必要なのは英語力?MBA?

「グローバルCFO」になるための条件とは?

企業における最高財務責任者である「CFO」。企業の経営戦略を財務面からリードする役割であり、経理財務職が目指すキャリアの「頂点」とも言える。海外での事業展開を積極化する企業が増え、グローバルな視点での経営戦略、財務戦略が重要視されている今、「グローバルCFO」になるにはどんな経験を積んでいけばいいのだろうか?専門家にこれからのCFOに求められる役割と、身につけるべきスキルを聞いた。

2011年7月6日

<ADVISER>

有限会社マネジメント・デベロプメント・インク
代表/井手正介氏

ペンシルベニア大学ウォートン・スクール経営学修士(MBA)、米国公認証券アナリスト(CFA)取得。野村マネジメント・スクール研究理事、青山学院大学大学院教授などを経て現職。著書に『最強CFO列伝』(日経BP社)、『ビジネスゼミナール経営財務入門』(日本経済新聞出版社)など。

日本CFO協会
専務理事 事務局長/谷口 宏氏

住友銀行(現・三井住友銀行)を経て、2000年に日本CFO協会を設立。CFO、経営財務部門のネットワーク構築や各種セミナーや研修の開催、資格・検定試験の実施など、企業財務のプロを養成する教育事業を展開する。世界のCFO協会の国際組織・国際財務幹部協会連盟(IAFEI)会長。

グローバル化の進行により、CFOに求められる役割は変化している

現在の日本のCFOに足りないものとは?

日本CFO協会の谷口氏は「これからの日本のCFOは、グループ全体の経営情報をリアルタイムで把握することが大切」と話す。

「日本企業を取り巻く環境は急激に変化しており、それに伴いCFOの役割も増している」というのは、日本CFO協会の谷口氏。
「資本市場のグローバル化を受け、日本企業も世界の投資家に対する情報開示と説明責任が求められるようになっています。その際に窓口となるのがCFOです。また、国内市場の成熟化を受け、アジアを始めとする海外に進出する企業が増えていますが、今後は海外子会社も含めた『グループ経営』の徹底、すなわち欧米企業のような『グループ全体のリアルタイムでの情報管理』が求められるようになります。リアルタイムでの情報一元管理の体制が整っている日本企業は少なく、IT投資も含めたこのインフラ整備もCFOの重要な役割になっています
海外の企業経営に詳しい井手氏は、「そもそも、日本には本当の意味でのCFOはほとんどいない」と言い切る。
CFOとはそもそも、欧米型の企業統治組織体制を取っている企業における役職名で、企業のバリューチェーン(価値連鎖:開発、調達、生産、物流、販売などの事業の一連の流れ)における『おカネの流れ』のすべてを握る立場にいます。どの部門が利益を上げ、どの部門は上げていないかなどをリアルタイムで把握し、事業の将来を予測しつつ利益をどこにどう配分するか…など財務面からの経営戦略を練ることが重要な業務。しかし、今の日本企業のCFOの多くはそこまでの役割は担えておらず、『経理・財務部門長をそのままCFOという呼び名に変えただけ』というところが大半。経理財務知識だけでなく、ファイナンス理論や経営戦略に長けたプロフェッショナルは少ないのが現状なのです」

では、グローバル化の時代に向け、今後「日本のCFO」が磨かねばならないスキルとは何だろうか?
井手氏の意見は、「価値創造という発想をつけること」だ。
「日本企業には総じて、株主から預かったお金を使って、資本コストを十分上回るリターンを上げる…という発想がありません。そもそも日本企業は、歴史的に製造国家の側面が強く、利益を上げることよりも生産量を高める、雇用を確保することが優先されてきましたが、世界的に見ればこの考えは少数派であり、グローバル企業であれば価値創造の発想は極めて重要です。例えば、ROE(自己資本利益率)とは、株主資本を使ってどれだけ利益を上げられたかを測る指標で、高ければ高いほど大きな価値創出ができているということになりますが、日本ではこれが10%あれば優良企業と言われています。しかし、欧米企業では数10%も珍しくありません。10%という低収益でよしとしている日本の経営は、海外ではまず評価されません。グローバル企業のCFOであれば、自社のバリューを最大限に高める努力が必要だし、自社の製品(商品・サービス)市場ポートフォリオを考えつつ、ROEが低い事業は思い切って捨てるという判断も必要です

