「うまくやろう」が失敗のもと
どうして「うまくやろう」なんて思うのかしら。そこがそもそもの失敗なんじゃないかと思うわ。
私は女優を長く続けているけれど、舞台で演じるとき「うまく演じよう」なんて考えたことはないわよ。せっかく与えられた舞台なんだから、そのときそのときを一生懸命演じることしか、考えていません。
「うまくやろう」として作った自分は、本当の自分の姿ではないでしょう? ありのままの姿が、たとえ多少つっかえたとしても、ヘンにカッコ付けた人よりも、ずっとチャーミング。一生懸命話せば、相手に思いは伝わるはずなんです。
今のままでは誰の気持ちもつかめない
あなたには、まだまだ一生懸命さが足りないんだと思う。だから、プレゼンテーションが通らない。大事なプレゼンテーションなのに、暗記しようともしていないじゃない。
女優が台本を手にしたら、まず台詞を暗記。そして何度も何度も繰り返し口にして練習する。そのうちに台詞が自分のものになってきて、台詞の中の大事な言葉、人の琴線にふれる言葉がわかってくる。そこまでくれば、どの言葉にどんな思いを込めて言えばいいか、わかるようになるもの。
プレゼンテーションだって同じこと。カンペを見て話すなんて、甘い。努力がまだまだ足りないのよ。まずは暗記することが第一のステップ。それができたら、次は何度も何度も練習してみる。それによって、どの言葉に力を込めて話せば、自分の思いが伝わるのか、見えてくるはず。
広告代理店というのは、人の心をつかまえる仕事でしょう?今のまま、何もしなかったら、誰の心もつかめないわよ。
私は、今回の舞台で「待つ女性」という、私自身とは180度性格が違う女性を演じているんだけど、この女性の気持ちがわからなかった。だから何度も台詞を口にして、自分のものにしようとしたわ。どんな仕事でも、人の前には出さない、努力する時間が必要なのよ。