女性の方が元気なのはナゼ!?「欲求」が脳を活性化させる仕組み

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今回紹介する本

『アタマがどんどん元気になる!!もっと脳の強化書2』

f:id:k_kushida:20150619160831j:plain著者: 加藤俊徳
定価:1,404 円
単行本: 225 ページ
出版社:あさ出版(2015/01/15)

仕事も余暇もばっちり楽しみたいと思っている読者の皆さま、この本を読んで脳をギュンギュン活性化しよう。そして今よりさらに充実した人生を手に入れようではないか。

「脳トレ」は一時期の大ブームは落ち着いたものの、依然として多くの人の関心を集めるトピックだ。むしろ現在は、新たな自己啓発ジャンルのひとつという安定的な地位におさまったように見受けられる。著者によれば、「脳の一部分は死ぬまで成長し続ける」ということから、成長の可能性をみすみす見逃すわけにはいかない、と多くの方が意識するようになったのも当然といえるかもしれない。

ベストセラーとなった前著『アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書』では、脳をその働きごとに番地分けし、パートごとにトレーニングする方法を提唱した。その続編となる本書では、脳の成長のための根源的なエネルギーとなる、「欲求」に着目している。

たとえば、いつまでも旅行や趣味を楽しんでいる人の方が、年をとっても元気で生き生きしているというのは自然に腑に落ちる道理ではないだろうか。本書では、こうした「欲求」と脳の成長の関連を解き明かし、欲求を通して脳を成長させるトレーニング法を述べている。トレーニング法とは、女性は立ち食いそば、男性はパフェを食べてみる、後ろ向きに歩く、などユニークなものばかりだ。ぜひ元気に輝く自分づくりに役立ててほしい。

あなたの脳を動かす、「欲求」

いろいろな欲求

人間の欲求にはさまざまなものがある。三大欲求と呼ばれる食欲、睡眠欲、性欲を筆頭に、承認欲求や物欲、何かを壊したくなる破壊欲、他者を守りたいという養護欲など、挙げていけばきりがない。

欲求の方向性は、2つに分かれる。過去の経験をもう一度経験したいという欲求と、そして未知の経験をしたいという欲求だ。2つは脳に異なる刺激を与える。

また、欲求は良い欲求と悪い欲求にも分けられる。つまり、達成されることによって自分や周囲のためになる欲求と、逆に破滅に追いやる欲求だ。

それから、欲求というと「○○したい」という能動的なものを思い浮かべるだろうが、「○○したくない」という受動的なものも欲求である。勉強したくない、仕事をしたくない、というのも立派な欲求というわけだ。この欲求は、過去に苦痛や不快を感じたことがよみがえってくるため、もしくは脳の未発達のパーツを使うことになるために起こる拒否反応が影響している。「やりたくない」と強く感じたときは、どちらに原因があるか考えてみると、自分との向き合い方がわかるだろう。

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EllysaHo/iStock/Thinkstock

脳の成長

人間の脳は、奥の部分になればなるほど、生命に関わる大事なことを司るようにできている。最奥の脳幹は呼吸や血圧の機能など、その上にある視床・大脳辺縁系は感情や記憶、行動、学習などをコントロールしている。さらにそれらを覆っているのが、動物にはない、人間だけが持つ「新しい脳」、大脳皮質だ。この部分は思考や運動など高度な機能をコントロールしており、生きていくために必要な欲求以上の複雑な欲求は、ここから生まれている。

このような仕組みの私たちの脳には、「超脳野」と呼ばれる場所があり、これらはとくに複雑な情報処理をしている。超脳野は3つの場所にあり、どれも30代以降にそれぞれの能力を伸ばすという。とくに、実行力や判断力を司る「超前頭野」は、50代を過ぎてから成長し、高齢になっても、元気な人には委縮が見られることが少ないという。「脳は死ぬまで成長し続ける」のだ。

