迷って一歩が踏み出せないあなたに

「キャリア」とは何か?

「キャリア」という言葉の意味について考えたことはあるだろうか。同様に、「キャリアアップ」という言葉についても、何を、どうすることがキャリアアップなのか、具体的なイメージはできているだろうか。ビジネスパーソンとして、「キャリア」というものを意識することはとても大切なこと。しかし、実は曖昧なまま使ってしまっていることも多いはず。今一度、あなた自身にとっての「キャリア」の意味を考えるために、独自のキャリアを積んできた2人の、「キャリア観」を紹介する。

2012年11月14日

「転職経験12回」の山崎 元氏に聞く

これまでに経験した転職回数は、実に12回。25歳でファンドマネージャーという職を選択して以来、運用に関わる仕事を核にしたキャリアデザインを進めてきた。現在は楽天証券経済研究所で客員研究員を務めながら、経済全般やビジネスの分野でも活躍する山崎元氏に、自身の「キャリア観」について聞いてみた。

「キャリア」とは、人材価値を支えるもの

株式会社楽天証券経済研究所
客員研究員 経済評論家
山崎 元氏
三菱商事就職後、12回の転職を経て2005年より楽天証券に。2010年より獨協大学特任教授も。株式投資や資産運用を中心に経済全般についての著作、論文を多数発表。転職・キャリアに関する執筆も多い。

私はキャリアという単体の言葉ではあまり使いません。「キャリアプランニング」などの文脈の中で使うことが多いのですが、辞書的な意味の”職歴”に近いものとして「キャリア」を捉えています。しかし世間ではしばしば、”キャリア官僚”という言葉がまさにそうですが、一種の価値を帯びた言葉として使われています。
職業的な人材価値とは、「能力」と「実績」の2つによって評価されます。ある職業の仕事をこなせるだけの能力を身につけなくてはいけませんし、その能力を発揮して実績を作らなければいけません。どちらが欠けても、人材価値の高い人とはいえません。そして、能力を磨くことも実績を作ることも、それなりの時間を要します。私の考えでは、30代前半がビジネスパーソンとしての能力の最盛期です。その30代前半を、仕事を覚えた状態で迎えるためには、20代のうちから計画的・戦略的にキャリアプランニングについて考える必要があるでしょう。そのようにして育まれた人材価値を支える職歴が、「キャリア」ではないかと思っています。

3つの「転職の目的」とは

私はこれまでに12回転職を経験しましたが、最初からこのような人生設計をしたわけではありません。遠い将来の目標のためではなく、そのときどきの状況を考えながら転職を決断してきました。
振り返ってみると、私にとっての「転職の目的」は3つあったように思います。
1つ目が、特に20代から30代前半までの「職を覚える(高める)ための転職」です。能力を身につけ、高めるために必要だった転職です。
2つ目が、30代半ばからの「仕事の場を得るための転職」。職業的なスキルを一番有効に使える場所がどこか、大きな仕事ができるか、一緒に働く仲間や報酬なども含めた「場」を選んでいく転職です。
そして3つ目が、「ライフスタイルに仕事を合わせるための転職」です。これは、主に人材価値を確立した段階からもう一歩先の働き方を選ぶことで、セカンドキャリアも視野に入れてのものです。

まずは「2年先にどうなっていたいのか」を考えてみては

皆さんが目標設定していく際、あまり先のことを考えすぎるのは効率的ではないと思います。
短期的には「2年先」。長期的には「35歳でどうなっていたいのか」。この2点でいいでしょう。
35歳までの時間というのは、ビジネスパーソンとして最も能力が伸びやすく、実績も作りやすいため、人材価値の土台を固めるうえで大事な時です。35歳の時にビジネスパーソンとしてどうなっていたいのかをイメージしつつ、そのために今できることが何か、身につけるべきものは何かを考えていけばいいと思います。
その際、1つのことを経験しスキルを習得していく単位としては、1年では短すぎる。私の経験からいっても、何かを習得するのに「カーブを描いて上昇できた」と実感できるのは、2年間程度の期間である場合が多いです。だから、長期的な視点を持ちつつも、まずは2年先の自分がどうありたいかを考えることで、今の時間を有効に使えると思います。
2年前の自分を振り返ることもしてみてください。「この2年間で自分は進歩しているか?」を点検するのです。もしできていないと感じたら、理由を考えてみる。そこに、2年先や35歳の自分について考えるヒントが隠されていることがあります。

AV業界から農業の世界へ。国立ファーム代表の高橋がなり氏に聞く

テレビ番組のディレクターとして数々の人気テレビ番組を手掛けた実績をもとに、AV業界に革命を起こした高橋がなり氏。現在は180度転身し、「川上(生産)から川下(販売)までの農業改革」を目指し国立ファームを運営する。そんな彼が考える「キャリア」とは?

