プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。 自分の意思でやっている。そんなふうに思えれば、どんなことでも乗り越えていける ISSAさん(「DA PUMP」ヴォーカル)
ISSA (イッサ)●沖縄県生まれ。17歳で上京後、同郷の3人の仲間とヒップホップ・ダンス・ヴォーカル・ユニット「DA PUMP」を結成、ヴォーカルを務める。1997年、m.c.A.Tのプロデュースにより、シングル「Feelin'Good-It's PARADISE」でデビュー。その後も「Rhapsody in Blue」「if…」など発表した曲が次々とヒットし、トップアーティストの仲間入りをする。日本ゴールドディスク大賞・ベスト・ニュー・アーテイスト・オブ・ザ・イヤー、日本レコード大賞優秀作品賞などさまざまな賞を受賞した。2008年からは、新メンバー7人が入り、新生「DA PUMP」 となった。
2012年9月12日

17歳で沖縄から上京し、
仲間と「DA PUMP」を結成。
類まれなダンスと歌で、デビューしてすぐに
スターダムに駆け上ったISSAさん。
その後、ヒット曲を連発するが、
どんな20代を過ごしていたのか。

お金もない、洋服もない。身一つで沖縄から上京

ダンスを始めたのは、中学校のころです。でもそのころは、ただ楽しくて踊っているだけで、それで食べていこうなんて考えもしませんでした。ダンスを職業にしたいと考えるようになったのは、高校生になってからのこと。当時、いろんなアルバイトをしていたんですが、さまざまな仕事に接するにしたがって、だんだんやりたいことが見えてきたというか、好きなダンスで食べていけたらという気持ちが、自分のなかでどんどん強くなっていきました。そんなとき、今の事務所の社長から東京で一緒にやってみないかと言われて、「もう、行くしかない」と。その後、17歳で沖縄から上京しました。

その時はまさに身一つ。事務所には所属していたものの、具体的にデビューの時期が決まっていたわけでもなく、お金もなければ、洋服もない状況。不安がなかったかというと、うーん、どうでしょうね、不安を感じる余裕がなかったというのが、正直なところだと思います。見るものすべてが新鮮で面白い一方、覚えなきゃならないこともたくさんありましたから。

上京してしばらくは、「DA PUMP」の初期メンバー4人で暮らしていたし、レッスン場や仕事先でもいつも4人一緒だったので、孤独感はなかったですね。お互い気を遣っての共同生活だったと思いますし、男同士、たまにケンカもしましたけど(笑)。でも、基本的にはすごく仲がよかったですし、何より「ダンスで自分たちを表現していこう」という思いが同じだったから、どんなことも全く苦にならなかったんだと思います。そんなことより、毎日ちゃんとした環境のなかでダンスのレッスンが受けられるっていうことが、とにかく嬉しかったですね。「ここまできたら、やるしかない」という感じで突き進んでいったんだと思います。

土臭い奴らと思われても、こだわりは譲れなかった

デビューしてからもその延長で、目の前にある「自分にできること」をひたすらやっていきました。デビュー前と大きく違ったのは、今まで自分を知らなかった人たちが、自分を知るようになったということ。応援してくれる人がいるとわかってからは、自分たちのためだけではなく、他人のために何ができるか、と考えるようになった。そのことはやっぱり、やりがいにつながるし、原動力の一つになっていたんだと思います。

ただ、売れる、売れないは、全然考えていなかったですね。売れることより、続けていくことのほうが大事だと思っていました。活動のベースとなっていたのは、自分たちのダンスを表現していきたい、ということですから。自分たちのダンスができるという喜びがあったからこそ、大変なことも乗り越えられたんだと思います。

そういう意味では、こだわりも多かったですね。例えば、デビュー曲から一貫して、振り付けを自分たちでしていたこともそうです。当時、そんなダンスグループは珍しかったと思うけど、ダンスに関する表現だけは、絶対自分たちでする、というのがオレら流の考えだったので、譲りたくなかった。周りからは土臭い奴らだと思われたかもしれませんが、これだけは貫き通したんです。

やっぱり、やらされているんじゃなくて、自分たちの意思でやっていると思えることって、すごく大事なんですよ。そういうものがあると、強いですね。ハードルが高いことでも、自分で決めたことだったら絶対やってやるって思えるし、何より楽しい。この考え方はいまだに変わっていませんね。そういうところが、自分を成長させてきたんじゃないかと思うので、今後ずっと大切にしていきたい部分です。


現在「DA PUMP」は8人で構成されている。
実は、結成してから約10年経って
2人の仲間が抜けている。
2008年に新メンバーを7人入れ、
一時は9人で活動していたが、
2009年には初期メンバーの最後の一人が
脱退してしまう。

周りの優れた人の技術は、見て盗め

2008年に新しいメンバーを7人入れたことは、「DA PUMP」の活動をするうえで大きな転機だったと思います。でも、2009年に方向性の違いでKENが脱退して、初期メンバーが自分しかいなくなってしまった。このときは、このまま「DA PUMP」として続けていいのか、ずいぶん悩みましたね。やはり「DA PUMP」は、初期メンバー4人のイメージが強いでしょうし、4人でやってきた歴史もある。それを見てきてくれた人たちの気持ちを考えると、新メンバーを入れた8人体制でやるにしても違う名前にしたほうがいいんじゃないかと、そう思ったんです。

