「大手損害保険会社営業から
半ヒモ！？生活へ突入」

大学卒業後、新卒で入ったのは大手損害保険会社。もともと人と話すのは大好き、営業職には向いているだろうと自信を持って入社したのですが…。現実は全く逆でした（笑）。研修後に配属されたのは、車の販売店を通しての自動車保険の営業。お客様に接する前に、まず海千山千のディーラーに気に入られなければいけない状況は、想像以上につらかったです。自分が車を購入することはもちろん、車を買いたいという友人や知人をどんどん紹介して、とにかく営業マンのご機嫌をとる毎日。約100人ものディーラーを1人で相手にして一時も気の休まる時はなく、しかも売り上げは右肩下がりだったんです。会社では、ひたすら数字を上げることを要求され、契約が取れないと『帰ってくるな』と怒鳴られる。月3回の会議では、毎回泣きべそをかいてました。
　それでも必死に頑張ったのですが、結局退社したのが入社から2年後のこと。その後はあまりの脱力感に仕事をする気が全く起きず、当時付き合っていた彼女の家に転がりこんで（笑）。パチンコで稼いだり、夜は友達と飲みに行ったりと、気ままな日々を送っていました。そんな停滞期に出会ったのが、CSで放送していた海外サッカーだったんです。やっぱり働いていないことへの漠然とした不安があったからかな？　もともとサッカーは好きだったけど、もうのめり込むように夢中になりました。それから1年半の無職期間中、毎晩毎晩飽きることなく海外サッカーを見続けていました。

「すべての始まりは高校時代の
メーリングリストでした」

昼はパチンコ、夜はTVでサッカー三昧の毎日を送っていた時のこと。働く気力が戻ってくるにつれて、次こそは自分の好きな仕事がしたい、と考えるようになったんです。どうせつらい思いをするなら、今度こそ、自分のやりたい仕事で身を削りたいなあと。ならば学生の時から興味があった出版業界がいいな、と漠然と考えていました。
　そんな時に高校時代の同級生から、「サッカー専門誌を作っている知り合いが、サッカー好きを探している」、というメーリングリストが回ってきたんです。それに飛びつくようにして訪れたのが、『ワールドサッカーキング』編集部。同級生の知り合いとは、この雑誌の当時の副編集長だったんですよ。憧れの業界の人と話せたのが嬉しくて、海外サッカーについて話し込んだら4〜5時間があっという間に経過。そしてさて帰ろうかという時に『ウチで働いてみないか？　社長に会ってみないか？』と声をかけられて…。あまりに途方もない幸運に尻込みをして、最初は思わず断っちゃいました（笑）。が、そのまま何の用意もなしに社長と面接。なんとその日のうちに、フロムワンへの入社が決定したんです。
　今振り返れば、高校時代のメーリングリストなんてクモの糸よりも細い糸。それをきっかけにできたのは、ゼロに戻ったからには全力でやらないとリカバリーがきかない、だったら好きな仕事をやりたい、という覚悟が強かったからだと思います。そういった意味では、保険会社の営業で働くことの厳しさを知ったのもいい経験になりました。好きなことを仕事にすると、利益を挙げることに対してゆるくなりがちですが、そんな時は「利益を挙げなければ意味がない」と自然に渇が入るのも、あの時のツライ経験のおかげだと思います。