自発的コミュニケーション、迅速な行動、互いの配慮と相互補完…

SE冥利に尽きる最高の開発チームは、どこにある?

プロジェクト成功のために必要不可欠な条件はいくつかあるが、今回注目したのは「チームワーク」。プロジェクトメンバーと気持ちを一つにして、高い目標をクリアしていくベストチームワークとは具体的にどういうものなのか?2つの事例を通して探ってみたい。

2011年2月16日

SEにとって最高の開発チームとは?2つの事例を通して検証

仕事に対して何を求めるか?それは「収入」であったり、「仕事の中身」であったり、ひとそれぞれだ。今回、注目したのは「例え厳しい目標であっても、プロジェクトメンバーの仲間と気持ちを一つにして、一緒に乗り越えて目標をクリアしていくような働き方をしたい」という思いを抱きながら、日々の業務に取り組んでいるタイプのエンジニア。目標をクリアしていくためには、メンバー全員の力が必要なのは当然。しかしながら、実際にメンバーの心を一つにまとめ、チームワークを発揮していくのは難易度の高いケースも多く、そのことで悩みを抱えているエンジニアも少なくないはず。

そこで今回、ベストなチームワークを発揮するために日々、さまざまな工夫をしながら取り組んでいる2名のエンジニアの事例を紹介。そこから、システム開発プロジェクトにおけるベストチームワークを構築するための条件を探ってみたい。

話すよりも行動を起こすことで、打ち解けやすい雰囲気作りに注力
株式会社オウケイウェイヴ 稲吉氏のケース

大手メーカーで感じた「雰囲気の悪さ」の経験が、今の行動のきっかけに

株式会社オウケイウェイヴ
技術本部 ポータル開発部
マネージャー
稲吉基悦氏

ちょうど1年前に日本初で最大級のQ&Aサイト「OKWave」を運営する株式会社オウケイウェイヴに転職した、稲吉氏(32歳)。現在、技術本部のマネージャーとしてプロジェクトのマネジメントに辣腕をふるっているが、そんな稲吉氏が就職したのは某大手電機メーカー。主にミドルウェアの開発や、関連会社&オフショア企業へのマネジメントを担当していた。
「当時、関連企業のスタッフも含めれば100〜200人規模の大きなプロジェクトでしたね」
と振り返る稲吉氏だが、そこでの“つらい経験”が今のマネジメント業務の礎になっているという。
「ひと言でいえば“全体の雰囲気が良くない”ということ。みんな自分の担当領域以外のことには見向きもせず、何かトラブルが起これば責任のなすりつけ合いが日常茶飯事の状態でした。その結果、何か悩み事があっても人に打ち明けられず、結果的にさらにそれが大きなトラブルに発展してしまうという悪循環になっていたんです」

そこでの経験を通して、稲吉氏は次に自分が先頭に立ってプロジェクトを進めていく立場になったら、何よりメンバー全員とのコミュニケーションを重視し、何でも話し合える雰囲気作りに力を入れようと決心し、オウケイウェイヴに転職してきた。

「話す・聞く・書く」コミュニケーションの3つの基本を重視して、創立以来の大規模プロジェクトを成功に導く

入社後、いくつかのプロジェクトを担当してきた稲吉氏が最も印象に残っているのが、データベースを新システムに全面移行するプロジェクトだった。
「3カ月くらいでMAX10名程度のプロジェクト、そこのマネージャーとして参加したのですが、例えるなら『Windows95からWindows7に移行』するほど、あまり例を見ないような難易度の高い目標でした」と、プロジェクトの難しさを語る。

そこで稲吉氏が、プロジェクト成功のために力を注いだのが「雰囲気作り」だった。
「まずメンバー同士のコミュニケーションを円滑にするため実行したのは、『話す・聞く・書く』の徹底。中でも「聞く」ことを重視しています。こちらの意図を正確に伝えるために話し、その上で相手に気持ちよく話してもらえるように聞くこと。また相手の話す内容を真剣に聞き、正確に受け止めるためにメモを書きます。
そのために例えば定例会での雑談をあえて許したり、頻繁にメンバーに声をかけたりしました」
そして稲吉氏が最も重視したのは、「聞いたら必ず何らかのアクションを起こす」というもの。
「例えば相談を受けたり、何らかの要望を聞いたらできる限りアクションを起こすように心がけました。その結果うまくいかないこともあるけれど、大事なのは行動を起こすことで『この人に言えば何とかしてくれる』という信頼をメンバーから得ることなんです。」

