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現在グリーは、女性エンジニアの採用にも積極的だ。今回はキャリア入社でインフラ開発に携わる5人の女性エンジニアにご登場してもらい、現在の仕事内容とともに、彼女たちがなぜグリーを選び、いまの働き心地をどう感じているかなどを取材した。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:13.03.04
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劉 佳(リュウ・カ)さん
IT企業に勤務した後、2011年7月グリー入社。インフラの運用フロー整理や、新人研修を担当。
朴 ジョンウンさん
ホスティングサービス企業を経て、2012年7月にグリー入社。インフラの構築・運用を担当。 |
世界有数のトラフィックを誇るグリーのサービス。それを支えるのは言うまでもなく、「サービスを一瞬たりとも止めない」インフラエンジニアの力だ。 インフラ部門にはもちろんまだまだ男性が多いが、近年、急速に女性エンジニアが増えているという。背景には性別、年齢、国籍を問わないオープンな採用方針があり、女性にとっても働きやすい職場環境があると考えられる。その実際を語ってもらうべく、5人の女性エンジニアたちに集まってもらった。バックグラウンドはさまざまだが、いずれも20代後半で、同時期にグリーに転職してきたということもあり、みんなとても仲が良い。
サーバの構築・運用、キャパシティプランニング、システムの障害対応、機器調達・評価などに関わるのがインフラ基盤開発部の中にあるサイトオペレーションチームだ。14人のメンバーのうち5人が女性と、技術部門では最も女子比率が高い職場だ。サーバ構築・運用は全員共通の基本的タスクだが、中でもサーバ運用フローの企画を担当するのが、劉佳さんだ。
加えて、インフラ統括部に配属される中途採用エンジニアに対して、グリーのインフラ環境の説明やサーバ構築の手順などを指導する、新人研修担当という役割もある。朴ジョンウンさんは、リソース管理担当だ。 |
沓沢遥さんは、サーバの構築・運用・修理をメインとしながら、特にデータセンタ(DC)との調整業務も担当する。
「グリーは自社サービス用のサーバだけでなく、GREE Platform としてパートナー企業様向けにサーバを提供しており、その両方のメンテナンスが重要になります。常時DC側と調整しながらOSリソース管理やサーバ在庫管理などを行っています」
グリーほどの大規模ユーザーを抱える企業であれば、サーバなどの増設はどんどんできるのかと思いきや、「いえいえ、サーバの負荷状況を常に詳細まで分析し、効率良くサーバ資源を使うことに努力しています。細かくスケジュールを立てて、この時期に何台必要かということを計画して報告しないと、購入はできません」とのことだ。
山田なぎささんは今回の5人の中では一番グリーでのキャリアが長い。といっても、2011年5月の入社だから、まだ2年経っていないのだが……。
「グリーは新しいことをやりたいエンジニアが多いので、特に新しいプロダクトのリリースのときなどは、それに応じた新しい環境を構築しなければなりません。そのためのインフラ準備と運用整備をメインの担当にしています」
新技術の投入とサーバの安定運用は、ときに矛盾する課題だ。本番サービスにいきなり投入ではなく、その前に慎重にレビューを重ね、安定性優先で導入を進める役目が、サイトオペレーションチームにはある。「いまのサービスを守ることが一番気をつけていること」と、山田さんは言う。
最後の苅安美和さんはデータセンタチームでネットワーク機器の管理を担当するネットワークエンジニア。OSPFやBGPといったルーティングプロトコルを使って、ルーティング設定変更や、トラフィックのコントロールを行う。
「日々の作業をこなすだけでなく、新しい技術を学ぶことも私たちの仕事です。ネットワーク技術も最近は、OpenFlowなどのSDN技術(SDN:Software Defined Network)や仮想化技術など新しいトレンドが出てきています。それをグリーのサービスにすぐに投入するかどうかはともかく、外部セミナーに積極的に参加して、知識を積み上げていくことも大切です」
