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赤池学から技術者へ「発想力を鍛えて未開分野を切り拓け」
震災、超円高、欧州危機、新興国の台頭、企業の海外移転の加速など、今の日本には負の要素が多く、技術立国の地位は過去のものになりつつある。有望分野はまだ少なからずあるものの、将来に不安や不信感を抱いているエンジニアも多い。そこで幅広く日本のモノづくりを知る赤池学氏に今後の展望を語ってもらった。
2012年1月25日
今後のモノづくり、主人公はエンジニアからデザイナーになる
ユニバーサルデザイン総合研究所所長
科学技術ジャーナリスト
赤池 学氏
筑波大学第二学群生物学類卒業。ユニバーサルデザインに基づく製品開発、地域開発を数多く手掛ける。国際シンポジウムのコーディネーターはじめ、テレビ出演、セミナー、講演など幅広く活躍。「自然に学ぶものづくり図鑑」(PHP研究所)など著書多数。
これまでの日本のモノづくりは「メイド・イン・ジャパン」だったが、これでは価格競争力の強い新興国に負けるし、技術はすぐに陳腐化してしまう。これからは「デザイン・イン・ジャパン」の時代になると思う。
生産は中国やアジアの新興国に任せて、製品のデザインや機能性で、新しいスタンダードを作るような開発スタイルだ。主人公はエンジニアからデザイナーになるだろう。
だから、エンジニアにはデザインの発想力、あるいはデザイナーとコラボしてデザインを実現できる技術力が必要になってくる。いわば「構想力」だ。例えば、「メイド・イン・ジャパン」の時代は電話を作っていたが、「デザイン・イン・ジャパン」の時代では、電話の掛け方を提案する構想力が求められてくる。
こうした傾向はIT系ではすでに顕著だ。SNSのアプリを開発するのはデザイン力のあるエンジニアか、デザイナーのアイディアを実現するエンジニアになっている。技術オリエンテッドではなく、「これがあったらいいな」を提案できるエンジニアが必要なのだ。
日用品やキッズ市場など、「柔らかい分野」で強みを活かせ
この何年かで大手も中小も海外シフトに舵を切った。鉱工業などの「固めのエンジニアリング」は特にそうだが、今後は逆に、「柔らかいエンジニアリング」が日本の強みを出せる市場になると思う。
そのひとつは日用品だ。例えば、衛生用品メーカーの高級ナプキン。最先端の素材、技術、デザインが集結した優秀な製品で、新興国の女性からは「なぜこんなものができるのか」と爆発的な人気がある。
もうひとつはキッズデザイン分野で、アジアで間違いなくブレイクするだろう。その候補となる国が一人っ子政策が続く中国だ。所得の上昇に伴って子どもに掛けるお金も上がり、市場拡大が確実視されている。仮に所得が低い国や人であっても、一定程度は子どもに投資をするものだ。少子化の日本とは逆に、新興国を中心とする世界市場は大きい。
こうした製品の例に高級哺乳瓶がある。母乳授乳と同じ姿勢を保てることが特徴で、ひとつ7000円程度と高額だが、母親たちの支持を得て売れている。
上記と近いのが、生み育てやすい環境の提供だ。就寝中に基礎体温を計測する、衣服装着式の温度計が例になる。女性の体のリズムを自動的に計測し、データ管理もできるという製品であり、中国の代理店が契約を結びたいと殺到している。
このように世界には、「子どもを産みたい女性」や「子どもを安全・安心に育てたい親」がとてつもなく多い。こうした市場で日本の技術力にプラスしてデザイン力を発揮することができると思うし、ソフトエンジニアリングという意味では、高齢者を対象としたモビリティ(コミューター)も同様だろう。「チョイ乗り」のための小型低速EVを、地域が主体となって開発・生産を進めるプロジェクトもある。
これからは、未開拓市場を見つけてニーズを掘り起こす
もちろん、巷間言われる成長分野にも期待できる。例えば、太陽光、風力、中小水力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーへのシフト。そして、不安定な再生可能エネルギーを支えるリチウムイオンやNASなどの蓄電池を装備した、創エネ、省エネ、蓄エネをセットにしたスマートハウスだ。
蓄エネでEVをバッテリーとして使い、自産自消型のエネルギースタイルが進めば、EV用の急速充電設備が普及するだろう。すると、住宅から次の街作り、スマートシティへとつながっていく。そうなればバックグラウンドで大量のデータを処理する、データセンターとクラウドが不可欠になる。データセンターが増えれば、省電力サーバーなど機器の省エネ化はますます進むだろう。
ただ大切なのは、未開拓の市場やソリューションがなかった分野を見つけて、ニーズを掘り起こすことだ。キッズデザインなら新生児や乳幼児の市場が膨らむこと、小型モビリティは高齢者が増えるなど、マーケティング分析をすればわかるものだ。
複数の専門性を持つユニバーサリストになるには?
そのためには、よく言われることだが、自分の専門領域に特化した「I型」から、その周辺知識までを併せ持つ「T型」エンジニアへのシフトを考えよう。構想力を身につけるには、複数の専門性を持つことが大切だからだ。ゼネラリスト、スペシャリストではなく、ユニバーサリストになる。
そこでお勧めするのが、子どものころに好きだったものを思い出して、それを改めて学び直すこと。絵でも音楽でも、私の専門分野でもある昆虫も面白い。専門書籍を読みまくる、展示会や展覧会に足を運ぶ、セミナーに参加するなどだ。こうなれば人とのつながりができるので、刺激を受けて第2、第3の興味の対象が生まれるもの。実際、私はこうして専門分野を増やしてきた。
一般的には、「機械系エンジニアがT型人間になるには、電気やソフトの知識を吸収すべき」などと言われるが、あえて仕事を離れたほうがいい。子どもに戻れば好きなことがたくさん見つかるはずだし、そのほうが発想力やデザイン志向を高められるからだ。
一見、業務に関連がないので意味がないように思えるかもしれないが、発想やデザイン力を高めるには、好きな世界が一番の近道。そして実務にも結びつく。その典型がロボットの研究者で、彼らの中には昆虫好きが実に多く、その生態や構造をロボット開発につなげている。
新しい世界の胎動を、自分のアンテナとマーケティングで探っていく。そして、構想力を活かして未開のモノを作る。例えば、視覚、聴覚、触覚などでのユーザビリティは進み、さまざまな製品も工夫されているが、味覚と臭覚はまだこれからだ。香りを活かしたモノづくりが仮にできれば、そのエンジニアはフロントランナーになれるのだ。
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- EDIT&WRITING
- 高橋マサシ
- PHOTO
- 関本陽介