また相談を受けてから行動するだけでなく、例えば深夜の検証作業という大変な労力を伴う作業にも率先して参加して、ほかのメンバーと同じように苦しい体験をすることで信頼関係を築いているという。
「マネージャーであるからこそ、信頼を得るためには現場目線を持つことが重要。その上で徹底的に権限委譲してメンバーを信頼することも重要です」
稲吉氏が中心になって取り組んだこのプロジェクトも無事成功、飛躍的にパフォーマンスが向上したことで、社内で高く評価されたそうだ。

稲吉氏以外のメンバーも、チームワークを高めるために普段からこんな取り組みを…

今回紹介した稲吉氏以外のメンバーにも、普段からチームワークを高めるために、日常的に取り組んでいることを聞いてみたところ、
「ランチや飲み会への積極的な参加や、休日にはフットサルを楽しむなど、業務外でもほかのメンバーとコミュニケーションを図っています」
「チームワーク強化のために、“知識共有”を積極的に行っています。みんな人間ですから、体調が悪くて休まなければならない時もあります。そうした時に『あの人がいないと進まない!』なんてことがあってはみんなが困るので」
といったことを心がけているそうだ。

またオウケイウェイヴとしても、社員同士のチームワークを高めるために以下のような取り組みをしているそうだ。
その1:ピザコミ
2週間に一度、ピザを食べながら社員同士でワイワイいろいろな話をする。あまり話す機会のない他部署の人と親睦を深めるだけでなく、「会社を良くするためにどうするべきか?」といったテーマに関して、熱く語り合うことも。
その2:社長懇親会
週に一度、経営陣と社員間のコミュニケーションを取り持つ場として、社員から社長に対して今後の会社の方向性やその進め方に関しての質問から、「最近、空気が乾燥している」という発言から空気清浄機を購入するケースまで。
その3:Good&New
毎週月曜朝8時からの全社朝礼時に行う。みんなでくじを引いて、同じ番号同士でチームになった上で、先週の業務を振り返って良かったことを発表し合う場。

細分化した進捗管理で、メンバーのモチベーションアップに成功
株式会社ヘッドウォータース 初芝氏のケース

すでにあきらめムード漂う、難題を抱えたプロジェクトに途中参加。タイムリミットは3カ月

株式会社ヘッドウォータース
IT戦略第二事業本部
プロジェクトマネジメント アウトソーシング事業部
初芝雅也氏

今回紹介する初芝氏(37歳)は、SEとして20年近いキャリアを持つエンジニア。数度の転職を経て3年前、ベンチャーのSI企業である株式会社ヘッドウォータースに入社した。
「これまで流通系や小売・物流などのBtoB向けの業務システム開発を少ない時で私一人、多い時は40〜50人規模のものまで数多く経験してきました」(初芝氏)

しかしヘッドウォータースに入社後、最初に待ち受けていたプロジェクトが大きな難題を抱えていた。
「海外出入国に関わるシステム開発プロジェクトで、私の入る3カ月前から当社のメンバーが客先常駐してスタートしていました。私が入った段階ですでに納期まで3カ月というタイミングだったのですが、今だ基本設計も固まっていない状態。原因は、将来を見据え柔軟に機能拡張の対応ができるシステム作りを目指したのですが、実現のハードルが予想以上に高かったことでした。すでにメンバーの中では、『残り3カ月で納品するのは無理』という半ばあきらめの雰囲気も漂い始めている中に、私が入ることになったのです」

難題が山積して、プロジェクトの雰囲気も良くない状況に飛び込んだ初芝氏だったが、本人にはプロジェクト成功に向けてのゆるぎない自信と信念があったという。
「過去の経験上、メンバー全員で一致団結すれば何とか納期に間に合うという自信がありました。それにもし納期を一度延期してしまうと、間違いなく幾度となくずるずると延期を繰り返すのが目に見えていたのです。ですから、納期までに間に合わせるという強い覚悟でプロジェクトに臨み、絶対にあきらめない姿勢を見せることにより、メンバーを牽引しました」