沓沢 遥さん
大手SIerでデータセンタ業務を経験後、2012年3月グリー入社。サーバ構築のほか、DCとの調整業務を担当。 |
山田 なぎささん
ホスティングサービス企業を経て、2011年5月グリー入社。新プロダクトリリースのためのインフラ準備・運用整備を担当。 |
苅安 美和さん
ITコンサルティング会社を経て、2012年7月にグリーに入社。ネットワークの運用を担当している。 |
女性だけでなく男性にとっても、職場の働きやすさは重要だ。例えば勤務時間の長短は誰もが気になるところ。中でもインフラ系エンジニアの場合、サーバのリリースや故障対応でどうしても深夜や休日に作業を行わなければならないこともある。
ただ、エンジニアにとっては、実は労働時間よりも、職場環境のストレスのほうが重要なのではないだろうか。職場の人間関係に悩むことが少なく、自分の技術が伸ばせる環境であれば、労働時間の多寡はあまり気にならない。「やらされ仕事」はいかに短時間でも苦痛になるし、反対に自分が進んで取り組む仕事は、時間がたつのを忘れてしまう。
このあたりを含めて、以下、座談会風にインフラ女子にとってのグリーという職場環境を語ってもらおう。
劉 |
前の職場(ホスティングサービス)のころに比べて、勤務時間は実質短くなっています。何よりグリーを選んでよかったなと思うのは、仕事でのストレスがほとんどないこと。遅くまで残ることもありますが、スケジュールをきちんと立てて早々に切り上げることもあります。エンジンがかかってつい遅くまで残ってしまうこともありますが(笑)。自分の仕事を自分でコントロールできるから、メリハリをつけて働くことができます。 |
朴 |
私先週、インフルエンザでお休みしたんだけど、ほかのメンバーが適切にフォローしてくれたから、安心して休みを取ることができました(笑)。 |
苅安 |
自分がこれをやりたいと思って手を挙げれば、必ずやらせてくれる。それぞれの分野のスペシャリストがたくさんいるので、自分の不得手な分野もフォローしてくれる。優秀なエンジニアがたくさんいるからこそ、思いっきりチャレンジすることができる職場だと思います。 |
朴 |
みんなの仕事がオープンになっているので、誰が何のスペシャリストだかはすぐわかります。スーパーエンジニアたちが、丁寧に指導してくれます。 |
沓沢 |
みんなのやる気がすごいなというのが、グリーに入社したときの最初の感想。「これやります」「私やります」と、みんな手を挙げる。と同時に、助け合いの風土があるのも驚きでした。このやる気と助け合いは、自社サービスを事業として展開していることからきているんじゃないかと思うんです。 |
山田 |
それぞれがプロジェクトに責任を持っているけれど、誰か特定の人に負荷が集中するというのではなく、互いにカバーし合うという関係がありますね。それに仕事だけではなく、みんな本当に仲がいいんです。 |
インフラ女子の仲の良さは、毎週1度は一緒にランチするという、男子禁制の女子会が開かれることからもわかる。そのほかにも、会社が支援する歓迎会や打ち上げの費用を補助する制度(チームビルディング支援制度)もあり、それらを活用して、チーム内のコミュニケーションを密に保っているという。
むろん彼女たちは単なる仲良しクラブではない。それぞれがエンジニアとしてスキルを切磋琢磨する関係。グリーにはその成長を正当に評価する風土がある。「頑張れば報われる会社」を実感していると語ってくれたのは、劉さんだ。
「ゲームそのものの開発と違って、私たちインフラチームの評価ポイントは、運用の効率化というところ。工夫改善を重ねて時間が半分になりました、オペレーションミスがこれだけ減りましたとなれば、ちゃんと評価される。それがうれしいですね」
5人とも転職者。なぜグリーを選んだのか。「もっと裁量権が欲しかった」と言うのは沓沢さんだ。
「前職では、客先常駐してSIerの顧客とDCの技術者の調整役のような仕事をしていました。常駐ということで、私自身にはあまり権限がない。それが自社サービスを展開する企業ならもっと裁量権を持って、仕事ができるはずと思ったんです」
