくれる？」って話してみればいい。それでもまだ、陰口言っていじめるようだったらクビにする。でないと、あなたも店も潰れちゃうよ。クビにする時は「すいません、辞めてください」ってお願いするんじゃない。「あなたクビです」と、みんなの前でハッキリ言う。

うちでも、有能なタレントやマネージャーをクビにすることがある。特にタレントは、本人のやる気があっても協調性がないと無理。それを頭でわかっていながら、できない子がいるんだよね。「現場で俺も見てたけど、こうだったよね」「何でダメなのかわかる？」「何か他に方法はないか考えてごらん」って、何度も何度も繰り返し話す。それでもダメな時はダメなんだ。「どうして辞めさせたの？」って驚かれるけど、いずれどこかでボロが出てくる。それからじゃ、遅いんです。

人を使うことは気持ちの扱いが肝心

僕も人を使う上ではいろいろ失敗をしてる。あなたと同じように「あいつは良くない」ってマネージャー仲間の３人が言ったことを鵜呑みにしたりね。それは本当なのか、僕自身が確かめないと、その３人がラクをしようとして結託してる可能性だってあるわけだよ。

だから、問題の原因をあなた自身が確かめてみる必要があるね。恐らく、あなたがいる時の店の雰囲気は、いいはずだよ。スタッフがあなたを持ち上げてくれるから。だから、あなたがいない時の店の様子を、誰か偵察に行かせてごらん。新人の彼が人望を集めてるのかいないのか、きちんと確かめればいいじゃない。そうしたら結論が出せるでしょ。僕だって、タレントの様子はマネージャーではなく、ヘアメイクやスタイリスト、編集者なんかの現場スタッフから聞くよ。

それから、こんな風に新人を昇進させたら、古くからいてキャリアのある人たちが面白く思わないのはあたりまえ。まず、以前からいる人たちの気持ちをケアすることから入らなきゃだめなんだ。思いきって抜擢したことは、あなたに人を見る才能がある。でも、人を使うということは、嫉妬心とか向上心とか、そういった人の気持ちの問題を扱うことが８割を占めるんだよね。まずはそこを尊重しましょうよ。

つまり、能力も人情も両方大事なんです。能力があってこその人情でしょう。人情だけで食って行けたら、世の中こんな幸せなことはないよ。どちらか一方だけはあり得ない。友達なら人情だけでいいけど、経営を成り立たせることを考えたら、どちらも必要。

「なんとかしてここに置いてあげたい」って気持ちは人情として当然あるよね。でも、その人を雇っていて、人間関係も経営も悪くなるなら、他にもたくさんの従業員がいるんだから、その人たちのために決断だって必要なんだ。それも人情なんです。