キャリアとは「結果」そして「自信」のこと

国立ファーム有限会社
代表 高橋がなり氏
運送業のドライバーを経て、テレビ制作会社へ。テリー伊藤氏に師事し、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』などの人気番組に携わる。95年にAV制作会社ソフト・オン・デマンド設立。2006年からは、農作物の生産・流通などを手掛ける「国立ファーム」をスタート。

私にとって「キャリア」とは、出した「結果」のこと。
客観的に誰かを評価するには、結果で見るしかありません。何をして、どんな結果を残したかが重要なんです。
一方、キャリアの意味を主観的に考えると「自信」になる。仕事を頑張る、手応えを得る、人から信頼される、そして「これだけやりきった」という自信が生まれる。自信をつけると、結果もおのずとついてきます。出した結果は、次の仕事にもつながる。小さな「勝ち」を大きな「キャリア」に育てていくことが大事だと思います。
私は入社した社員たちに「3年は辞めるな」と言うんです。仕事で何らかの結果を出すためには最低限3年は必要ですから。映像業界で言うと、ADから始めて3年続ければディレクターです。どうせやるなら「私、ディレクターまでいきました」と言えたほうがいい。中途半端で辞めちゃうともったいないですよ。

小さなキャリアを大きなキャリアに結びつけた

私は大学に受からず専門学校に進みました。その時、なぜ合格しなかったのかを考え抜いたんです。結論は「全く勉強していなかった」から。当時は本気で「努力しなくても勝てる人生だ」なんて、とんでもない勘違いをしていたんです。
でも、それではダメだということが身にしみてわかった。そこで仕事を選ぶ時には、自分にとって努力できそうな場を選んだんです。私は体力だけは人より優れていると思っていたので、当時は難しい仕事だと言われていた運輸会社の配送ドライバーの仕事を選びました。ドライバーで自分なりの結果を出したら、次はテレビ業界へ。制作会社で、伊藤輝夫氏、現在のテリー伊藤氏率いるチームの一員になったんです。面接で伊藤さんに「私は昨年日本一働いた配送ドライバーです」って言い切ったんですよ。それだけ働いていた自負があったからです。実際、22歳の学歴もない若造が、30年前当時で年収480万円。「相当働いてたんだな」ということは伊藤さんも理解してくれたんでしょう。「配送のドライバーとして1年働いた」という小さなキャリアが、ゴールデンタイムの番組を制作するディレクターという新しい道につながったんです。
その後は社内の「事業部」で、制作したコンテンツを使った商売を担当しました。自分で経営を始めたりもするのですが、どれも失敗続き。そろそろ「次は勝たないとまずい」と思って選んだのが、アダルトビデオメーカーでした。伊藤さんのもとで突き詰めた映像制作のスキルを最大限に活かしながら、全力で打ち込める仕事だと思ったからです。ハッタリもありましたが、映像や演出について熱く語れるだけのものを身につけていたからこそ、業界歴の長い監督たちもついてきてくれました。
そこでの大成功がきっかけで、さらに「違うことがやりたい、自分にないものにチャレンジしたい」という気持ちが強くなった。それが、今取り組んでいる農業へとつながります。

キャリアをどこで積むか、どう仕事をするか

今あなたがどこに進むべきか迷っているなら「求められている場所」を選んでみてはどうでしょうか。考えるから悩むんですよ。例えば、「明日から来てほしい」と喜んで迎えてくれるような職場で、最終的な結果を頭に思い描きながら「今自分に求められていることは何か」を考えて努力すれば、自信がつき、結果もきっと出るはずです。
振り返ると、私は別に世間一般で言われるキャリアアップなんて考えたことはありませんでした。ただ、いつも「今自分にできない仕事をさせてくれるところ」「今よりも自分を鍛えられる環境」を求めていたことが、今につながっているんだと思います。
私自身、将来農業の会社を経営するなんて想像したことはありませんでした。大それた人生設計なんて必要ないと思います。言い方は悪いですが、自分で決断できないときには上手く流されていけばいいんじゃないかな。ただ、その中で仕事を面白くしていく努力はすべきでしょう。
皆さんも、あまり「キャリア」という言葉に深くとらわれすぎないほうがいいのではないでしょうか。誰にでも、キャリアを作るチャンスや方法なんていくらでもありますよ。配送ドライバーとしてがむしゃらに働いた経験が、今の私を形成する立派なキャリアになっているようにね。

小さな一歩の積み重ねが、大きなキャリアにつながる

「キャリア」という言葉をひと言で表現することは難しいし、人それぞれ違う解釈があって当然だろう。だからこそ、「キャリア」「キャリアアップ」という言葉を曖昧なままに使うのではなく、自分にとっての意味や価値を考えておく必要があるのではないだろうか。今回登場した2人に共通しているのは、ビジネスパーソンとして身につけてきたものを、未来への一歩につなげていくことを総じて「キャリア」と表現していること。そして、その一歩はそんなに構えるべきものではないと考えていること。小さな一歩の積み重ねが、大きなキャリアになる。高橋氏が言うように、キャリアを作るチャンスや方法は、誰にでもいくらでもあるのだ。だからこそ、構えすぎないことが、あなたらしいキャリアを作る一歩になるのではないだろうか。

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