入社後1年足らずで、「まだまだ……」と謙遜するが、周りの仲間からは「いやいや、かなり裁量権ありますよ。DCとの調整業務は、まずは沓沢さんに相談しようと思いますし」という評価が寄せられる。最近は海外運用拠点の立ち上げプロジェクトにも参画するようになった。「1年目なのに、こんなに仕事を任せてくれるなんて、想像以上でした」と、本人もびっくりだ。
山田さんの前職は、サーバ監視やクラウドホスティングの、社員20人のベンチャー企業だったが、「6年もいるとそのうち勉強することがなくなってしまったんですね。もっと幅広く技術力を身に付けたいと思って」グリーを選んだ。グリーがサービス企画からアプリケーション開発、インフラ運用まで自社内で幅広い業務を行っていることが、最大の魅力だったという。彼女はサーバ運用だけでなく、いずれは基盤開発の方へもスキルの幅を広げたいと望んでいる。
国内はもとより世界的にも有数の大規模インフラを活用し、B to Cのサービスを自社開発・運用しているという点は、確かにインフラエンジニアにとっては魅力だろう。そこにエンジニアとしての飛躍のチャンスがあると思ったのは、全員に共通する転職動機だ。
苅安さんも、前職は客先常駐の形でDCのネットワーク運用をメインにしていた。
「基本的にはDC内の仕事なので、自分の技術もLAN側に限られていました。そこをもっとWAN側に広げたかったというのが、転職動機。現在はまだメンバーに助けられてばかりですが、いずれはプロジェクトをリードする立場になりたいですね」と言う。
「外国人だし女性だし、前職も小さな会社で社歴も短い──こんな私でもチャレンジできるだろうか?」と、採用通知をもらったとき劉さんは少し不安だった。
「だから最初は大人しくしていたんですが、やりたいと言えばやらせてくれる会社だとわかってそこからは積極的に手を挙げるようになりました」。いまでは、一昨年の入社とは思えないほどの存在になっている。
朴さんは、2006年に日本の大学に留学し、文系ながらITに興味を持ち、日本のIT企業で技術を磨いてきた。国境を越えて仕事をすることにためらいがない。だからこそ、グリーのグローバルなサービス展開に魅力を感じている一人。
「成長著しいアジアや欧米の先進国向けに、サービスを提供しているところが魅力ですね。私も社内の支援制度を利用して英語力を高めたいと思っています。目指すはグローバルで通用するインフラエンジニアです」と抱負を語ってくれた。
技術向上に熱心なインフラ女子たちは、社内の福利厚生制度については男子以上に敏感だ。先にも少し触れたチームビルディング支援制度、フライデーパーティ、誕生会制度、最新モバイルデバイス購入促進制度など、積極的に活用している。
その中でも彼女たちに高評価なのが、「ミールサポート」。社内での飲食費の一部を会社が補助するもので、朝のメニューは無料。昼、夜のお弁当販売は200円から、自販機飲料は30円から利用できる。200円からとはいっても栄養バランスのとれたしっかりしたお弁当。「おいしいものをいかに安く食べるか」という課題にも真剣に取り組む彼女たちを、経済的にサポートしてくれている。
通勤にかかる負担の軽減と健康を維持するために、対象圏内に住む社員に対して、家賃の5割にあたる金額(東京の場合上限月5万円)を補助してくれる「近隣住宅補助制度」もうれしい。家賃補助がこれだけあれば、六本木オフィスの近く、港区内に住むのも夢ではない。
その他にも「エンジニアはパソコンを自由に選べる」「休憩室がある」「プロのマッサージ師が施術してくれて、40分なんと500円」「ベルリッツの講師が会社まで出張してくれる英会話教室は人気集中!」などと、彼女たちの口から次々に、従業員向け福利厚生メニューが挙げられる。
女性エンジニアがいきいきと働ける会社は、男性エンジニアにとってもポイントが高いことは間違いない。彼女たちの仕事ぶりは、これからの転職先を選ぶ上での指標になるかもしれない。
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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る
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