私の勤務する会社では、上からの命令で経費水増しなどの操作が当然のように行われています。「バレなければかまわない」という体質にほとほと嫌気がさし、胸を張ってできる仕事をしたいと転職も考えていますが、私の年齢では厳しいのが現状。かといって、内部告発などすれば、職を失うだけでなく、私の妻子まで後ろ指をさされかねません。生活のためには、会社と心中覚悟で我慢するしかないのでしょうか。（経理　36歳　男性）

あなたにとって素晴らしいチャンスです

我慢する必要はありません。あなたにとって素晴らしいチャンスです。その理由のひとつには、今、さまざまな企業で内部告発が起こっていますから、コーポレートガバナンスという意味でも世間が企業に対して透明性を求めていることがあります。なので、あなたは会社に対して「このまま不正を続ければ、会社にとってリスクが大きい」ということを、良心に従って合理的に説明すればいいのです。

もうひとつ、その説明をする過程で、会社を納得させるためにはロジカルな論理を組み立てなくてはなりませんから、ロジカル思考やプレゼンテーション技術を学ぶ、とてもいいチャンスにもなる。さらに、あなたの専門領域の見解を会社に伝えることだってできるんです。それが会社にきちんと伝わり、あなたの統率力が認められれば、将来的にポジションだって上がるでしょう。そんな貴重な機会をあきらめてしまうのは、非常に大きな損失だと思います。何も、一気に内部告発という手段をとらなくてもいいのだし、ましてや心中して会社もあなたもダメになる必要なんて全くないのです。

実は、あなたの言っている「会社と心中覚悟」とは、成長しない自分と心中を覚悟するという意味なんですよ。それは、あなただけに限らず、会社に対してあきらめている人というのは、自分の才能に対してもあきらめてしまっているからなんですね。仕事に対して次のレベルに成長すべき時期にきているのに、一歩を踏み出さずにそのままでいると、自分と同じようにそのままでいようとする会社の体質が目についてしょうがないんです。このままアクションを起こさず泣き寝入りしたら、能力を上げない自分と心中することになってしまいますよ。

やるべきことをやってから辞めましょう

会社から見れば、会社を信じていない社員はわかるもの。会社に不満を抱えて飲み屋で文句を言いながら、その会社にずっと留まっている社員なんて、中小企業ではほとんど見たことがありません。会社と心中する前に切られてしまうんです。でも、どうせ文句を言うのなら正面からロジカルに提案したほうがいいし、それで切られても私はいいと思うんです。やるべきことをやってから辞める。それができた人というのは、必ずやいい転職先を見つけられるものです。私の会社の経理担当もあなたと同じ、「前職の社長の不正が許せなかった」という人物ですよ。捨てる神あれば、拾う神ありです。

私自身もリストラ経験者です。リストラされるときというのは、やはり会社に不満があるからなんですよね。でも、リストラされても会社に恨みを持たず、そこで気持ちを切り替えることさえできれば、次の仕事が決まることを私は経験しています。要するに、手の中にいっぱい握ったままでは新しいものをつかめないんですね。だから、感謝しながら手放す。感謝するためには、正々堂々と会社の利益のためにやるべきことをやっておけばいいんです。

あなたの場合は、会社のリスクを考えた上での「提言」をするということですよね。内部告発をするつもりではないんですから、きちんと胸を張って提言をして、それでもしクビを切られてしまったとしても、必ず次の仕事はすごくいいものになるはずです。年齢を気にしているようですが、関係ありません。自信を持ってください。