そんなときに事務所の社長から言われました。「お前がいる限り、『DA PUMP』じゃないか」って。ずっと自分を見てきてくれた人からこう言われて、すごくありがたかったですね。この言葉があって、「オレはこの先どうなろうと、たとえ一人になろうと『DA PUMPの ISSAです』って、名乗り続けていいんだな」と思えるようになりました。

今の8人のメンバーのなかには、10歳年下もいるんですけど、やりづらいと思ったことはないですね。ダンスの技術はとても優れているメンバーなので、安心してるし、信頼もしています。うまく伝わってないなと思うことを、口頭で言うだけで、ああだ、こうだと教えることはしません。

メンバーには、「見て盗め」って言っています。自分もそうしてきたし、それが一番勉強になりますから。特にコンサートではそうですよね。いつも時間がなくて大変だったんですけど、自分たちのこだわりに共感して協力してくれる先輩ダンサーやミュージシャンの方たちがいて、ずいぶん助けられました。みんな、ジャンルは違っていても、それぞれにエキスパートで優れた人たちでしたから、尊敬していたし安心して任せられた。その人たちから、いろんなことを勉強させてもらいました。

だから、今いるメンバーもそうやって成長していってほしいんです。周りにいるすごい人たちのいいところをどんどん吸収して自分のものにしていく。好きなことだったら、自分で動くのも苦ではないですよね。その積み重ねで自分の形みたいなものができていくのかなと、思っています。

エキスパートの人と一緒に仕事をするのって、すごく大事なことだと思います。今度、宮本亜門さん演出の『ウィズ〜オズの魔法使い〜』という舞台で、かかし役をやらせてもらうんですけど、陣内孝則さん、森公美子さん、瀬戸カトリーヌさんなど、接してみてプロフェッショナルはやっぱりすごいなと感じます。最初、話が来たときには「なんで、オレに?」って正直、戸惑ったんですけど、やっぱり思い切って参加してよかったと、今では思っています。出演者の方と稽古を重ねる中で、いろんな話をしたんです。何かを極めた人って、やっぱり面白いんですよ。たくさんの苦労を乗り越えてきたから、生き方や仕事に対する考え方が深い。本当に勉強になりました。

今までも人に助けられてきた部分は大きかったけど、やっぱり一人じゃ、どんなことも成し遂げられないし、いいものは作れないと思うんです。人の力が必要ですよね。ほかの人の意見に、自分のスパイスを入れて、化学反応を起こさせる。個性と個性がぶつかり合って初めて、いいものができるんだと思います。

知らない世界に入っていくことって、すごく大切だと思います。とても勇気がいることですけどね。最初は戸惑うかもしれないけど、でも思い切ったほうがいい。オレはものすごい人見知りなので、とっても大変なんですけど(笑)。それでも、やっぱり飛び込んでいくべきだと思います。相手を尊敬する心が伝われば、向こうも心を開いてくれます。時間がかかっても、こっちから話しかけていけば、いずれは打ち解けてくれます。

そうやっていろんな経験を積んでいけば、そのうち、自分に何が向いているか、本当は何がしたいかっていうことも見えてくる。経験ってすごく重要なんですよね。無駄なことなんか何もない。やっぱり、そう思うんですよ。

information
『ウィズ〜オズの魔法使い』

トニー賞7部門を受賞した人気のミュージカルが、宮本亜門演出でパワフルによみがえる。このプロジェクトは、演出の宮本亜門さんの「日本を元気にしよう」というひと言で始まったという。主役のドロシー役は、オーディションでこの役をつかんだAKB48の増田有華さん。ISSAさんは孤独なかかし役で、2回目の舞台に挑戦する。出演はほかに良知真次さん、エハラマサヒロさん、森久美子さん、瀬戸カトリーヌさん、陣内孝則さんなど豪華キャストがそろう。観ると元気になれる作品だけに、気分の落ち込みやすい秋にぴったり。仕事に疲れたら、気分転換に足を運んでみよう。

原作/ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』 翻訳・演出/宮本亜門 訳詞/森雪之承 出演/増田有華(AKB48)、ISSA(DA PUMP) 良知真次、エハラマサヒロ、森公美子、小柳ゆき、ジョンテ モーニング、瀬戸カトリーヌ、吉田メタル、陣内孝則 公式HP http://www.parco-play.com 日程/[横浜公演]2012年9月28日(金)〜9月30日(日) KAAT神奈川芸術劇場 ホール [大阪公演]2012年10月6日(土)〜10月7日(日)梅田芸術劇場 メインホール [東京公演]2012年10月18日(木)〜10月28日(日)東京国際フォーラム ホールC [名古屋公演]2012年11月3日(土・祝)〜11月5日(月)中日劇場

WRITING / EDIT
高嶋ちほ子
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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