タスク細分化で、成果の見える化を図りつつ、目標達成への執念をメンバーに植えつける

「プロジェクトが成功するためには、メンバー全員のメンタルやモチベーションが大きく左右する」と考える初芝氏は、決して目標達成をあきらめさせないために“ある取り組み”をした。それが、進捗状況のタスク管理の細分化だった。
「毎週定例の進捗報告のとき、できる限り一つ一つのタスクを細分化した上で一つ一つの進捗状況を報告するような体制に変えました。普通、進捗をごまかすために大きなタスクでくくってしまいがちですが、それとは全く逆の行動をとったことになります。例えばある一つの機能の開発では、単に『開発』という大きなくくりではなく、『開発コーディング』『疎通動作確認』『テスト仕様書』『テスト検証』といったように細分化することで、一つ一つの作業が着実に進んでいることを目で見てわかるようにしたのです。その結果プロジェクトが進んでいるのかいないのかお客様やメンバーと共有できるようになりました。またメンバーは小さなゴールに向けて作業を継続するので、徐々に進捗が出るようになっていきましたね」

その結果、日が進むにつれて「これなら納期に間に合うかも」というような雰囲気にみるみる変わっていったという。
またその一方で、本来は担当領域ではないタスクも積極的に取り組んでいった。
「最終的にプロジェクトの成功を左右するのは、『やれる・やれない』ではなく、『やるのか・やらないのか』という気持ち次第。お客様の信頼にこたえてこそ、私たち技術者の存在価値があるのだと、特に若手メンバーに対しては言い続けました」
その結果、自信を取り戻し、心を一つにしたメンバーは、納期に間に合わせることができたそうだ。

初芝氏以外のメンバーも、チームワークを高めるために普段からこんな取り組みを…

今回紹介した初芝氏が所属するプロジェクトのほかのメンバーにも、普段からチームワークを高めるために、日常的に取り組んでいることを聞いてみたところ、
「普段からプロジェクトに対して何らかの目標を持って主体的に行動すること、言葉だけでなく率先して行動するようにしています。そうすると自然にみんな同じような行動をとるので、難局を乗り越えていく中で自然とチームワークは良くなります。さらに、普段からおちゃらけてると思われない程度に笑いを取るように心がけてますね(笑)」
「目先のことだけに視野を向けるのではなく、1年、2年後といったプロジェクトの先のことまでメンバー同士で共有するように心がけていますね。そうすることでお互いに配慮し合ったり、現時点のタスクが将来、どの部分に結びつくのかが明確になることで、メンバーの動き方が変わってくると思います」
といった答えをもらった。

また先ほど紹介した初芝氏の事例も、成功できた大きな要因のひとつに、ヘッドウォータースならではの会社の風土が大きく影響しているようだ。
「普通、私のような新参者が従来からいるメンバーに対してとやかく口を出すと、疎まれたりするケースも多いと思うのです。しかしヘッドウォータースの場合、会社もメンバーも高い成長意欲を持っていて、成長するためには相手がだれであろうと、いいアドバイスはどん欲に取り入れていく姿勢を持っていたので、うまくいったんだと思いますね」と、会社そのものの風土や目標と、自分自身の目標がしっかり同じ方向を向いていたことも大きいと初芝氏は断言している。

最高の開発チームの条件は、行動を起こすことにあり

今回、2つの事例を通して、チームワークの良いプロジェクトとは、そこに所属するエンジニアたちが普段からどのような取り組みをしているからこそ成り立つのか、プロジェクトメンバー同士のチームワークや仕事に対するモチベーションを高め、成功に導くプロセスを紹介してみた。
両者に共通するのは、リーダー自らが率先して行動を起こすということ。行動を起こすことで、必ず何らかの反応が生じて、その積み重ねがメンバーの心を一つにするのだ。
迷ったり悩んだときは、まず行動。こうした普段の心がけがプロジェクト成功のための秘訣なのかもしれない。

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