【やりたいことで喰ってみろ】年商1500万円の紙芝居屋ヤッサンが教える「人生哲学」

 皆さんは「紙芝居屋」さんをご存知でしょうか?
 紙芝居を積んだ自転車をこいで、公園などで「チョーン、チョーン」と拍子木を叩くと、子供たちが10円玉を握りしめて集まってきます。その10円を払うと、紙芝居を見る権利と飴玉などのおやつがもらえるのです。
 子供たちは皆、飴玉で頬を膨らませながら、体育座りで紙芝居に没頭する――昭和の時代まではこんな光景をよく見かけました。

「プロの紙芝居師」ヤッサンこと安野侑志さんは、「60歳になったら紙芝居屋でもやりたいな」と漠然と抱いていた夢を、28歳のときに「超」前倒しで叶え、以来、2012年に亡くなるまで40年間、紙芝居道一筋で突き進んできました。

f:id:itorikoitoriko:20141107161957j:plain

 紙芝居屋を始めるときは、みんなに「そんなもので食べていけるはずがない」と失笑されたそうですが、「“紙芝居は昔懐かしいもの”ではだめだ!時代に合わせて進化させなければ」と言葉のない紙芝居、オペラ紙芝居などさまざまなチャレンジを続け、海外公演も実現。1年の公演回数は何と200回以上に上り、年商1500万円を稼ぐまでになりました。
 そんな「自分の道を突き進んできた」ヤッサンには、独自の人生哲学がありました。一度きりの人生で、自分がやりたいことを貫き続ける信念にはものすごいパワーがあり、自身の人生やキャリアに悩む人の心を揺さぶるものがあります。

 ヤッサンの信念に突き動かされた一人が、当時、京都大学大学院に在籍していた高田真理さん。「ヤッサンに弟子入りして、人生が変わった」という彼女がこのほど出版したのが『世界一の紙芝居屋ヤッサンの教え』(ダイヤモンド社)です。高田さん自身、「自分は何がやりたいんだろう」ともやもや悩んでいたことが吹っ切れた、ヤッサンの「教え」をもとに構成されています。
 その中から、これからの人生やキャリアに悩み、迷っている人の心に特に刺さりそうな「教え」を、いくつかピックアップしてご紹介したいと思います。

「本当はこうしたいのに」という、内なる声を聞き逃さない

 人は誰でも、損得を考える前に「自分はこうしたい」という欲求があるはずなのに、成長するにつれ躾けられ、周りに合わせることを覚え、段々内なる欲求が聞こえなくなるもの。大人になるとさらに、儲からない、安定しない、才能がない…など「やりたいけど、しないほうがいい理由」を重ねていき、その挙句、夢を忘れていき歳を取ってしまう。
 ヤッサンは、「自分はこうしたい」という想いはわがままではない。その内なる声を聞き取ることこそ、やりたいことで喰っていく初めの一歩だ――と説く。紙芝居屋をやりたいという内なる声を信じて突き進んでいたからこそ、今の自分がある、と。
 ただ、「内なる声」と「単なる思いつき」を混同する場合もあるかもしれない。そんな時はまず、ワンアクションを起こしてみよう。それが本当に「自分の心の奥底から湧き上がる内なる声」であるならば、すぐに次のアクションを思いつき、自分を動かしている本当の自分が前へ前へと引っ張ってくれる。

ゴールを少し向こうに置いておく。上に「サバを読む」ことが大事だ

「やりたいことを貫くには、未来は細かい部分まで鮮やかに描け。“自分株式会社”の脚本を書け」というのがヤッサンの信条。その際、最も大事なのは「最高のエンディングにこだわること」だという。
 ヤッサンの書いた最高のエンディングは「109歳、生きてノーベル賞を獲る」という実に大きな目標。実に壮大だ。そして、年齢は100歳のほうがキリがいいものの、そうすると100歳になるまでに息が切れてしまうので、109歳という「少し向こう」に置いたのだという。
 つまり、身の丈に合ったエンディングを想像していては、よくて同等、大抵はそれ以下で終わってしまう。遠くを見ていたほうが、より大きく前進ができる。サバを読んだ分がエネルギーとなり、ちょうどよい地点に着地できる。

