【個人からチームへ】成績優秀な営業プレーヤーがマネージャーになる際に注意すべき3つのポイント

「名選手が名監督になるとは限らない」

サッカーや野球などのスポーツの場を中心によく聞かれる言葉です。これはビジネスにおいても通じる言葉であり、優秀な成績をおさめていた営業プレーヤーがマネジメントの役割になった途端、なかなかチームとしての成績を向上させられずに苦しむ、ということがあるようです。

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成績優秀な営業プレーヤーであれば、結果を出すためのノウハウやメソッドを自身で構築されているはず。そしてそれを部下にも共有すれば、チームとしてすごい成果をあげられるのではないか。自身もそう考えるでしょうし、会社からもそう期待されていることと思います。

背中で語ることができるのは、優秀なプレーヤーだったからこそ

営業職というのは結果が数字で示される分、成果を出している / 出していないがはっきりとわかります。他人の営業成績が公開される会社も多いでしょうから、常に結果を残し続ける「スタープレーヤー」が生まれることもあるでしょう。

そしてそのスタープレーヤーのノウハウを学びたい、盗みたいと思うプレーヤーは多いはず。それこそが、成績優秀な営業プレーヤーがマネジメントにつくことの最大の利点といえます。

成績優秀な営業プレーヤーだったからこそ、一つひとつの指示に説得力が増しますし、「この人が言うんだから間違いないだろう」という納得感も生まれやすくなります。

またプレーヤーから憧れられる存在であるため、「この人についていきたい」という感情を醸成しやすく、チームの一体感や連帯感が生まれやすくなる傾向もあります。

それでも思うように成果が出ない場合、その原因はどこにあるのでしょうか。

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なぜ優秀な営業プレーヤーがマネージャーになった際に落とし穴にはまるのか

部下の立場に立って考えられない

成績優秀な営業プレーヤーがマネジメントになった際に生じやすい落とし穴として「自分のコピーを作ろうとしてしまう」という点があります。

「自分のやり方でやれば間違いない」「自分にできたのだから他人にもできるはず」という考えから、ついつい部下に対して「なんでできないんだ」「なんでわからないんだ」というコミュニケーションをとってしまい、部下からは「それはあなただからできたことだよ…」と思われてしまう。そうしていつしか、「あの人にはついていけない」と、部下の心が離れていってしまうのです。

また、部下の成長段階にかかわらず、やり方をひとつひとつ教える「ティーチング」と、自分で考えるようにさせる「コーチング」の、どちらかに偏りがちになる傾向もあるようです。既に自身のやり方を身に着け始めている部下に対して「自分のやり方でやれ」と共用してしまったり、逆にまだ経験の浅い部下に対して「自分で考えろ」と突き放してしまったり。

そういったコミュニケーションを窮屈に感じてしまったり、あるいは放置されたように感じてしまったりして、いつしかチームとして機能しなくなってしまうのです。

「この人についていけばいい」という思考停止を生む

「自分のコピーを作ろうとしてしまう」ということに関連して、もう一つの弊害が部下の思考停止です。

成績優秀な営業プレーヤーは、前述の通り自身のノウハウやメソッドを確立しているケースが多いでしょう。そしてそのノウハウやメソッドに則って、成績をあげるために部下に対して「あれをやれ」「これをやれ」と細かく指示を出していったとします。

その結果、部下の成績も徐々に上がってきて「あの人の指示通り動いたら成績が上がってきた!」という実感がわいてきた頃に、もう一つの落とし穴が待っています。

元サッカー日本代表監督である岡田武史氏がICC開設3周年記念「働く杯」で語った中で、こんなエピソードがありました。

サッカーの攻撃では、相手のゴールに一直線に向かうのが手っ取り早くて一番いいわけです。ところが相手もそれが怖いから、中央のディフェンスを固めます。そうすると僕は「中央を攻めに行ったら、カウンターアタックを受ける。ボールをサイドへ出せ」と言うわけです。

(中略)

そうすると、やっぱり勝つんですよ。これで選手がどうなるかというと、 「監督が言った通りにやったら本当に勝つな」ということで、だんだん一番大切な中央を見ずに、ボールを持ったらロボットのようにさっとサイドに出すようになったんです。
ど真ん中が空いていたら、ど真ん中に行くのが一番いいんですよ。ところが、「監督の言う通りやったら勝つ」とみんな思ったら、何も考えずにサイドに出すようになった。

