プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。 誰かに教えてもらえると思っているうちは、いいプレイはできません セルジオ越後さん(サッカー解説者)
せるじお・えちご●1945年ブラジル生まれ。18歳でサンパウロの名門サッカークラブ「コリンチャンス」とプロ契約し、右ウイングとして活躍。1972年に来日し、藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)でプレイした。青少年のサッカー指導をライフワークとし、「さわやかサッカー教室」の指導員としてこれまで1000回以上の教室を開催した。サッカー解説者としてもその辛口な評と語り口にファンが多い。
2013年1月9日

辛口サッカー評論家としても
多くのファンに愛されるセルジオ越後氏。
彼の目には、仕事に悩む若者は
どのように映っているのだろうか。

人は勝って楽しくなる、褒められて楽しくなる

若い人は仕事が楽しくないのね。世の中に出たら悩むのね。なんでだと思う? オートメーションのせいで人間社会が崩れた。かわりに情報社会になったの。パソコンをクリックしたら欲しいものがなんでも手に入る。人と付き合って揉まれなくていい。人と競争しなくていい。いつでも一人で好きなことをしていられる。そうやって育てられたから、世の中に出た時どうしたらいいのかわからないの。ペットとして育てられた動物をジャングルに放したら何もできないでしょ。それと同じね。

悩んだときどうするかといったら、自分で考えないのね。やっぱりパソコン、携帯に頼ってしまう。でもみんな気がついてないの。情報社会って"引き分け"が精いっぱい。だって、あなたにも僕にもパソコンは平等に情報をくれる。パソコンの前にいたら人に差をつけられない。差がつかなかったら楽しくないよ。人は勝って楽しくなる、褒められて楽しくなるんだから。パソコンだけに頼っていたら、どこかで行き詰まるの。競争がないから、楽しくないし、成長しないの。

動いて動いて、傷だらけになりながら考える

悩んで人に聞くというのもおかしいよ。人に聞く前に行動を起こせ。子どもじゃないんだから。いちいち「僕はどうすればいいですか」なんてやっているから、一人前になれないのです。この記事を読んでいる人も「セルジオの次に出てくる人は何を教えてくれるかな」と、待ってるのね。そんなことしてるうちに、30、40歳になっちゃってるの。

とにかく待ってちゃだめ。僕は24歳でブラジルのプロサッカーを引退して、鉄鋼会社に就職しました。生きていかなきゃいけないんだから、どうしようかなんて迷う余裕はなかった。完全に気持ちを切り替えて、またサッカーに関わりたいとも思ってなかったの。仕事で成果を出したら偉くなるかもしれないし、ヘッドハンティングされるかもしれないとは思っていたけれどね。「どの仕事がいいかな」なんて立ち止まって考えているような人は、僕だったら雇わないな。何でもやりながら考えなくちゃ。

たまたま不動産会社のサッカー部に誘ってもらえて、日本にきました。それからもう40年です。でもこれが一生の仕事だと決めたわけじゃないのね。それはすごく狭い考え方。そうすると、人生が窮屈になってイヤイヤ生きるようになる。決めつける必要はないのね。

ただ、1つのものを一生懸命やるとまわりが道を開いてくれます。僕にとって日本はアウェイだから、生きていくために2倍、3倍頑張ったよ。そうしたら、この人は面白い、一緒に仕事をしたいという人が現れました。向こうから仕事が来るようになったんです。それは最初に自分で行動したからよ。「僕はこれからどうしよう」なんて迷っていたら誰も仕事はくれなかった。とっくにブラジル帰っていたと思います。

自分からどんどんぶつかっていくといいの。そうやって傷だらけになるから本気で考えられるの。指導員をやっていた「さわやかサッカー教室」でも、僕は子どもに教えないのね。「教えて」って子どもが言ってきたら、「ヤダ」って僕は言うの。僕が教えたら「次また何か教えてくれるだろう」という頭になる。教えられるのを待つ子になる。僕が教えなければ、子どもは必死で技を研究するでしょ。


