【女性管理職の本棚】あなたの周りにいるのは敵か?味方か?たぶん味方です

 上司たるもの…いや、仕事をする上で何かを成し遂げようと思ったら、人の心の動きについては学んでも学んでも、学び終えることはありません。もっと幅広く考えれば、生活を楽しむ上でも、たった一人で生きていくことはできないので、相手の気持ちを理解するためのヒントはできるだけたくさん知っていたほうがいいのです。

 これまで仕事をしてきた中で、最初に強烈なクレームをつけてきた人ほど、のちのち長く自分を応援してくれているなぁと実感している私は、その裏づけが理解できるかも…と思い、この本を手にとりました。

f:id:akarihiroyo:20140818171729j:plain

「敵を味方に変える技術」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、帯には「影響力の武器」のロバート・チャルディーニと「7つの習慣」のフランクリン・コヴィーの両氏が推薦と書いてあります。対人心理の名著と、自己啓発の名著の作家2人の推薦ってすごいのではないかと、それも手にとった理由のひとつ。

 この本の中で紹介されている「人を動かす5つの原理」は以下の通り。

 ・自分の感情をコントロールする

 ・お互いの信念の違いを理解する

 ・相手のプライドを尊重する

 ・適切な雰囲気をつくる

 ・共感を示して気配りを心がける 

 それぞれの原理の中で、具体的なシチュエーションを挙げながら細やかに58のアドバイスがなされています。特に「無意識」に関わるアドバイスを3つ紹介しましょう。

■「反応」するな、「対応」せよ/自分の感情をコントロールする

「反応」は感情に振り回されている状態、「対応」は理性的に感情をコントロールしている状態のこと。「反応」は状況に自分がコントロールされ、「対応」は状況をコントロールします。例えば誰かに苦情を言われてカチンと来たとしても、まず自分の感情をコントロールするところからはじめれば、その状況をコントロールする=問題を解決するところまで理性的に組み立てて、進めることができます。こいつは敵だ!と感情的に対抗意識を燃やすよりも、相手はなぜそういうことを言ったのか、自分に何を求めているのか、自分に何が提供できるのか…と理解しようとすれば、相手にとって自分が協力者になる状況を作り出せるし、大抵の場合それが求められています。

f:id:akarihiroyo:20140818171731j:plain

■信念と真実の違いを意識する/お互いの信念の違いを理解する

  私たちは無意識のレベルで「信念体系(各々の経験によって組み立てられたもののとらえ方、考え方)」に支配され、わずかな情報をもとに物事を判断しています。そして、その「信念体系」は人によって様々であると知れば、人との衝突の理由や真実=事実が正しく見えてきます。その言動が無意識か、意識的か、自分に問いかけることによって、他者とポジティブに関われるようになります。例えば、お金を「悪」と思うか「善」と思うかは、無意識の信念として私たちの判断を左右しています。無意識に従っていればただ対立するだけですが、自分と相手の信念の違いが言動の違いにつながっているのだと意識すれば、目的のためにその違いを埋める方法も考えることができます。

■相手を「重要な人」として扱う/相手のプライドを尊重する

「ど んな人でも『私を大切に扱ってください』と書かれた見えないプラカードを首から下げている」。人は無礼な振る舞いに自尊心を傷つけられ、そのうっぷんを無意識に晴らそうとします。その矛先が自分に向けられることも。まず相手を尊重し、相手にしてほしいことを伝えて感謝することが大切です。例えば、著者はある入国審査官にしつこく質問されて困った時に、よくよく話を聞くと、以前その審査官に同業者が無礼な態度を取っていたことで、著者に対しても感情的な態度をとっていたことを理解しました。最後まで審査官を人として尊重したことで、最終的にはスムーズに入国。相手の都合に振り回されるのは歓迎できませんが、目的は入国することなので、審査官と対立するのは無意味なことだからです。

 人の心理を扱う本の多くに「人を操る」などの不穏な言葉が添えられていたり、「敵を味方に」とあると何か人の心を操作する嫌なイメージがありますが、この本のいいところは最初に「心理操作は悪」だと断言しているところでしょう。ここに書かれているノウハウは、あくまでも自分と相手にとって最終的にいい結果を目指す――という「善」のために書かれています。もちろん、このやり方で全ての人が味方になるとは思いませんが、目的のための無駄な対立は避けられるはずです。仕事も、究極に目指すところはそこですよね。

参考書籍:「敵を味方に変える技術」ボブ・バーグ 著、弓場隆 訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン

文:明灯尋世

 とある中小企業で日々、上下に挟まれて突破口を探すアラフォー女局長。知識は、行動に移してこそ身につく。組織の中でも自由であれ。家族は姑、夫、犬一匹。

PC_goodpoint_banner2

Pagetop