(引用元:http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0912/14/news010.html

指示通り行動したことで結果が出る。それが続いた結果、いつしかその部下の頭の中は「指示を聞いていればいい」という思考に変わってしまい、自分自身で考えて行動する、ということをしなくなってしまうのです。いわゆる「指示待ち」あるいは「思考停止」と呼ばれる状態です。

人員数が少なく、また自身がそれほど忙しくない、という状況であればそれでも成果を出すことは可能でしょう。ですが、マネジメント業務というのは多岐にわたるため、忙しくなりがち。またマネジメント対象となる部下の人数が多ければ多いほど、指示を出す時間も多くなり、事細かな指示を出すことができなくなってしまう日が、いつか訪れます。

そうなった際、部下が思考停止状態、指示待ち状態になってしまっていると、自発的・能動的な動きがなくなってしまい、以前指示されたことを続けるだけの集団ができあがってしまうのです。

特に変化の大きい業界においては、過去の成功体験をただ続けていくだけというのは命取りになりがちです。市場の変化等に合わせて、常に進化を続けなければ成果を出し続けることはできません。そして常に進化を続けていくためには、自分たちで考え、行動する能動的なチームを作る必要があるのです。

では、成績優秀な営業プレーヤーがマネジメントの役職に就いた際、成果を継続的に出していくためにはどうしたらよいのでしょうか。

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成績優秀な営業プレーヤーがマネージャーになる際に対処すべき3つのポイント

1.各メンバーのモチベーションの源泉を把握する

自発的な行動を促すには、まず一人ひとりのモチベーションに火をつけることが必要です。モチベーションが高い人ほど、自分自身で考え、改善する行動をとりやすい傾向にあると考えられます。

ですが、承認、昇格、昇給など、何をモチベーションに仕事をしているかは人ぞれぞれです。まずは部下との対話を重ね、その人自身のキャリアの目標や、どういう時にもっとも喜びを感じるのかを把握し、どこにモチベーションの源泉があるのかを把握することが大切です。

2.自分のコピーではなく、その人の強みを見出すコミュニケーションを心がける

プレーヤー時代に残した成績が優秀であればあるほど、自身のやり方や経験に自信をもつもの。それ自体は決して悪いことではないのですが、誰しもが同じことをできるとは限らない、ということも認識する必要があります。

強み・弱み、長所・短所は人によって異なります。その強みを最大限に活かせたからこそ、優秀な成績を収める営業プレーヤーになれたのです。

そのため、部下に対しても、自分のコピーをさせるのではなく、その部下一人ひとりの強みを見出し、その強みを活かすような、より伸ばしていくようなコミュニケーションを心がける必要があります。

「お客様への細かな配慮に関しては僕よりずっとうまいね」「この分野の知識は、君には到底かなわないから、今度教えてくれないか」と声をかけることによって、部下も自分自身の強みを自覚し、より強みを伸ばしていくようになっていくことでしょう。

3.成長段階に合わせたコミュニケーションのステップを踏む

部下の成長段階によって直接指示を出す「ティーチング」と自分で考え、行動するよう促す「コーチング」のどちらが必要になるかは異なります。そのため、今部下がどの段階にいるかを見極めながらコミュニケーションを図ることが大切です。

Step.1 具体的に指示を出す

例)「こういう資料を作りたいから、■■までに●●からこういうデータを収集してほしい」

Step.2 選択肢から選ばせる

例)「お客様が関心を持っているのはこれとこれとこれ、のどれだと思う?」

Step.3 自分で考えさせる

例)「お客様が関心を持っているのはどこだと思う?それに対してどういう提案をするべきだと思う?」

というように、3段階のコミュニケーションを用意し、Step.1がクリアできたらStep.2に、と段階を踏んだコミュニケーションを取るようにすると、指示待ちではなく、自発的・能動的に行動する部下を育てていくことができるでしょう。

成績優秀な営業プレーヤーがマネジメントになると、成功のノウハウ・メソッドのひとつを複数の人間に展開できるという大きなメリットがあります。自身の経験から生まれたノウハウや、成功体験は惜しみなく伝えることはとても大切なことです。

ただ、「正解」はひとつだけではありません。部下には部下にあった「正解」が存在する可能性があります。自分のコピーを作ろうとせず、徐々に部下自身のやり方に任せていく、そんな風にマネジメントしていくと、継続的な成果を出せるようになるのかもしれません。

文:河野富有

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