若い人は、もっと追い込まれた方がいい、
とセルジオ越後氏は語る。
サッカーでも上に行く人は、
自分で自分を追い込んで、
自ら考えて行動していると言う

追い込まれたら誰だって生まれ変わる

「悩んでいる」なんて言っていられるのは困ってない人たちね。本当に追い詰められたら動物って動くの。お腹空いたら襲うの。それをしないのは、まだまだ余裕がある証拠。甘えん坊ね。でも、そういう人たちも追い詰められたら頑張るよ。だから、そうなりたくないなら、自分で追いこんでいかなくちゃ。

例えば、プロのサッカー選手を目指していた子の親が、ある日亡くなってしまったとします。そしたらプロをあきらめて必死で勉強する、必死で仕事をするでしょう。そしたら上に行けるわけ。誰かに助けてもらえる、教えてもらえると思っている人は、ずっと下にいるしかないんだよ。

もちろん、みんなが上を目指すのがいい社会だとは思いません。いろいろな生き方があっていい。だから社会は美しいんだから。サッカーだってフィールドに出るのは22人だけど、スタンドには8万人ぐらい座っている。彼らがいるからプロスポーツが成り立つんです。全員が選手を目指すのはおかしいし、選手だけが成功者扱いされるのもおかしい。いろんな立場の人がいる社会で、あなた自身は、本当はどのポジションにいるのがいいんだろう。それを考えることが大事ね。

追い詰められて、本当に会社がイヤなら辞めればいいよ。1年目ですぐやめてもいい。生活できなくなったら気持ちが追い込まれて、自分はどの仕事が向いているんだろうって必死で考えるから。それがわからないと、どの会社にいっても務まらないよね。そんな状況になっても「私はどうしたらいいでしょう……」なんて聞いてくる子のことは、もう知らないよ(笑)。何でも自分で考えないと。自分の人生は自分で切り開いていくしかないんだから。それが生きているってことなの。

今必要なのは「携帯電話の電源を切る」こと

実際に体験しないとわからないことがたくさんあるの。人を見るときだって、肩書きばっかり気にしていたらわからないことがある。僕なんか、肩書きや会社名で人を見ないよ。だって、ちょっと話すだけで「この人は仕事ができるな」ってわかるもん。それだけたくさんの人と話してきたから。いつも肩書きや会社名で判断しないで人と接することをしていれば、経験でちゃんとわかるようになる。そうしたら、こわいものはないよ。

食事だって一緒。僕は行列ができているお店には惑わされないね、大嫌いね(笑)。みんな、行列ができている、値段が高いとかで「美味しい」と判断しちゃう。でも、味の好みは人それぞれみんな違うんだから。いろんなお店に自分で行ってみて、自分の舌で確かめて、味を覚えて、それでやっと「美味しい」と言えるの。

要は、効率のよいことばかりを考えていると成長しないのね。だから僕はファーストフードも好きじゃない。ちゃんと店員さんがテーブルまで注文をとりにきてくれて、そこでおしゃべりをしたり、ジョークを言ったりするから、いい人、悪い人、いろんなことを覚えていくのよ。ガイドさんがいる旅行も効率良いけど大嫌いね。自分が面白いと思ったところで時間をとりたいのに、関係なく連れ回されるから。あれを旅行に行ったとはいわないよ。

なんでも自分で体験してみるというのは、面倒くさいことです。ハプニングもあれば失敗もある。でも、だからいいの。それだから勉強ができて、自分を成長させることができる。自分だけの経験が積めるから、ほかの人と差をつけられる。競争ができて、勝ち負けがついて、楽しくなるの。だから、海外にいったら、下手な英語でいいから現地の人とおしゃべりをするといい。ウェイターさんでもタクシーの運転手さんでもいい。ちょっとでも話をすることが大切なの。そしたら「こんな英語でも何とか通じるんだ!」とか、得られるものが必ずある。

そういう面倒を若い人にはもっと体験してほしい。僕は海外を旅させたいね。片道だけお金を出してあげるけど、帰りの分は自分で稼いでこいと言いたい。そしたらいやでも頑張るでしょう。それから携帯電話の電源を切る。いまは携帯電話があったらみんな生きていける世の中だけど、それが使えなくなったときパニックを起こしますよね。それでは、いつまでも生きる力は身に付かない。大震災の後、みんな積極的に防災訓練をするようになったでしょ。そのときに1日携帯電話を使わない生活をしてみるといい。そうしたら1年後、みんなたくましくなってるはずよ。

WRITING
東雄介
EDIT
高嶋ちほ子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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