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女性活躍推進を使命とする3社の「実現したい未来」
日本経済の成長戦略の中核に、「女性の活用」を掲げた安倍内閣。「上場企業の役員に一人は女性を登用」「待機児童を5年でゼロに」「育児休業3年での職場復帰支援」など、女性活用に関する政策にいよいよ政府が本腰を入れてきた印象だ。実現性についてはさまざまな議論があるものの、国際的に見て日本が立ち遅れていたテーマなだけに、日本活性化の起爆剤になると注目を集めている。
そんな中、「女性の活用」を自らの手で加速させることに使命と商機を見出し、奮闘している若き起業家がいる。独自の切り口で、働く女性を支えようと動く3人に、「兆しをどうつかみ、事業化につなげたのか」を聞いた。
2013年6月26日
「子どもの看病で休んだら解雇される」。そんな世の中でいい訳がない!
日本にほとんど存在しなかった「病児保育」の普及に奔走する
認定NPO法人フローレンス
代表理事
駒崎弘樹さん(33歳)
フローレンスは、病気の子どもを預かってくれる「病児保育」のパイオニア。子どもの急な発熱などの際に、預け先がなく会社を休まざるを得なかった働く女性にとって、救世主的な存在となっている。月会費制の会員になれば、自宅にスタッフが訪問し、病院に連れて行ったり看病をするなど面倒をみる。このほか、待機児童問題解消のため、空き住居を利用した小規模保育所「おうち保育園」を展開するなど、「子育てしながら働くことが当たり前の社会」を実現するために奔走する。
大学在学中にITベンチャーを起業。経営は順調で、年に数千万円の売り上げを上げていた。しかし、「この先に何があるのだろう?上場して、お金持ちになって…そんな成功を求めているわけではない」と思うように。自分が本当にやりたいことを自問自答した結果、行き着いたのが「社会貢献」だった。
「ちょうどそのころ、ベビーシッターをしている母親のお客様が、子どもの看病で会社を1週間休んだら解雇されてしまったという話を聞いて、衝撃を受けたんです。子どもが熱を出すなんて当たり前のことで解雇される。こんな社会に身を置いていることが悔しく、怒りで体が震える思いでした。社会を変えなければならないと、心の底から思いました」
企業への就職は全く考えなかった。「今すぐに着手しなければならない問題だという使命感と焦燥感が強かった」という。
会員数10世帯からスタートしたサービスが、7年で2200世帯超に拡大
2004年にNPOとして認可を受けたものの、初めは困難の連続だった。事業プランを立て、病児保育専用の施設を作るために企業や財団から助成金を集めるために奔走したが、大学を卒業したばかりの若者が「病児保育問題を解決する」といっても、「あなたに何ができるのか」と言われ、ダメ出しされ続けた。それでもようやく場所を借りるメドをつけたが、直前で行政からNG。心が折れた。
「もうあきらめようと思って、メンター的存在だったNPOの代表に報告に行きました。すると『施設がないと実現できないものなのかな』との言葉が返ってきたんです。ハッとされられましたね。施設は、病児保育を実現する上での手段であるはずなのに、日々奔走する中でいつの間にか、“施設を作ることが目的”にすり替わっていた。そこから一気に視界が開け、自宅訪問型のサービスで再度事業モデルを書き直しました。固定費も会費も抑えられるし、ほかの子どもへの感染リスクもない。結果的には断然よかった」
初めはわずか10世帯からスタートしたこのサービス、現在の会員数は2200世帯を超える。2011年度のフローレンスの収入は、前年比1.9倍の約4億5000万円。5期連続の黒字、3期連続の増益を確保している。
「国力復活」のためにも、保育のインフラ整備は必須
病児保育事業を進めるにつれ、働く女性を取り巻くさまざまな問題を目の当たりにしてきた。待機児童問題を解消するために、小規模保育所「おうち保育園」事業を展開、福島の子どもたちが外で遊べないと知り、すぐに「ふくしまインドアパーク」開設に動いた。
シングルマザーの「孤育て」問題、障害児保育…動けば動くほど、自らの手で解決したい問題が次々と見えてくる。病児保育事業も、もっと全国に広げたい。
「働きたいと願う女性みんなが仕事に就くことができれば、7兆円もの経済効果があると言われています。女性の社会進出は、どんな経済政策よりも強力。国力復活のためにも、保育のインフラは必須。これからは、少なくとも3年に1つのペースで、社会問題の解決を行う事業を生み出そうと計画を立てています。職業人生が65歳までだとしたら、あと32年、10個の社会問題に取り組める計算。『国民が世界でもっとも幸福(最幸)で、世界にもっとも貢献している(最貢の)日本』という大きな目標を達成するため、歩みを止めるつもりはありません」
女性に勤め続けてほしい会社、キャリアが見えない女性社員…
女性管理職を増やし、それに憧れる若手女性が増えれば、日本は変わる!
