「不便を解決したい」「仲間を増やしたい」…

10代起業家に学ぶ、ビジネス発想の原理原則

ビジネス競争が激化し、新しいビジネスの芽の発掘、他社との差別化が必要になればなるほど、新しいアイディアの提案や、企画力が求められる場面も増えてくる。しかし、思うようにアイディアが出ないと頭を抱える人は多いのでは?
そこで今回は、10代という若さでビジネスアイディアをひらめき、起業まで実現した、若き2人の起業家にフォーカス。彼らの発想の源となったものは、「世の中の不の解決」「熱い想いを仕事でかなえる」という、ビジネスの発想の「原理原則」と言えるものだった。何のしがらみもない、柔らかな思考と自由な発想を、2人の事例から改めて確認してみたい。

2013年2月13日

世の人が日々感じているささいな「不便」や「困ったこと」を見つけては、
どうやったら解消できるか、考える習慣をつけています

株式会社ノーブル・エイペックス 代表取締役社長 大関 綾さん(20歳)

株式会社ノーブル・エイペックス
代表取締役社長
大関 綾さん(20歳)

1992年生まれ。小学生のころから起業を目指し、14歳で神奈川ビジネスオーディションに入賞。私立高校に進学するも、起業が認められず都立高校に1年遅れで入学し、17歳の時に起業。中学時代に発案した「ノーブルタイ」の製造販売を手掛ける。

首に巻かず、胸元に装着するタイプのネクタイ「ノーブルタイ」。土台は本革で、フロント部分にはアクセサリーをつけることも可能。新感覚のネクタイとして、注目を集めている。大関綾さんがこの「ノーブルタイ」を発案したのは、何と高校1年生のときのこと。そのアイディアのブラッシュアップに3年の月日をかけ、満を持して17歳で起業した。
「小学生のころから起業を目指し、常にビジネスの芽となるアイディアを考えていた」という。

「なぜそんなに小さいころから起業を考えていたかというと、母親に1日も早く楽をさせてあげたかったから。両親が早くに別居し、朝から晩まで働きどおしの母の姿を見て、『早く一人前にならなくちゃ』という思いが人一倍強かったんです。実業家である伯父の影響も大きかったですね。いつかは起業しようと決めてからは、常にどんなものがビジネスになり得るかを考える生活が始まりました。それこそ、24時間ずっと。ニュースを見ながら、街を歩きながら、誰かと会話をしながら、みんなが不便だと感じているもの、誰かが困っていることに注目します。そして、耳や目に入ったものを頭の中で流してしまわず、必ずいったん頭にとどめて、どうすればその『不便』『困った』が解消できるかを考える癖をつけていました」

できる、できないは置いといて、思いついたアイディアはひたすら膨らませる

例えば、よく地下鉄の駅で目にする「天井の雨漏りをビニールで覆って、バケツに集める」という光景。大関さんは「雨漏りの箇所を半円のケースで覆い、そこにたまった雨をミスト状にして散布する機械を作ったらどうかな?」と発想した。交番に置いてある「さすまた」を見たときは、「このままだと1人では暴れる人を押さえきれない。先のU字部分を、手錠みたいにカシャッと閉まるようにすれば体が抜けなくなるのでは?」と想像を膨らませた。これらすべて、小学〜中学時代のアイディアだ。

「現実的か?とか、採算が取れるか?なんてことは考えず、思いついたアイディアをもとに自由に想像を膨らませる。これをとにかく繰り返してきました。これらの発想の大半はビジネスにはならないものですが、今思えば、発想を鍛えるトレーニングになったと思いますね」

「ノーブルタイ」も、こんな日常の中から生まれたアイディアだ。「クールビズ」が普及しだした中学時代、ネクタイを外すことでだらしない印象になってしまう会社員を多数見かけた。

「首に巻かずに、アクセサリーのようにつけられるネクタイがあったら、負担もないし、だらしない印象もなくなるのでは?と考えたんです。食べ物でつい汚してしまった、作業の邪魔だから肩に引っ掛けている、そんな声もよく聞いていました。これはビジネスになり得る!と気づいてからは、見よう見まねで形や材質など試行錯誤を重ねました。社会の一般常識だけでなく、専門知識も技術も何もない普通の少女でしたから、事業化までには3年を要してしまいましたが、納得のいくものができあがったときは、嬉しかったですね」

