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リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

通勤片道「3時間」×週3日の働き方とは?長野と東京の2拠点生活からみえてきた本当に大切なもの | 津田賀央

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自然豊かな町に住み地域への貢献活動をしつつ、東京都心にある大企業へ勤務。「一体どうやって実現したの?」と尋ねたくなる、夢のようなワークスタイルを実現しているRoute Design合同会社代表の津田賀央さん。

津田さんは長野県八ヶ岳のふもとにある富士見町に自宅を持ち、週3日は東京へ通う生活。残りの4日は富士見町にて企業のテレワークや移住を促進する「富士見町テレワークタウン計画」の企画・実施をおこなっています。そのプロジェクトの一貫であるシェアオフィスの「富士見 森のオフィス」は、開設後およそ1年で100名近い会員数にまで成長しました。

富士見町への移住理由や2つの拠点をもった働き方のコツ、そしてご自身が考える将来の働き方についてお伺いしました。

津田 賀央(つだ よしお)

2001年より広告代理店にてデジタルコミュニケーション領域におけるプランナーとして、デジタルプロモーション企画やサービスに携わる。 その後2011年末より大手メーカーへ転職し、現在に至る。 20155月より長野県の富士見町へ移住し、富士見町との共同プロジェクトの企画設計や実行を機にRoute Design合同会社を設立。

リタイア後の生活ではなく、仕事の拠点としての地方在住

——まずは、津田さんが2拠点生活に踏み切ったきっかけからお伺いできますか?

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もともと「都心と地方を行き来しながら仕事をする」という生活スタイルに興味がありました。それが現実味を帯びてきたのは、現在勤めているメーカーに転職してから。代理店勤務の頃は直接クライアントと会う必要がありましたが、転職後は海外支社とのコミュニケーションのため、テレコン(電話会議)やビデコン(ビデオ会議)が日常的におこなわれていたんです。「こういうスタイルでも、問題なく仕事ができる」と実感できた点が大きな転換でした。

私も妻も神奈川県出身で長野県には縁もゆかりもないのですが、もともと趣味で月に一度は山へ行っていました。なかでも富士見町に引っ越した理由は、「人」が良いなと思ったためですね。特に、私と同年代で富士見町に住む人たちとの出会いがとても刺激になりました。彼らは「リタイア後のセカンドライフ」ではなく、仕事の拠点として富士見町に住んでいる。私も彼らと同じように暮らしてみたいと思ったのです。

ただ、当初は34年先を見据えて「いつか、ここに住めたらいいな」と考えていた程度でした。しかしある日、富士見町のホームページに掲載されていた「富士見町テレワークタウン・ホームオフィス計画」の概要を見つけ、何か手伝えないかとメールを送ったんです。すると1週間後に富士見町役場の方が東京まで来てくれ、さらに1週間後には私が富士見町へ伺うというスピード感で話が進みました。

「東京で週4日働いて、富士見町とは1日程度テレビ会議で関わる程度だろう」と想定していたのですが、トントン拍子に富士見町での仕事も住む場所も決まり、1年以内に引っ越しが決まりました。しかし東京での仕事をやめたかったわけではないので上司を説得したところ、私の思いを理解してくれ、2拠点ワークが始まりました。

 

——富士見町での地域の仕事と東京でのメーカー勤務、ふたつの異なる仕事をどのように両立させているのですか?

10年以上の代理店勤務経験から、私にとってマルチタスクや頭の切り替えは苦ではありません。むしろ、常にさまざまな刺激がないと仕事を楽しめないタイプなんです。また富士見町と東京の仕事は、作業は違うかもしれませんが「明確なビジョンを持って、サービスの企画やデザインを考える」という根本は一緒。私にとっては得意分野であり、一番好きな仕事でもありますね。

ただ実際には2倍働いていることになるので、今のところほとんど休みがなく……山に住んでいますがまったくスローライフではないですね(笑)。しかし富士見町の新鮮な空気や山の風景、四季の移ろいに触れると「ここに住んでよかったな」と思います。

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プロジェクトをベースに人とのつながりを作る「富士見 森のオフィス」 

——「富士見町テレワークタウン・ホームオフィス計画」の一環である、シェアオフィス「富士見 森のオフィス」について伺います。どんな方が集まっているのですか?