株式会社ナチュラルリンク
代表取締役
高野美菜子さん(31歳)
女性管理職育成・研修など、「女性のキャリアアップ」に特化した研修教育サービスを手掛ける、ナチュラルリンク。「女性活用に課題感を持つ企業と、キャリアが描けない女性社員。そのギャップを埋めたい」と2009年に起業した。大阪を地盤に、関西エリアの大手企業から中小製造業まで幅広い顧客を持つ。
キャリアに対する女性の認識と会社側の思いに大きなズレ。このギャップを埋めたい
大学卒業後、就職したのは大阪の人材教育会社。主に中小企業向けに社員研修やセミナーの営業を行っていた。
「入社して4年が経った2008年、営業先でたまたま女性活用に悩む声を聞く機会が続いたんです。いずれも、『意欲を持って長く働いてほしいのに、結婚や出産を機に辞めてしまう』というもの。そこで、女性社員に聞いてみたところ、『会社は、女性に長く働いてほしいなんて全然思っていない』という、会社の意向とは正反対の声が。双方の思いのギャップに驚くとともに、『何ともったいないことか』と感じましたね。このギャップを埋め、女性のキャリアアップを支える業務に専念したいと思うようになりました」
翌年に退社し、独立。実は以前から、何らかの形で独立したいと考えており、今回の気づきは「渡りに舟」と思えたという。
とはいえ、そのころの高野さんには、女性活用の知識やノウハウはゼロ。勤務先は研修サービス会社だが、「女性に特化した研修プログラム」はなかった。まずは、女性社員がどんなことに不満を抱いているのか知ろうと考え、友人にキャリア観を聞いて回った。すると、見えてきたのは、「社内に、目標にできる女性のロールモデルがいないから、長く働くイメージが持てない」という不安だった。
「これだ!と思いました。社内にいないならば、他社で輝いている人をロールモデルにできる機会があれば、ギャップが少しは縮まるのではないかと考えたんです。しかし、よほどキャリアへの意識が高くないと、他社で成功している女性の話をわざわざ聞きに行こうとは思わない。セミナーを企画しても参加者が集まらず、わずか半年でとん挫しました」
女性管理職を増やすには、企業の風土や意識から変えていかなければ
心機一転、女性社員にヒアリングを進めていくと、「社内にロールモデルがいないから、君がそうなってほしいと期待されている。でも、成功事例がない中で、自分が切り込み隊長になるのは不安」という意見も多く耳にするようになった。「組織風土や社員の意識から変えなければ。自社の中でのロールモデルづくりの手伝いをすることが、問題解決の近道だ」と気づき、「女性の管理職を育成する」方向に舵を大きく切り替えた。そこからは、女性のキャリアアップを支える研修、セミナーに完全に特化して事業を進めている。
「女性だけを優遇することこそ不平等ではないのか」「女性は男性に比べて体力がないし、体調が不安定なときもある。男性に任せておいたほうが楽」という意見もいまだに耳にする。そのたびに、高野さんは「目指すのは、女性だけではなく『多様な人材が活躍できる会社になっていただく』こと」と、意識の変革を訴える。
「企業が存続・発展するには、女性をはじめ多様な人材が働きやすい環境を整え、それぞれの価値を発揮することが大切。女性社員が辞めてしまうことで、採用・育成にかけた費用だけでなく、蓄積した経験やスキルを失うことは会社にとって大きなロス。女性活用にいち早く取り組んだ企業は、企業競争力や収益性が高いというデータもあります」
女性管理職の存在が当たり前の社会になれば、日本経済の流れは絶対に変わる
走り続けて丸5年。社員数3人の小所帯ながら、顧客数は80社以上に拡大。実績を積むにつれ、女性管理職の育成に必要なステップが見えてきた。今はそのステップをビジネスモデルに、企業に対する女性活用の働きかけをさらに積極化している。
「女性管理職の存在が当たり前の社会になり、そういう人に憧れる女性が増えれば、日本経済の流れは絶対に変わると確信しています。小さいながらもリーディングカンパニーとして胸を張って突き進んでいきたいと、思いを新たにしています」