ネット販売のほか、大手百貨店との取引も始まり、現在までに約2000本を売り上げた。現在、彼女が日々頭をひねっているのは、今後の「ノーブルタイ」の展開方法について。

「どんなシーンでの着用があり得るのか?どういう業界や企業とコラボが可能か?を、まっさらな頭で考えるようにしています。現在は、アパレルブランドや制服メーカーとのコラボが実現していますが、アパレル分野とは全く関わりがない、新しい切り口もあり得るのではないか?と。今までと同様、既成概念にとらわれることなく、発想し続けたいですね」

大関さんがチェックしている媒体、ニュース、話題

「起業すると決めてからは、ネットのニュースや新聞はよく読んでいました。よく見ていたのは『日経電子版』や『Yahoo!ニュース』など。街を歩いている時と同様、日々、世の中がどのように動いているのかをチェックしては、『実業家として大きく成長するには、どのような自分にならなければいけないのか』と頭をひねらせていましたね。おかげで、学生時代は放課後に遊んだ記憶がほとんどありません(苦笑)。起業してからも、ウェブニュースは毎日見て、今何がブームになりつつあるのか、どういう企業がどんな戦略をとろうとしているのか、どんな新商品があるのかなどをチェックしているほか、発想のヒントと英語の勉強としてYouTubeで『National Geographic』などを見たりもしています。物事を発想する上で、まずはその土台・基礎となる知識の部分は必要不可欠だと思います。『National Geographic』では、普通に生活していたらおそらくあまり触れないであろう世界について解説しているものが多いので、見識を広げるという意味で非常に参考になっていますね。また、百貨店やアパレル会社の社長や、アパレル分野の協会の会長など、『経営の大ベテラン』と接する機会を大切にしています。ビジネス本ではわからない、リアルな経営ノウハウをうかがうことができますし、皆さんがいらっしゃる位置を目指したい!という高い目標ができます」

「楽しい!」と思った分野はとことん突き詰め、納得いくまで調べ尽くせば、
その中からポン!と、思いもよらないヒラメキが生まれると思っています

ケミストリー・クエスト株式会社 取締役社長 米山維斗さん(13歳)

ケミストリー・クエスト株式会社
取締役社長
米山維斗さん(13歳)

1999年生まれ。9歳のとき元素カードを結合させて分子を作るカードゲーム「ケミストリークエスト」を発案。2010年「東京国際科学フェスティバル」に出展し評価を得る。2011年7月、12歳で起業し、商品化を実現。現在、中・上級版を開発中。

元素記号を書いたカードを結合させて、分子を作って遊ぶカードゲーム「ケミストリークエスト」。科学への興味を広げる知育ゲームとして注目され、2011年12月の発売以来、累計5万3000部を売り上げた。昨年9月より配信開始したスマートフォンアプリも、3500ダウンロードを数えている。
米山維斗さんがこの「ケミストリークエスト」を作ったのは、小学3年生のときだというから驚きだ。

小さなころから、一度興味を持ったことはとことんまで調べるタイプ。幼稚園では天文学に興味を持ち、小学校にあがってからは生物や鉱物、化学、素粒子物理学にハマった。当時の愛読書は雑誌『ニュートン』。
決して英才教育を受けていたわけではない。父は会社員で、母は専業主婦というごく普通の家庭だった。「何かをやりなさいと強要したことも、親の意思で教材を買い与えたり塾に通わせたりしたこともありません。本人が読みたいというものを借りてくるなど、やりたいことを応援してきただけ」と、父・米山康さんは話す。

「幼稚園で教わった天文学がとても面白くて。図鑑を見て覚えて、友達に教えるのが楽しかった。物心ついた時から、一つのことに没頭して、自分の知識を周りに教えるのが好きなタイプで、一つの分野を調べ尽くしたら次へ、それも調べ尽くしたらまた次へ…と興味の対象を広げてきました」