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▲木造施設をリノベーションし、高速ネット回線やビデオ会議システムなどを備えた複合型ビジネス交流施設「富士見 森のオフィス」(画像提供:津田賀央)

 

週に何度も使う「常連」の方が18人程度、ビジター会員も含めると会員数は100人を超えました。個室型オフィスは8室中7室が埋まっています。東京の会社が6社、長野の会社が1社ですね。利用者の年齢は、20代から60代以上まで。企業から派遣されている人や、長野に移住してきた人、個人事業主として東京と長野を行き来している人、一度リタイアして再就職した人まで、立場もさまざまです。業種としては、プログラマーやデザイナー、衛生管理士などのほか、意外と映像制作系の企業も多いですね。

私としては、いまは「仕事を作り出すこと」に最もチカラを入れています。「森のオフィス」を単に「作業ができる場所」と位置づけては、都心にあるコワーキングスペースと変わりません。「森のオフィスに行くと仕事が創れる、お金が稼げる」と認識してもらい、誰にとっても等価値の場所にしたいと思っています。

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▲交流や仕事を求め、年代や業種を問わずさまざまな人が集まっています(画像提供:津田賀央)

 

それに関連して、年末から取り組んでいる「仕事プロジェクト」という事業があります。富士見町の人びとから仕事相談を無料で受け付け、「森のオフィス」のメンバーや地域の方から適切な人材を探して紹介し、相談事を解決していきます。実際に何百万円規模の案件が生まれたり、一方で地域のお年寄りにLINEやパソコンの使い方を教えたりもしています。また、東京から移住を検討している人から「富士見町で◯◯をやりたいんだけど、一緒にできる人はいないか?」という相談を受けることも。

規模の大小にこだわらず、仕事にまつわるさまざまな事柄を、「森のオフィス」で解決できるようにしていきたいと考えています。人付き合いの仕方も人それぞれ違うので、内輪だけで固まらないよう注意しながら、ある程度のゆるさでつながっています。

例えば、「森のオフィス」に拠点を構える映像ディレクターの方から、地元PRの大型案件を地元テレビ局から相談されたものの、企画の人数が足りないから手伝ってほしいと言われたことがありました。そこで「森のオフィス」メンバーからジョイントチームを作りコンペに参加し、受注に漕ぎ着けたことも。私の理想はプロジェクトをベースとした働き方なので、とても良い形になりつつあると思います。

資本主義から脱して、お金以外でつながる生活を目指したい

——理想の働き方について、今後どのような展望がありますか?

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いま一番興味がある分野は「ベーシック・インカム」です。将来的にあらゆる仕事が自動化されて、業務によっては一生懸命働かなくても生産性は上がっていくのではないかと思っています。

もともと「資本主義の社会生活から、少しでも脱出できるのでは」という期待を持って、長野での生活をスタートした面もあります。自給を増やし、都心で外貨を稼ぎ、地元で経済を回す……そんな生活を目指したいと。今後さらに自給の比率を上げていきたいですね。

ただハイブリッドな感覚は持ち続けていたいので、都会の生活を完全に切り離したいわけではありません。東京にいることで得られる情報もたくさんありますので、引き続き都内と行き来しつつ、長野での生活を重要視したいですね。

 

——「理想の働き方」は、現在どのくらい達成できていますか?

まだまだです。畑も家庭菜園レベルですし、お金に頼る生活をしています。

ただ、例えば近所の方が毎日採れた野菜を分けてくださるので、あるとき妻が「この1週間全然スーパーへ買い物に行っていないのに、普通に生活できてる!」と驚いていました。これは都会では体験できないことですが、こうしたシェア・エコノミーが田舎ではごく普通におこなわれているんですよね。

ゼロからシェア・エコノミーの関係構築は非常に難しいですし、短期間での構築を目指すとお金に頼ることになります。さらにお金以外にもコミュニケーション面で努力して信頼関係を結ぶ必要があり、とても時間がかかります。やはり自分がずっと暮らしてきた土地に突然知らない人がやってきても、すぐには信用できないものです。お金を使った交流に慣れていると、時間をかけて少しずつ構築しなくてはいけない関係性にシフトすることの難しさを感じますね。

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——最後に、将来的に「2拠点生活」を目指し検討している方へ、アドバイスをお願いします。

私は周囲の理解がありましたが、その恩恵を受けるために信頼関係の構築は不可欠でした。ですから、まずは「やらなければいけないことを、しっかりやる」ことが大事ですね。また現実的な課題として、長距離移動や、テレコンやビデコンに慣れておくこと。つまり「どこでも仕事ができるようになっておく」「常にコミュニケーションを取れるようにしておく」ことが重要です。

「森のオフィス」でも、都心と長野を行き来して仕事をしている方は数人います。例えば、富士見町への移住のために会社を説得し、東京とは週2日テレワークで仕事をしている方。ほかにも、実家に帰るため会社を辞めようとしたのですが引き止められ、結果的に会社がコワーキングスペースの会員費を支払い、「森のオフィス」に通勤するスタイルになったという方もいます。

このように転職とは違う選択肢として、会社や人事が社員の生活に合わせた対応をし始めていると実感しています。つまり会社を説得すれば、自分で働き方を変えられる時代になってきたのです。ですから2拠点生活を実現したいのならば、まず周囲を説得できるだけの関係性をつくり、生活拠点や維持費用を確保し環境を整える。そうすれば2拠点生活自体は、難しいことではないと思います。

WRITING:伊藤七ゑ/PHOTO廣田達也