泣きわめいて、思いを通す赤ちゃん力って凄いぞ

 ヤッサンが言い続け、実践し続けた「やりたいことで喰ってみろ」「どこまでも自分を貫け」は、簡単に言うと「赤ちゃんのようになること」なのだという。
 大人になり、成長しても、どこかに「赤ちゃんのように泣き方ひとつで周囲を思い通りにする部分」を残しておかなければならないと説く。もちろん、その大前提として、「自分はこれがやりたい」という思いの強さと、やりたいことに自信を持ち、できると信じて疑わないことが重要。
 紙芝居を仕事にする時も、奥さんと駆け落ちした時も、周りに反対されたヤッサン。でも、「どうしても、こうしたいんだ!」という強いエネルギーを発し続けたから、周りは「しょうがないなあ」と協力してくれるようになった。
 分別だけで生きる人間は面白くないし、誰も付いてこない。自分が信じたやりたいことを目いっぱい主張できるぐらいの「赤ちゃん力」があれば、ここぞというときに流れを変えることができる。

実現する気のない夢は、夢じゃない。ただの嘘だ

 ヤッサンは、「夢は必ず実現させるもの」と考え、突き進んできた。夢は実現するまでやり続けるものだ。自分が実現を目指す限り、夢は破れることがない、という。
 壮大な夢ばかりを語り「でも結婚して子供ができたりしたら、無理ですよね」「この年になるとなかなか実行できなくて」などと言い訳ばかりする人が、ヤッサンは大嫌いだったという。実現する気のない夢を語っているようでは、自分の道を切り開くことはできない、と。
 夢を実現させる!と決意すれば、死に物狂いで実現する方法を考えられるし、実行もできる。そうしてやっと、一つのことを成し遂げられるスタートラインに立てる。

f:id:itorikoitoriko:20141107161958j:plain

落ちるところまで落ちたら浮上してくる

 壮大な夢を描いて紙芝居屋になったものの、「紙芝居なんて」と言われて落ち込むこともあったヤッサン。そういうときは、無理して前向きな気持ちにするのは止め、自分の思うままに落ちていくことにしていたという。暗い海に突き落とされたような出来事があったとしても、初めにとことん落ちるところまで落ちる。落ち込んだときにショックのあまりジタバタすると、自分で自分を苦しめ、体力を消耗してしまう。時間が経てば必ず、次第に浮力が働いてくると信じていたし、そう実感もしていたからだ。
「紙芝居なんて、と言われたけれど、逆に誰もやっていない紙芝居だからこそチャンス。俺が世界に発信していくんだ」という気持ちが湧き、沈む前よりも勢いがつくことがあった。落ちて浮かんだその先に、思いもしなかった明るい光との出会いがあるから、落ちることを恐れてはいけない。

「これがやりたい」と思うものがあっても、「今までのキャリアとは違うから」「実現可能性が低いから」「周囲が反対するから」などと諦めかけている人にとっては、きっと心にグサッと突き刺さる言葉ばかりだったのではないでしょうか?前向きで痛快な発言の数々は、読むだけでスカっとして、くよくよしていた自分がバカらしくなったりもします。やりたいことを貫き、大きな目標に向かってブレることなく突き進んだヤッサンの言葉だからこそ、人の心を動かすのでしょう。

 なお、この本は「これからのキャリアに悩む若者」だけでなく、起業したばかりの人、起業を志す人にもお勧めします。
「大風呂敷を広げて、その先を見ていると、一歩を踏み出すことが怖くなくなる」、「前例がないことは大きなチャンス。ネガティブさが大きいほどひっくり返しやすい」、「不自由からの脱獄が、自由を生むんだ。ピンチは、新時代を創るんだ」などの名言が満載。この道でいいのか迷った時、経営に行き詰った時に読めば、きっと勇気が湧いてくるはずですよ。

参考書籍:『世界一の紙芝居屋ヤッサンの教え』/安野侑志、高田真理/ダイヤモンド社

EDIT&WRITING:伊藤理子

PC_goodpoint_banner2

Pagetop