30〜40代の共働き家庭ニーズが圧倒的に多い、家事代行サービス業。
「働く女性を少しでも楽にする」ことに、使命感
株式会社フォー・リーフ
代表取締役
隅 淳一さん
神奈川・湘南地区を地盤に、関東一都三県で家事代行サービス業を展開しているフォー・リーフ。主に掃除や洗濯、買い物や、料理の代行なども手掛ける。
事業化のきっかけは「自分」だった。約10年前、湘南でラーメン店を3店経営し、妻も別の仕事を持っていたことから、家の中は散らかり放題。家政婦さんを雇ったところ、一気に自宅は片付き、快適な空間がよみがえった。
「それを周りに話したら、『うちにもそういう人に来てほしい!』という声がいくつも挙がって。そこで、仲間たちのためにとホームページを作り、細々と『家政婦さんと家庭』のマッチングサイトを始めたところ、口コミで利用者がどんどん増えていったんです。ニーズの大きさに驚き、本腰を入れて事業化すべきだと判断し、自社でスタッフを雇うことにしました」
当初は、シニア世代のニーズが増えるだろうと予測していたが、メインは30〜40代の共働き家庭だった。あまりのニーズの多さに、スタッフ集めが回らなくなり、ラーメン店は早々に部下に任せ、隅さん自身が率先して現場に入ったという。
育児と仕事の両立は神業!自らが経験し「女性を支える存在」の大切さに気づく
本格的に「働く女性を支えたい」と思うようになったのは、2007年。子どもができたことがきっかけだった。
「普段は妻に任せきりでしたが、ある日、丸1日一人だけで子どもの面倒を見ることになったんです。そのとき、『子育てがこんなに大変だとは!』と痛感させられました。動き回るので目が離せず、思うようにならないからストレスも貯まる。たった1日でこんなに疲れる、ましてや育児と仕事の両立なんて神業だ!と冗談抜きに思いましたね。この経験を機に、『仕事を持つ母親を支えることを、事業目的にしよう』と決意しました」
家事代行サービスは、「仕事ができればいい」というものではない。赤の他人が自宅に入り、家の隅々まで見ることになる。信頼関係が何より大切であるうえ、『家主との合う・合わない』も重要なファクターだ。いくら家事スキルが高くても、性格やタイプが合わなければ、ストレスを与えてしまうことになりかねない。
「初めてご利用いただくお客様の場合は、必ず初めに本部スタッフが出向き、たっぷり1時間かけてニーズをヒアリングします。そして、お客様が家事代行サービスに何を求めているのかを詳細に探りつつ、コミュニケーションの中から性格やタイプを読み取り、『このご家庭ならば、○○さんが合うだろう』と頭の中でマッチングさせています。現時点で150名以上のスタッフを抱えていますが、全員の性格やタイプ、得意分野は頭に入っていますよ」
ユーザーの7割が共働き・子育て世帯。問い合わせが引きも切らない
現在は、ユーザーの半数近くが30〜40代の共働き家庭で、約2割が専業主婦の家庭。問い合わせ電話やメールが引きも切らず、今も隅さん自身が現場に入ることがあるほどの盛況ぶりだ。
「子どもの面倒で精いっぱい、自分は食事もままならない」「夫にももっと子育てや家事を手伝ってほしいが、我慢している」などの女性の悩みに触れるたびに、家庭も、仕事も、今より少しでも充実させられるよう手助けをしたいという思いは日に日に強まる。
「今のサービス提供エリアは、一都三県と、FC展開している関西の一部。もっとエリアを広げてほしいという要請はあるし、より多くの女性のサポートをしたいという思いもあるのですが、まずは『サービス拡充』のほうを強化したい。利用者の声を聞くと、保育所や子どものスクール探し、親の介護施設探しなどに時間を費やしているケースが多く、これらの分野もサポートできないかと検討中。働く女性や子育てする女性に、『フォー・リーフに相談すれば、生活にまつわる煩わしい作業が少し楽になり、生活が楽しくなる』と思ってもらえる存在になりたいと願っています」
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- EDIT&WRITING
- 伊藤理子
- PHOTO
- 刑部友康/掛川雅也/中恵美子