そんな中、ある日ポン!と生まれたのが、「ケミストリークエスト」のアイディアだった。

「小学3年生のとき、友達が神経衰弱のカードゲームを作って、それで遊ぶのがすごく面白かったんです。それで僕も何かカードゲームを作りたい!と思ったのがきっかけでした。当時は『遊戯王』などのカードゲームが流行っていましたが、どれも『戦う』『敵をやっつける』という内容ばかりだったので、逆に仲間ができるようなカードゲームが作れないか…と考えたとき、ふと思いついたのが当時大好きだった化学の、元素記号の『結合』。元素記号のカードを作って、分子を作るゲームにしたら、みんな化学に興味を持ってくれるようになると思ったんです」

思いついたら、すぐに行動。エクセルで元素記号のカードを作り、組み合わせてできる分子のリストを作って、クラスの友達やその兄弟に遊んでもらった。当然みんな、元素記号も分子も知らない。しかし、カードを揃えるのが楽しくて、すぐに覚えてくれたという。

「小学3年生で元素記号や分子を覚えていたって言うと、驚かれることが多いけれど、僕にとってはみんながポケモンにハマってモンスターの名前を暗記するのと同じ感覚なんです。…今は鉄道に興味があるので、もし今だったら、キハ、クハとか車両識別記号を組み合わせるカードゲームができていたかも(笑)。これも面白そうでしょう??」

周りの友達だけでなく、もっとたくさんの人にゲームを楽しんでほしいと考え、「東京国際科学フェスティバル」に出展。そこで大学教授など専門家に認められ、自信がついた。

「商品化できたら、もっともっとたくさんの、全国の人にゲームをやってもらえるんじゃないか?と思うようになりました。化学が好きな人が世の中に増えるということは、それだけ僕と話が合う人が増えるということでしょう?それってすごく楽しいことだなって。そして、どうせ広めるならば自分の好きなように作りたいし、自分の手で広めたい。だから自分で起業しようと思ったんです」

「好きだ!」と心底思える分野からしか、楽しいアイディアは生まれないと思う

そうして、わずか12歳で社長になった米山さん。瞬く間にメディアの注目を集め、昨年開催されたTEDxSeeds 2012に登壇したほか、この2月17日には中高生 たちが教育とテクノロジーを語る「Edu x Tech Fes 2013 u-18」にもスピーカーとして登壇する予定だ。
一方で、話題を集めるだけではなく、経営者として、事業の拡大・継続のために新商品開発も考えねばならないとも思っている。

「でも、無理やりアイディアをひねり出そうとは思っていません。『ケミストリークエスト』のように、自分が好きな分野を突き詰めていったら、いつかポンと生まれるものだと思っているし、そうやって生まれたものじゃないと、『これ楽しいよ!面白いよ!』って自信を持ってみんなに勧められないから。次のアイディアの素は、すでにたくさん頭の中に『裏タブ』として存在していて、何かのタイミングで表舞台に出てきて、動き出すと思っています。そのために今は、いろいろな分野に興味を持って、深く、広く、知識をつけて行きたいです」

米山さんがチェックしている媒体、ニュース、話題

「興味を持った分野の本は、片っ端から図書館で借りて読破します。小学校のころは『ニュートン』のほかに、百科事典や高校の化学の参考書なども読んでいましたね。新聞もよく読みます。まずは好きな「科学」面を隅々まで読み、その後1面に戻って気になった記事に順番に目を通します。専門的な内容でも、一般の人にわかりやすく書かれているのが新聞のいいところですね。本や新聞以外では、インターネット。本を読んでいる以外は、PCやiPadをいじっていることが多いかな。ポータルサイトで、興味を持ったキーワードを検索して、知識を深めているほか、ケミストリークエストつながりやアプリ開発の際に知り合った大学の先生などのFacebookページをよく見ています。また、鉄道にハマっている今は、路線や車両を覚えるだけでなく、鉄道会社の歴史を調べたり、『京王線の複々線化』のプランを自分で考えたりすることも。鉄道会社のTwitterもフォローして、つぶやきを見て楽しんでいます(笑)。一度興味を持ったらとことん!という性格は全く変わりませんね」

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伊藤理子
PHOTO
設楽政浩

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