超前頭野が活発に働く人に見られたのが強いストレス耐性だ。欲求を強い意志で実行する力を生み出すのが超前頭野であり、欲求が大きく脳の発達に関わっているといえる。

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欲求の取り扱いにはご注意を

偽物の欲求に惑わされがちな現代

私たちの生きている社会は、欲求をたやすく見失ってしまう構造になっている。

和を重んじる日本社会では、皆の意見に合わせて自分の欲求を押し殺したり、他の人の欲求に同調する流れになったりすることも多い。

一方、街やメディアには欲求を刺激する情報があふれかえっている。コンビニに入れば何かしら欲しいものが見つかってしまうし、CMやみんなが観ているからという理由に流されて映画を観てしまうこともあるだろう。

本来ならば自分にとって必要な欲求、内面からわき起こってくる欲求を見極めなければならないのに、現代社会においては、偽物の欲求に踊らされ、何がしたいのかわからなくなってしまいがちだ。

インターネットが脳に及ぼす影響

欲求を刺激する情報の宝庫といえるのが、インターネットだ。実はインターネットは脳に悪影響をもたらしかねない。

情報は、脳の成長に欠かせないものでもあるが、インターネットから得られる情報は、身体感覚を伴ったものではない。文字や画像の情報をひたすら目で追っていると、脳の使い方がアンバランスになり、雰囲気や感情など、文字情報以外を受け取るアンテナが鈍くなってしまう。

しかもインターネットには、ユーザーの欲求を刺激し、とらえるしかけが張り巡らされているため、自制心が働きにくくのめり込んでしまう。

欲求の暴走

正しい欲求を見失ってしまう例を挙げたが、一方で、強い欲求は、暴走させてしまうと日常生活を破壊するような恐ろしいものでもある。痩せたい、という激しい欲求が摂食障害などの病気を引き起こしてしまうこともある。また、アルコールやギャンブルへの依存も、欲求が暴走した例といえる。

もっと小さなことで、スマホの画面をいつもいじってしまうのも、欲求のコントロールがうまくいっていない状況だ。欲求の暴走は誰にでも起こりうる。

とはいえ、暴走は悪いことばかりではない。脳にとって一番良くないことは、思考を停滞させ、何も考えないことだ。欲求の暴走は、方向性によっては、大きな成功を収められるかもしれないのだ。

強い欲求は、うまく手なづけて、正しい方向へ導いてやることだ。それがまさに自分の欲求を「育てる」ということなのではないだろうか。

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ViktorCap/iStock/Thinkstock

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【必読ポイント!】欲求を正しく育てよう

女性が元気な理由

年齢が上がるほど、圧倒的に元気なのは、なぜか女性だ。統計によると、2014年には、100歳以上の高齢者のうち女性が87.1%を占めているという。

背景にはさまざまな要因があるというが、著者はこの差が「欲求の差」にあるのではないかと考える。男性は、自尊心が高く非挑戦的/話題は時事問題とスポーツばかり/交流の機会が少ない。一方、女性は、好奇心旺盛で挑戦的/話題の幅が広い/近所や職場や友人など幅広く交流する、などの傾向がみられる。こうした行動パターンからも、女性のほうが脳への刺激が多く、欲求を育てる生活をしていると想像できる。

脳科学の面からも分析してみると、女性は右脳と左脳を連結する「脳梁」という部位が男性より発達している。それで、左右の脳の情報交換が活発になり、脳の多くの場所が使われ、欲求が生まれやすくなる。また、脳の構造上、視覚系の欲求が生まれやすい男性に比べ、聴覚系の欲求が生まれやすい女性は、欲求を発展させやすいともいえる。

欲求低下は脳を衰えさせる

欲求の有無と、脳の老化は深く関連している。元気がない高齢者と、元気で活動的な高齢者のMRIの脳画像を見比べると一目瞭然だ。

元気がない高齢者の画像には、活動性の低いことを示す白い部分が多く見られる。一方で、元気な高齢者の画像には、白い部分はほとんど見られなかった。この白い部分は、細胞が壊疽し、神経線維の働きが低くなっている部分だ。欲求が少ない人の脳は、不活発な範囲が増え、使われている脳の回路が少なくなるような状態になっている。欲求を持つことをやめると、その瞬間から脳の老化は始まるのだ。

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itsmejust/iStock/Thinkstock

脳の自動化を避ける

ここでは、欲求を生み出す脳内環境について考えてみたい。

家にカギをかけたかどうか、不安になって戻ると、ちゃんとカギはかかっている、という出来事には覚えがあるだろう。これは、毎日繰り返し行っていることが、習慣化して無意識に行われるようになった例だが、脳内では、「何も考えなくても自動的にその動作を完結させる回路が形成された」ことを意味する。この回路の形成プロセスが、「脳の自動化」だ。

