超こだわりの“一筋メーカー”探訪記 この分野なら任せなさい! |
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ソース一筋109年!
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ソースの新商品開発、「特級ソース」が生まれた
思い出に残る「まぜりゃんせ」と「特級ソース」
「ブルドック特級ソース」。左からウスターソース、中濃ソース、とんかつソース
「ソースの製造過程を簡単に言えば、トマト、たまねぎ、りんご、にんじんなど野菜類を煮込み、裏ごしをして、そこに塩、砂糖類、酢などの調味料と、何種類ものスパイスを入れて、加熱・殺菌をする。極端に言えば、個人でやってできないことはない。しかし、実際に作るのは大変ですよ」
こう語るのは研究開発部の齋藤信次氏だ。1994年に入社し、3年間はパスタ用の商品「まぜりゃんせ」の開発を担当。その後は工場での品質管理を経て、2000年からソースの新商品開発を続けている。
これまでに開発した商品は30〜50ほどで、「すみません。はっきりした数は覚えていません(笑)」とのこと。例えば、これから紹介する「ブルドック特級ソース」には「ウスターソース」「中濃ソース」「とんかつソース」の3種類があるが、これを1商品とするか3商品ととらえるかで数が違ってくるからだ。
「年に5〜10の新商品を出していますが、特に思い出に残っているのは、最初に担当した『まぜりゃんせ』とこの『特級ソース』ですね」
原料もとろみも異なる、ウスターソース、中濃ソース、とんかつソース
ブルドックソース株式会社
研究開発部
研究開発グループ
主事
齋藤信次氏
「ブルドック特級ソース」の特徴は、国産野菜の使用、自家挽きスパイスのブレンド、煮干と昆布による旨味などで、食品添加物やアレルギー物質も加えていない。ワンランク上のまさに特級のソースだ。
「最初に考えたのは、野菜をたっぷり使って自然の旨みを出すことです。国産野菜の安定した品質と安全性を確保する必要もありました。ただ、野菜もそうですが、調味料では同じ砂糖類や酢であっても何種類もありますし、10数種類を使ったスパイスも同様です。原料の選定、そしてその配合が難しいのです」
また、同じ「特級ソース」という商品であっても、ウスターソース、中濃ソース、とんかつソースと3種類がある。ある程度の「骨組み」は同じでも、それよりも個々の味を優先するという。そして、種類によっては原料も違えばとろみも異なる。試作品の数はそれぞれで100以上にもなったという。
「何をどのくらいの量で使えばいいという大枠は頭にあります。今回の決め手になったのは野菜と酢とスパイスのバランスだと思いますが、それだけではないとういのがソース作りの大変さですね」
あなたなら「う・ちゅう・とん」を何にかける?
ビーカーでブレンド、時には作った料理にかけて味見も
この3種の開発は同時期にスタートし、同時に発売された。並行して開発されたわけだが、進捗状況はそれぞれに異なった。最後まで残ったのがウスターソースだったという。 原料を選んで、配合を決めて、ビーカーに入れて加熱をし、試作品を作っていく。これを続けるわけだが、決め手になるのは何と言っても味。ソースそのものの味もそうだが、研究室の一角にはキッチンがあり、そこで調理した料理にソースをかけて味を見る場合もある。ソースはあくまで調味料だからだ。 ご存知の人も多いだろうが、ソースの代表格はここにもある「ウスターソース」「中濃ソース」「とんかつソース(濃厚)」だ。ウスターソースはイギリスのウスターシャー地方が発祥で、スパイスが効いた辛口のソース。とろみは低くてさらっとしており、揚げ物などに合う。とんかつソースは一般的には「濃厚ソース」と呼ばれ、トマトなどの野菜をたっぷり使った甘めのソース。とろみは高めで、まさにとんかつに合う。ウスターソースととんかつソースの中間で、「いいとこ取り」をしたのが中濃ソースだ。 |
試作中のソース 試作品を作る研究室。奥にはキッチンも |
目玉焼き、ポテトサラダ、アジフライ……天ぷらにも?
ソースの原料を分析する分析室
昔からおなじみのブルドックソース
ほかの調味料に比べたソースの特徴は、上記のように原料の種類が多いこと。だからこそそのバランスが微妙になるのだが、そのためかソースメーカーは全国に100社程度あるという。ブルドックソースのような大手企業に加えて、地場に根付いたメーカーが数多くあるからだ。ソースと聞くと洋風なイメージもあるが、日本の食卓に欠かせない「故郷の味」ともなっている。
「食事や飲みに行ってお店にソースがあると、やはり気になりますよね。自然となめてしまって、『これはウチのじゃないな』とかね(笑)」
齋藤氏もそうだが、同社の社員もソース好きが多い。例えば、目玉焼きにかける調味料には塩、しょうゆ、ケチャップなどもあるが、やはりソースという。
「私は野菜が入ったとんかつ系のソースをかけますね。目玉焼きのほかにはポテトサラダにも。カレーならウスターソースですし、フライものにもさらっとしたウスターソースですね。アジフライなどの魚のフライですと生臭さを消してくれますから、特にぴったりだと思いますよ。我が社では天ぷらにソースをかける人もいますね(笑)」
実はブルドックソースの味は変わり続けている。同社が意識しているのは「時代の求める味」であり、これは新商品に限らず全社的に言えること。昔からの主力商品である「中濃ソース」や「ウスターソース」も同様で、子供のころにかけたソースと今のものとでは、その味は着実に「進化」しているというわけだ。
どんなものにもかけられる「万能調味料」が作りたい
代表的な商品。中央は「おうちで本格お好み屋さん」
新商品が発売されるのが半年単位なので、開発のスパンもほぼ同じとなる。ただ研究室で新しいソースを作り上げるだけではなく、工場に出向いてその味がきちんと再現されているかなどをチェックすることも研究員の仕事だ。そして、現在も次なる商品の開発をしている齋藤氏の入社動機は、「食べることが好き」と「全国の家庭で喜ばれる、安全で美味しいものを作りたい」。
「ブルドック特級ソース」は、2010年と2011年の2年連続で「モンドセレクション」の金賞を受賞した。彼が求めるソースとは何だろうか。
「例えば、焼き肉にかけるソース。難しいですが、生臭さを消すウスターソースなら隠し味くらいには使えると思いますね。将来的にはウスターソース、中濃ソース、とんかつソース、お好み焼や焼そばなどの鉄板系のソースに続く、新しいソースを作りたいです。できれば万能調味料を」
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超こだわりの「一筋メーカー」探訪記
一筋、一筋、○○一筋××年! ひとつの製品・分野を究め続けるマニアックなメーカーを訪ね歩き、その筋の「こだわり話」を聞き出します。
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