谷口氏は「グループ経営の徹底」を挙げる。
「欧米先進企業においては、海外子会社を含めたグループ全体の経営情報がすべて本社に集まる体制がすでに整っており、グループ全体が一つの会社のように機能していますが、日本ではまだまだ。どの部門で利益が出ているのか、それを次にどの事業に投資すればより高い利益を埋めるのか…CFOが製品市場ポートフォリオを組むためにも、その判断材料となるグループ全体のリアルタイムでの情報把握はとても重要です。しかし、今の日本企業は、海外売上比率の高まりにマネジメント側が全く追いついていない状況。今、この体制整備に骨を折っているCFOはとても多いのです」

グローバルCFOを目指す若手は、これから何を学ぶべき?

英語は最低条件。MBAを取り現場で欧米流の経営を体感すること

以上のように「日本におけるCFO」の役割が大きく変わろうとしている今、若手経理・財務担当者はどういうスキルを積んでいけばいいのだろうか?
井手氏のアドバイスは徹底している。「英語がネイティブ相手に使いこなせることは最低条件。そのうえで、20代のうちにメジャーなビジネススクールでMBAを取り、欧米系の外資系企業の経理財務職に就いて『価値創造』の観点を体に叩き込むべき」と断言する。
「日本的な経営が必ずしも悪いとは言いませんが、円高が続き国内市場がシュリンクしていく中で、日本というローカル市場だけで事業展開していてはじり貧の一途です。グローバルに戦えるCFOになりたいならば、ビジネススクールでグローバルな企業経営を学んだうえで、外資系企業でそれを体得すべき。こうして、グローバルCFOになり得る知識を得た若者が、今後日本企業に入って旧態依然の体制をガラリと変えていく…という流れが定着することを期待しています」

谷口氏は、「日々の業務で扱う数字の意味を、一つひとつ考えることも大切」と言う。
「CFOは、グループ全体の数字を管理し、財務面から経営戦略を練る立場。そのため、日々の業務に流されず、目の前の数字一つひとつにどういう意味があるのか、どんなプロセスでその数字が成り立っているのかをつかむ努力が必要。そしてその数字をもとに将来を予測し、経営戦略にどう活かすかを考える習慣をつけるべきです。そのためには、現場を知ることが重要で、できると言われる経理・財務担当者は、各事業部と頻繁にコミュニケーションを取り、数字の面から現状をよりよくするための助言ができるほど現場を理解している。本当は一度事業部門に異動し、日々扱っている数字の成り立ちを肌で理解してまた経理財務部門に戻る…というのがベストですね」

ちなみに、「これぞCFOの手本!といえる人は?」との問いには、井手氏、谷口氏とも、1999年に日産自動車のCFOに就き、カルロス・ゴーンCEOとともに業績V字型回復に導いたティエリー・ムロンゲ元CFOを挙げた。
ムロンゲ氏は、世界市場を3エリアに分け、金融子会社に資金管理を集中。関連会社の大幅削減や思い切った資産売却、コアビジネスへの集中を行い、有利子負債の大幅削減に成功。またメインバンク制を排除し、そのときどきに最も有利な条件を提示する銀行と臨機応変に付き合うなど、「利益率向上」という旗印で社員のベクトルを合わせ、成果を挙げた。
「以前、インタビューの際に彼は、グローバルCFOに必要な条件として、第一に『コモンセンス(常識)』を挙げていました。彼が言うように、グローバル経営においては、各国ごとの言葉や文化、商習慣を含めたコモンセンスを理解したうえで、それに沿った財務戦略を考えることが何より重要なのでしょう」(谷口氏)

以上を踏まえると、グローバルCFOとは、グループを含めた全社的なお金の動きを、リアルタイムで把握している唯一の存在といえるだろう。売り上げ・利益だけでなく、事業の進捗状況もすべてCFOが統括することになる。
「CFOはバリューチェーンのすべてを管理する立場であり、その役割に就くには相当なアンビシャスな意志が必要ですが、すべての価値創造の流れをリアルタイムで把握できる役割はほかにはない。そこがCFOの最大の醍醐味と言えるでしょう」(井手氏)

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