自動化は、脳に負担をかけないようにするための、脳内の小脳と海馬の働きによるものだが、欲求を生み出すという点からいうと、この状態に安住するのはたいへん良くない。自動化された回路ばかり使っていると、新しい欲求が生まれないからだ。

30歳ごろになれば「脱・自動化」は必須だ。30歳ともなると、仕事にも慣れ、持っている知識でなんとかやっていくことができてしまうが、本来ならまさにこの時期くらいから個性的な脳をつくっていかねばならないからだ。

「脱・自動化」のためには、習慣化していることを思い切って少し変え、脳の中の未開発エリアに刺激を与えてやろう。そうすることで、脳が生き生きしてくる。

欲求発見トレーニング

毎月1日だけ、「何でも許すデー」をつくる

脳のためには、変化のない生活に終止符を打ち、新しい情報や経験を得ることが望ましい。そのためには、そうした行動の原動力となる欲求を見つけなければならない。

ここで紹介する「欲求発見トレーニング」では、欲求が生まれやすくなる環境をつくることを目指している。そのうちのいくつかを挙げてみよう。

まず、可能な限り自分の欲求を解放する日、「何でも許すデー」を過ごしてみることをおすすめしたい。ふだん定時に帰りたいけれど周りの人が気になって帰れない、という人は、この日には断固として帰る。前から欲しかった靴が2足あったら、2足とも買う。とにかくその日には、自分の望みをかなえてやるのだ。

いくつも欲求があるうち、一つの欲求を我慢しようとすると、じつは脳の構造上、ほかの欲求も影響を受けてスイッチが入らなくなってしまう。結果として、脳全体が停滞してしまうというケースもある。そうした状態を避けるため、たまにすべての欲求を解放する、ということは効果的である。

女性は立ち食いそば、男性はパフェを食べる

本当の欲求を追いかけるためには、他人の視線を気にしていてはいけない。人のことを気にしないで、「入りにくい」「注文しづらい」というお店に思い切って入ると、脳には新たな刺激が加わる。例えば女性は駅などの立ち食いそば屋さんに立ち寄ってみてもいいし、男性はパフェを食べに行ってみるといい。

甘いものが好きなのだが、他人の視線を気にするあまり、欲求を抑圧してスイーツショップに入るのを断念するという男性がいるが、欲求発見の観点からいくと、それはあまりにもったいない。

妄想ノートをつくる

頭に浮かんだ欲求をノートに書きつけておくのも、いろいろな欲求の発見につながる。やってみたいことや、行きたいところ、会いたい人、なんでもメモしておくといい。

ここでは「書く」ということが大切で、文字にすることで、脳がその内容をしっかりと認識する。脳は、方向性がはっきりするとそれを実現しようという性質を持っているので、書いた瞬間から、その欲求は実現に向かっていくのである。

著者情報

加藤俊徳(かとう としのり)
新潟県生まれ。医師、医学博士、株式会社「脳の学校」代表、加藤プラチナクリニック院長。14歳のときに、「脳を鍛える方法」を探そうと、医学部への進学を決意する。昭和大学大学院を卒業後、国立精神・神経センター(現・独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター)、米国ミネソタ大学放射線科MR研究センター、慶應義塾大学、東京大学等で脳の研究に従事。脳画像の鑑定では屈指の読影技術を持ち、これまでに、胎児から超高齢者まで1万人以上の脳を分析した。脳の活性化を計測するfNIRS原理の発見、発達障害に伴う海馬回旋遅滞の発見など、研究分野は多方面に渡る。2006年、株式会社「脳の学校」を立ち上げ、企業の脳研究や人材育成事業をサポート。2013年、加藤プラチナクリニックを開設、MRI診断による脳の健康医療を実践。著書に『アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書』(あさ出版)、『脳を育てる親の話し方~その一言が、子どもの将来を左右する~』(共著、青春出版社)、『「認知症」は“脳”を鍛えてくいとめる!』(PHP研究所)などがある。

※本記事は、本の要約サイトflierより転載しております。

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